アイラ


僕(エミュ)とミラがアカデミーに来てから既に4ヵ月が過ぎていた
最初は戸惑いがちではあったがここの生活にも慣れ始めてきたと思う



エミュ!な〜にボーっとしてるのよ?
え?・・・あ・・・ミラか
まったく、覇気が全然無いわねぇ 次の時間はなんだか覚えてるでしょ?
次って・・・実戦剣術か・・・
そうよ、今日はこの前の借りを返すからね!覚悟しなさいよ!!
ミラは そう言うと必要な物だけ持って集合場所へと走っていった

ふぅ・・・実戦かぁ
アカデミーにも慣れ始めてきたのだが、最近になって憂鬱の種が出来てきた
それが実戦剣術と属性別魔法(水)の時間だ

最初は先生に教わりながらの型の練習や、生徒との訓練だったのだが
最近では僕とミラのレベルが高いという理由で
2人とも受けている授業が違うが、組まされて稽古(という名の模擬戦)をしている
前回の魔法勝負では運良く・・・というより運悪く勝ってしまった
今日はその雪辱戦のつもりなのだろう


さって・・・遅れるわけにもいかないし、そろそろ行こうかなぁ
そう言いながら部屋を出て廊下を歩いていく



タッタッタッタッタ
ん?
目の前の十字路の右から誰かが走ってくる音が聞こえる
タッタッタッタッタッタッタ
こんなところでぶつかりたくないから十字路の手前で少し止まった

どんっ

うわっ?」「はわぁっ?

突然の後ろからの衝撃に思わず前によろける
・・・そこへ・・・

ドンッ

わぁっ?」「いたっ!?
今度は右からの衝撃に吹っ飛ばされる
え・・・な・なに?・・・
・・・・・・
・・・




うぅ・・・
あ!気がついたですぅ」「うん
なんだかよく分らないが僕は床に寝転んでいて
二人の知らない女の子が覗き込んでいる
あれ・・・僕は・・・
はわあ!もう授業が始まってしまいますぅ
言われて思わず時計を見ると既にやばすぎる時間だった
あ、ほんとだ
それでは失礼しますぅ」「じゃ
あ・うん
二人は何の自己紹介もせずに一方的にまくしたてて駆けていった
・・・・・・
・・・何だったんだろう・・・
・・・って僕も急がなきゃ
もうほぼ遅刻は決定だがとりあえず急いで集合場所へと走った


結局少し遅れたのだが先生はそれ以上に遅れているようだ

正直助かったかなぁ
先生はよく遅刻するのに 先生より遅かった奴への罰が厳しい
この前に遅れてた奴は授業後に素振り1000本やらされていたっけ


アップをしながら待っていると 少しも悪びれもしていない様子で先生が現われた
全員そろってるか〜
きおつけ!

礼!
「「よろしくお願いします」」
ん・よろしく、各自アップは済ませてあるな?
「はい」
よし、それじゃ取りあえずいつものメニューをやってろ
「はい」
エミュ!こっち来い
は・はい
いつもこの後ミラが来ると模擬戦となるから少し憂鬱だ
ルシード先生・・・
今日は別の奴との模擬戦をやってもらう
はい・・・・・・って、え?
もうそろそろ来ると思うから 少し待っててくれ
は・はぁ

既に数分が立って少し暇になってきた
・・・どんな奴だろう・・・
ミラのクラスにもそんなに強いのはいないって言ってたから槍か杖かなぁ
そうやってしばらく考えていると

ん?
他の生徒を指導していた先生が少し驚いたように後ろを向いた
おう 来たか

エミュ 紹介しよう、こいつはアイラだ 年はお前より二つ下かな
よ・よろしく・・・って!あぁ!!キミはさっきの
先生の脇には先ほどぶつかった子のうち、小さい方が立っていた
背は結構小さい方のエミュよりもさらに少し小さい

ん?」・・・首をかしげている・・・
どうした?知り合いか?
・・・フルフル
」・・・首を振っている・・・
ほらさっき廊下でぶつかった
・・・・・・ポンッ
」・・・思い出したように手を叩いた・・・
ん?んだ?
いえ、さっき廊下でぶつかったってだけなんですが
あぁ・・・そういえばなんかそんな事言ってたかもなぁ
ん?先生 どうしました?
いや・・・でこっちはエミュリット・トリーティア 何度か話をしてやった事があったろ?
コクッ
さって、それじゃ模擬戦をしてもらおうか

・・・
え?
なんか今さらりとすごい事を・・・この子は僕より一回りは小さいのに
全員訓練中断だ〜こっち向け〜
皆がざわざわとし始めるが先生は構わず言葉を続けた
これからエミュとこいつの模擬戦を行なう
そう言ってエミュとアイラの頭に手を乗せる
その場にいた全員がいっせいに驚く
そこにいるのは明らかに小柄な女の子
対して僕は男としてはそれほど大きくは無いが
戦闘をすればここの生徒の中で誰よりも強い
明らかに女の子は勝てなさそうな容姿と雰囲気をしているのだ

それでは、構え!!
先生はそんな空気を読んでか読まずか、気にせず始めようとした
取りあえず構えて作戦を練る

(どれくらいの強さか分らないし とりあえず様子を見よう
まずは少し距離をとってから出方を覗おう・・・)

僕は木刀を持って中断の構えに
アイラは長い棒を持って構えた後は微動だにしない

はじめっ!!

(まずは少し離れて っ!?)
ブンッ
カァン
その場にいた全員の息が詰まる
アイラの棒はほとんど前動作無しで すばやく繰り出された
とにかく木刀を合わせるのが精一杯となる
その後も防戦一方となり、少しづつ押され始める

次第に壁際に追い詰められてきた
・・・そして・・・
カァァン
ブン
僕の木刀は弾き飛ばされ
眉間に棒が突きつけられた

そこまで!!

しばらく時が止まったかのように静まり返った
そして
おおおぉぉぉぉぉーーーー
みんなの賞賛の拍手が沸き起こり、生徒はみなアイラの周りを囲みいろいろ質問している
アイラは困った顔で受け答えしているようではあるが、その声は全く聞こえない

しばらく僕はアイラをぼぉっと見つめていた

エミュ、お疲れさん
あ・先生
くやしいか?
そりゃ・・・まぁくやしいですが・・・
確かにくやしくないといえば嘘になるが、そこまでくやしい訳でもない
自分は元々防御専門で、剣術はあくまで護身の為だ
とはいえ大人以外にはミラにしか負けていない剣術が負けたのだ・・・まぁショックかも
エミュ、戦ってみて ミラとどっちが強そうだ?
え?えっと・・・どっちとも言いがたいですよね?
懐に上手く潜り込めればミラが勝つでしょうし
それが出来なければアイラちゃんが勝つでしょうね

ん・まぁその通りだろうな
それにしてもあの槍術・・・なんかどっかで見たような・・・
あぁ、そりゃバーシアだろ。あいつバーシアの子供だし

       !?       

その言葉が発せられた瞬間アイラを取り囲っていた連中に衝撃が走る
「あ・あ・あ・あ・あのバーシア先生の」
こどもぉっ!?

『あの』ってのは どーゆー意味かしらねぇ き・み・た・ちぃ?
唐突にアイラを取り囲む群集の近くに 咥えタバコでバーシア先生が現われた
「い・い・い・いえ 何でもございません」
・・・そぉ? ま、いいわ ところでアイラ?勝ったの?
コクン」・・・頷いてる・・・
よーーし えらいえらい
バーシア先生はニコニコしながらアイラの頭を撫でる
・・・というか髪はぐしゃぐしゃになっているが・・・
それでもバーシアもアイラも嬉しそうだ
・・・・・・・・・
「あれが・・・」「バーシア先生?」
ん?なによ、文句あんの?
「いえ」「めっそうもございません」


それはそうとエミュ 今日夕食が終わったら第3教官室に来てくれ
バーシア先生にいびられる生徒たちを無視してルシード先生が話し掛けてきた
え?
1ヵ月後には前期日程が終わり、もう後期日程に入る
そのときのSクラスのメンバーの顔合わせをするからよ

ミラは?
ま、当然入ってるぞ
アイラちゃんも当然入りますよね?
あぁ、そりゃな
あと・・・いましたっけ?

ここに来ている人たちは自分達を除いてほとんどは魔法の初心者だ
まぁ、魔法を教えるのがこの学校なんだから当然といえば当然なんだけど
Sクラスというからには明らかにそんな人たちでは無理だろう

アイラと同じで今日から他に2人入ってるんだ、そいつらとも顔会わせないとな
1ヶ月すればパーティーを組んで行動するんだし、仲が良いに越した事はないだろう?

まぁそうですね
それじゃ、遅れるなよ

おら、お前ら!いつまでも油売ってないで訓練始めやがれ!!
「りょ・りょーかいです」
バーシアも授業ほったらかして良いのか?
・・・いいんじゃない?
いいわけねぇ!さっさと戻れ!!
はいはい・・・戻りますよだったら疑問形で聞かないでよね ほらアイラ行くわよ
コク」・・・頷いている・・・
ありゃ疑問形じゃなくて反語だ
へいへい んじゃね

あの子もSクラスか・・・
まぁ無口だけどいい子そうだな

バーシア先生もアイラちゃんも応用槍術の方に戻ったみたいだ
こっちも訓練を再開し
僕はルシード先生に切りかかっては吹っ飛ばされるという事を繰り返させられていた


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