決着



声が聞こえるような気がする
一番聞きたかった声が再び聞こえてくるようだ
幻・・・・聴・・・・・か・・?
声がでた、意識すると身体中の感覚が戻ってきている
・・ん・・・スさん・・・・マックスさん! マックスさん!良かった失敗したのかと
あ・・・れ?・・・・・・おれ・・・毒で・・
アスカリトさんが助けてくれたんです
・・・・・・そうか・・・何となく感じる・・アスカリトの魂が俺の中に
・・・そうか、俺を助ける為に・・・アスカリトが・・・

はい
・・・
しばしの暗い沈黙

だがそれを振り切るようにマックスは顔をあげる
今は・・今はアイザックのことだけを考えましょう
・・・あいつはまずフローネさんを狙ってきます

え?
最後の操られていた時フローネさんに対する憎悪を感じました
フローネさんの為に命を投げ出したのが気に食わなかったみたいだ

どう するんですか?
アイザックを殺すつもりです、あいつは危険すぎる 俺が決着をつける
勝てるんですか?あんなに強かったのに 逃げた方が
逃げればこの町が破壊されます・・・それにアスカリトの魔力が加わったから
勝算はあります・・・能力は互角だけどあいつはこっちのことを知らない

マックスは地面に手を当て呪文を唱える
すると地面の中から羽を持った魔獣が現われた
行きましょう 乗ってください
はい
ズーーーーーーン
二人が乗ったとき遠くで山を揺らす爆発音がした
来たか アイザック 行け!!
マックスが命令すると同時に空高く舞い上がり超スピードでアイザックの方へ飛んでいく
不思議な事に景色はすごいスピードで後ろに流れているのに全く風を感じない
まるで電車に乗っているかのようだった

2人はすぐに目標を捕らえる マックスが慎重に狙いを定め矢を射る
矢は一直線にアイザックの方に飛んでいく
が、ギリギリの所で気付き避けられてしまう

っ!? マックス?・・・なぜ生きているのだ
アイザック、おれはアンタを殺す、あんたの好きにさせる訳には行かない
・・・アスカリトか・・・フンまぁいい、もう一度問おう・・・
その必要は無い、おれはアンタを殺す、全力でな!!
マックスが叫んだ直後魔獣がアイザックに向けて飛びかかる
おんなぁ 貴様のせいだ 貴様のせいだ 貴様さえいなければ
アイザックの両手から炎が放たれる
同時にマックスが水を作り出し炎をかき消す
ジュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ
一瞬で蒸発した水蒸気は霧となり、両者の視界を遮る
迷うことなくその中に魔獣を突っ込ませるマックス

アイザックが風を起こし霧を払った直後、アイザックの眼前には魔獣の爪が迫っていた
ちぃっ!!
辛うじてそれを避けたアイザックが再び手を振りかざした
これで どうだぁ!!
っ!!?
激しい電流が二人を襲う
魔獣はぎりぎりのところで避けるが休む間もなく次々と電流の渦が放たれる
マックスは急激に魔獣を駆り、アイザックとの距離をとる
間断無く放たれ続ける電流を紙一重で避す
回避に専念しないと危険なほどの苛烈な連続攻撃
攻撃に転じる暇も無いほどの激しさだ

このまま魔力が切れるのを待つしかない
そう思った時急激に電流が弱まった
地の結界を張りました、これで大丈夫です
マックス達の周囲には異質の空間が広がる
通常の地の結界とは比べ物にならない程 純度の高い魔力に満たされた空間
よほどの高等レベル魔法ですらもこの結界の前には威力が霧散させられてしまうはず

よし、いっくぞぉ!
再び魔獣を操り一直線でアイザックへと近付く
くそぉ
再び放たれた電流
だがフローネの結界に触れた瞬間からその威力は一気に減退
魔獣の持つバリアに触れた瞬間、それまで弱められていた電流は掻き消えてしまう

両者のすれ違う瞬間 マックスがアイザックを指差す
形勢逆転だ!!
言うと同時にマックスの指から光が収束する
その光が放たれる前に意図に気付いたアイザックが横に転がる
アイザックが居た空間を一筋の光が通り抜ける
地に突き刺さった光の線は、弱まることなくそのまま地を貫いてゆく

バカな・・・光を創り出しただと
これはアスカリトが残してくれた能力だ、収束されたこの光の力なら魔力障壁を貫ける
再びマックスの指が光る
先ほどと同様に放たれる光
発射とほぼ同時 人の感覚では近くできないほどの一瞬
アイザックの額へと吸い込まれているのが感じ取れた
これで決まった
マックスはそう思った
が、アイザックに届く前に光が消えてしまう

くっくっく、少し冷っとしたが 来る方向さえ読めば厚く張った魔力障壁(マジックウォール)がおれを守る
ちぃっ
魔獣を操り前後左右上いろいろな方向から攻撃を試みるが全て読まれてしまう

また膠着状態だな・・・だがおれには次の手がある
なに?
お前は他人が傷つけられるのを極端に嫌う、他のBFを見つけて・・・
やめろぉ
再び放った光はアイザックの直前で消える
さぁ おれを止めてみろ
アイザックが背を向け森の中に歩き出した
させるかぁ
マックスさん
今まで黙っていたフローネが耳打ちしてきた
え?
・・・
! 分りました やってみます

魔獣をアイザックの前方上空に移動させる
・・・なにか思いついたのか?愚弟よ
アイザックは笑いながらこっちを見ている
あぁ・・・くらえ
続けざまに放たれた2筋の光がアイザックの額を狙う
無駄ぁ ぐっ!?
2本の光はアイザックの両のそれぞれを貫いていた
くっ・・・何をした?
地獄でゆっくり考えろ きっと時間はたっぷり有る
再び放たれた光はアイザックより少し前の地面に向かっていく
外れるかと思われるその光
だが事前に用意された水に反射し軌道が僅かに変化 アイザックの心臓を貫く

ガァッ
光はそのまま虚空へと消える
一瞬遅れてアイザックの胸から紅いものが一定のリズムで噴きだす
手で押さえて止まるような傷ではない

胸を抑えていた手は力なく落ち、自重を支えきれなくなった足が折れた
やったか?・・・なっ!?
動かなくなったはずのアイザックの体が激しい光に包まれる
徐々にそれが一点に集まったかと思うと一気にこちらに向けて発射された

倒れたアイザックは全ての力を込め光を放ってきた
光の軌道は自分の心臓より数十cm左・・・フローネの心臓に向かっている
驚くほど冷静に正確に物事が見える、光もまるでゆっくりと伸びてきている様に見える
それがゆえに絶望感が溢れる、自分にはこれを止められない
自分のマジックウォール魔力障壁ではとめることの出来ないほどの魔力の絶対量
フローネの力を借りれば止められるだろうが魔力を集める時間すらない
頭だけがフル回転しているから身体はぴくりとも動くことはない
故に自分の身を盾にする事も不可能
いや、盾の昨日すら果たさずに光は貫いていくだろう
・・・

なぜ・・・土壇場で反撃など許したのだろう
おそらく足に攻撃を加えた時に技を記憶された
それに光を水に反射させる方法を教えてもらわなければその前に負けていただろう
・・・
!!
思いついた
反射させる水壁を作る時間は無い
だが、助かる可能性はまだある
思いついた直後 全ての時間の流れが元に戻っていく
光が迫る
間に合え〜〜〜!!
自分の中の魔力を一気に放出し作り出すものを念じる
きゃっ
赤い血が飛び
フローネが魔獣から落ちていく
フローネェェェ!!!
急いで魔獣を降下させ地面すれすれでフローネを掴む


その近くではアイザックが満足そうな顔で死を迎えていた



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