エピローグ



フローネの病室をゆっくりとノックする
コンコン
はーい どうぞ
ガチャ
フローネはベットに腰掛けてこちらを向いていた

フローネさん 具合はどうですか?
はい、おかげさまで もう大丈夫ですよ ご心配おかけしました



フローネの傷はそれほど深くなかった
・・・
あの時急いで作り出した水により光は僅かに屈折され
心臓の少し左 脇の下あたりをえぐ抉っただけですんだ
確かに傷は負った、だが心臓を貫かれるかもしれない状況だったのだ
この結果で僥倖といえよう



みんなもう帰っちゃったんですね、すいません僕だけ遅れて
いえ、でもどうしたんですか?
退屈だろうと思って いろいろ本を選んでたんですけど結構時間かかっちゃって
そう言いながら紙袋をフローネに渡す
わぁ ありがとうございます。昨日 一昨日は少し時間が有りすぎちゃって
そう言いながら紙袋から本を数冊取り出しパラパラとめくる
本当 ありがとうございます

それで、怪我の方はどうですか?
もうほとんど大丈夫ですよ、あの時すぐに治癒してくれましたから
ほとんど違和感も無くなりました

そうですか・・・よかった・・・





会話が途切れた





アスカリトは・・・
はい?
マックスの呟きを聞き取れず聞き返した
アスカリトは・・・なんで自分なんか助けたんでしょう・・・
あいつ1人でもアイザックを倒せただろうに・・・

子供を助けたいって 親ならそう思うんじゃないですか?
でも俺は・・・あの時はいろいろ考えて自殺しましたが・・・やった結果はただの逃げです
そん―――
俺は・・・あの時フローネさんを自分の手で殺したくなんか無くて
でもアイザックの所に行くのも同じくらい嫌だと思ったんです

・・・
俺は・・・自分では何も出来ないと 自分で決め付けて
・・・その後の事なんてまるで考えていなかった

・・・
俺は・・・おれは・・・えっ!?
グイッ
突然 フローネはマックスの頭に手を回し、自分の胸に引き寄せた
え!?フローネさん ちょ・
いきなりの事に驚き 顔を上げようとするがフローネはさらに力を入れた
フローネさん・・・その・・・胸が・・・
マックスさん・・・自分を責めないでください
え?・・・で・でも・
いいんですよ・・・・・・いいんです
フローネは優しく子供をあやす様に 頭をぽんぽんと叩き、背中をゆっくりと撫でる

フローネさん・・・
マックスは力を抜いて頭をフローネに預ける
私の事・・・守りたいと思って・・・死のうとしてくれたんですよね?
あの時はすごく悲しかったですけど・・・でも・・・
今・・・結果としてあなたがいるというだけで・・・すごく嬉しいです

・・・

マックスがゆっくりと顔を上げるとフローネと目が合う
マックスさん、あの時の告白 まだ有効ですよね?
はい
一瞬唇が合わさる

ふふっ
え?マックスさん どうしたんですか?
そういえば今までのキスって全部フローネさんからだなぁって思って
あ・・・そうですね・・・キスして・・・くれますか?

マックスは頷いてフローネに顔を近づける
フローネが眼を閉じ 唇が合わさる


今までより少し長いキスの後 二人で笑い合っていた

世界を救った・・・そこまでの事をしたつもりは無い
一応シープクレスト・・・いや、少なくともあの森だけは自分たちが救ったといえよう
そして自分の目の前にいる人を守れた
それだけで十分だった


これからもこの人を守り続け、そして 守られ続けるのだろう

二人で一緒に居る限り
つまり
・・・
これからずっと
・・・
時が経ち、子が生まれ、育ち、巣立っていく
そうした後までずっと

ずっと



あとがきに進む
選択画面に戻る
トップに戻る