見える影


・・・見えてきた
・・・・・・・・・
フローネは何も言えずに、かつては「町」と呼ばれていた場所を見下ろしている
『カニューレ』
かつては世界の中心的な港貿易の拠点となっていた場所だ

だが・・・今は・・・
こんな事って・・・
最悪の・・・状態って感じだな
町は荒れ果て原形を留めている建物などひとつも見当たらない
町全体はまるで黒い幕に覆われたかのように澱んでいる
人のすんでいた場所には・・・とても見えない
行こう・・・少しでも早く
はい
町の見下ろせる場所に待機させていた魔獣を急降下させ町に接近する

その瞬間  既に役目を終えたはずの灯台が光った
マックス 危ない!!
え!?
町まであと少しの所でフローネがマックスを抱きかかえる様に魔獣から飛び降りた
カァッ
その直後 先ほどまで居た空間を猛烈な破壊力を宿した光の束が貫く
なっ!?
地面に落ちるが痛みは無い、あの一瞬にフローネが風の魔法を使っていた
今のは?
あの灯台!!
フローネが示す灯台を見ると、まるで砂で出来ているかのように崩壊し始めていた
・・・アレだけの魔力を放出すればあんな建物は持たないだろうけど・・・
・・・いったい誰が・・・
どう・・します?
フローネの声には戸惑いがまじっている
行く・・しかないよ
・・・分りました

町の入り口が近付くにつれ禍々しい瘴気が流れてくるのを感じる
既に原型を留めていない門をくぐり、町の中へと入る
だが、まとわりつくような気配がするだけで何も起こらない
罠・・・ですかね
そうだろうね
解っていても、行くと決めたからには行くしかない

そして町の中心部までは何事も起こらなかった
そうして数瞬後、悪霊・亡霊が溢れていた
マックスは身体中の全てとも思える魔力を一度に放出し敵を祓う
その直後フローネが魔力を補う
全方向に向けての攻撃は続けられるが、やがて敵の囲いが狭まってくる

はぁっ!!
再び魔力を放出し、近付いた敵を一掃する
・・・いや、しようとした・・・
だが多くの亡霊を盾にした悪霊がほぼ無傷でマックスに迫る
くそっ!
腰のナイフを抜き 切り祓う、さらに同様にしてフローネに襲い掛かった敵を切る
すぐさま残った魔力で敵の集団を貫く
直後フローネが魔力を送られてくるが敵はすぐ側にまで迫ってきていた
再びナイフを構えて切り祓っていく
敵の勢いはすさまじく、二人では限界があった
きゃあ!
フローネ!? ぐっ
フローネに気を取られたマックスを別の悪霊が攻撃してくる
くっそぉぉぉぉ
残った魔力を振り絞り群がる敵を一掃する
はぁ・・・はぁ・・・
すぐに魔力が補充され傷も癒えるが疲労はたまる一方だ
思っていた以上の敵の数と質
・・・やばい・・・
一瞬怯んでいた敵の攻撃が再開する
まるで数が全く減っていないようにも感じる
・・・ダメか・・・無理なのか・・・
あきらめんな!!
!?
突然の声と共に群がる敵に斬撃を加えていく
マイトさん!?
私もいますよ、兄さん
ネートまで?
俺らも手伝うぜ!詳しい話はこいつらを片づけてからだ
わ・解りました

4人は円陣を組み互いが互いを守るように戦う
ネートの「唄」による結界が敵の動きを大幅に阻害する
そこをマックスとマイトのフルパワーの攻撃が加えられる
そしてその3人の使う膨大な魔力を供給し続けるフローネ
既に形勢は逆転し、悪霊の殲滅は時間の問題となっていた





4人はある建物の跡地の前に立っていた
とはいえ建物の痕跡など何処にも見えない
ただ、他の場所は荒れているだけなのに
一区画だけ綺麗に削り取られているのは奇妙といえば奇妙な空間である
そこが、かつて世界の崩壊を望んだ物が破壊した場所であった
つまりここは『悪意』の漏れる場所そのもの

フローネの集めた魔力を使いネートが結界を張る
おそらくこの結界を破れる者など世界中に誰もいないであろう
フローネが集めた魔力は今までこの町に充満していた瘴気とも言うべき物
それを全てかき集めただけでそれを超える魔力を持つものなど居ない
その膨大な魔力を使い、結界魔法に関して世界最高の力を持つネートが結界を張る

見違えるようだな
マイトが呟く
そうですね
町は今までの黒い雰囲気がウソのように晴れている
フローネが瘴気を回収した辺りから変わり始めていたが
ネートが結界を張り終わるとここは別の町のようになっていた
確かに今でも荒れてはいるのだが
今までとは違い、生物が住んでいるように見える
これから次第に復興作業も進むであろう
(まぁ人々が危険だと思うかもしれないが)

しっかし・・・すげぇ結界だな
そうですね、これでもうこんな事は起こらないでしょうね
まったくです、やはり厄介な人物ですね お前達は
!?
突然後ろから声がかけられる
だれだ!!
『意思を継ぐ者』・・・まぁ いわゆるお前達の敵ですよ
男は10m程先で佇んでいる
マックスが一歩前に、マイトが一歩下がり2人を守る位置に立つ
また・・・そんなにこの世界を滅ぼしたいのか
そうだね、そんな所かな
そんな事はさせない、止めてみせる
それでここに来たのかい?無駄な事をしているねぇ
無駄だぁ!?
そう、こんなところを封印しても何の意味もないよ。無駄な努力ご苦労さん
・・・嘘だな
・・・ほぅ?
もしここが本当に何もないのならお前はこんなところ(・・・・・・)に来ないだろう?
・・・
それにあの灯台のトラップ・・・意味もないところに魔力を使いすぎじゃないのか?
・・・邪魔だな・・・邪魔・・・やはり貴様は・・・邪魔だ!!
キィン
マックスは振り向きざまに・・後ろから飛んできた矢を叩き落す
何故・・・気付いた
前に立っていた男の姿がぼやけ、消えていく
代わりに後方の瓦礫の上に男が立っていた
話が長すぎ、フローネが町全体に魔力を流してさぐ探ってくれた
そう・・・か・・・だが、これも本体ではない・・・今は忙しくてな、手が離せないんだ
何をしている?
さぁね、時期に解るよ
止めて見せるさ
やってみなよ、おじさん
失礼な、俺はまだ若いぞ
くくっ・・・まぁ足掻いてみな・・・無理だとは・・・・思う・・・・・けど・・・・・・ね
そういうと男はその場に倒れ、土に返った
操る糸となっていた魔力を切ったのだろう

新たな敵ってやつか
ですね・・・本当、何考えてるんでしょうね
あいつらが何考えてるかなんか知らねぇよ、あっちがその気なら応戦するまでさ
まぁ・・・そうなんですけどね
マイトのまっすぐな回答に少し笑みがもれる
ところでマイトさんもネートもどうしたんですか?
あぁ、うちの隊長の命令でな、俺らも世界を回ってお前と同じ事やってんのさ
でもどうしてここへ?
お母さんに言われたんです、兄さんが危ないからって
あぁ・・・なるほど・・・お見通しって訳ね
でも間に合ってよかったです
正直、助かったよ」「ありがとうございます

これから2人はどうするんですか?
俺らはまた別行動だ、だが目的地はお前と同じさ
つまり別ルートで各地を封印をしつつ、あの場所に集合って訳ですね
そゆこと
解りました・・・気を付けてくださいね
その言葉、そっくりそのままマックスに返すぜ
・・・そうですね、以後気を付けます
それじゃ頑張れよ、俺らはもう行く」「兄さん・フローネ、またね
あぁ」「お気を付けて


それじゃ・・・一休みしたら行きますか
そうね


・・・正直なところかなり危なかった・・・
・・・こんな事じゃあの子等に叱られるな・・・

・・・エミュとミラは頑張ってるのかねぇ・・・


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