きもだめし 中編



ガサッ
「!?」
ライトを当てる・・・その茂みから出てきたのは
・・・犬? 山犬か、フローネさんこの仔に話を聞いてみません?
い・いや・・・この仔・・・
え!?フローネさん?
マックスがフローネに話し掛けるとフローネは膝をついてガタガタと震えていた
震える指が犬を指差している。マックスが犬をもう一度見ると

ドロッ
犬の目が地面に落ちた
なっ!?
直後ナイフを手にし戦闘態勢に入る
アンデットモンスター?なんでこんなところに、フローネさん!
やぁ・・・この仔の・・心・・・がぁ・・
フローネは震えて動く事も出来ないようだ

グゥ・・ゥ・・ゥ・・・ガァッ
くっ
飛びかかって来るのをナイフで切りつける
腹からボトボトと腐肉が削げ落ちていく
グギャァァァァ
やぁ・ぁ・・ぁ
フローネさん!?
明らかにさっきよりも震えが増している
こいつの声を感知してるのか?・・・やるしかない

ゾンビに向けて魔力を放出しマジックウォール魔力障壁を張る
夢限の言葉通りなら これでフローネが感じ取る魔力を止められる筈であった
フローネさん、大丈夫?
はぁっ はぁ はぁ はぁ 大丈夫です・・・なんとか
心配事が消えて冷静になれば決着は早かった
ナイフを突き立て内部に魔力を送り直接焼き払った

わるい・・成仏してくれ  フローネさん、落ち着いた?
はい、すみません 役に立たなくて
そんなこと言うなって、仲間でしょ?
・・・はい
んーでもなんでこんなところにアンデットが現われたんだろう
アンデットモンスターはかなり特殊な条件下じゃないと出現しないはず

さっきの仔の声が断片的に聞こえたんですけど
なんだかマックスさんを狙うよう命令されてたみたいです

僕を?・・・そうか・・・そんな事するのあいつくらいでしょうね
あの?それなら逆って無理ですか?
えっ!?
ゾンビにする事が出来るなら、その逆もって・・すいません無理言って
いえ・・・・・・やってみる価値は あるかもしれませんね

ガサガサガサ
まさか!?・・フローネさん?・・・っ!
フローネはさっき以上に振るえ今にもその場に倒れそうになっていた
とりあえずここは引きます、これだけの数を相手にしていたらフローネさんがもたない
うぅ・・・・あっ・・・
フローネの声は返事にすらもならなかった
ゴメン
フローネに魔力を送り込み眠らせると 抱えて走り出した



ルシードに言われたとおりバーシアは頂上に来ていた
ゼファーー
バーシア? 1人か どうした?
ルシードが山犬に追われてて、これから頂上に来るから犬をどうにかしてくれって
・・・何となく事情は分ったが、ルシードらしくないな 山犬くらい倒してしまいそうだが
ティセが一緒なのよ
なるほどな・・・ルシードもティセには弱いな・・・これを使え
そう言ってゼファーがバーシアに霧吹きを渡す
何これ?
獣の嫌がる香水みたいな物だ
元々この小屋の周りにはこれが散布されていて安全を保っている
念のため少し多めに撒いておけば山犬は嫌がって近付かないだろう

サンキュ、これやったらルシードに知らせないと
一通りの作業をゼファーとすませ ルシードを探しに再び山林に入っていく

何匹もの犬を引き連れて走るルシードはすぐに見つかる
風の魔法で牽制しながらティセを抱えて爆走している
ルシードッ!準備できたからそのまま頂上に来て
おう

ルシードが頂上の小屋にたどり着くとかなり居たはずの山犬は一匹も居なくなっていた
ふぅっ
一息ついてティセをその場に下ろし 自分も座る
何をやったんだ?
香水だ、獣の嫌がる な
なるほど、で?状況は
ルーティとビセットは共に行方不明で連絡は無し
マックス達からの連絡も無いが、まぁあの二人は問題ないだろう

フローネはマックスと一緒か?
あぁ

そっか、よしバーシア 二人を探しにいくぞ
アンタ、あんだけ走って大丈夫なの?
俺ならなんともね―よ、ってティセどうした?
なんだか あたまが くらくらしますぅ
ティセもこの匂いに反応しているのかも知れんな
ティセの腕の中でウサギも一緒にのびていた
ティセたちはここにいては危険だろう、ルシード
バーシアといっしょにティセたちを下山させてやれ

いや、俺1人で行く、バーシアはこのあたりの捜索を頼む
1人で大丈夫?
俺は大丈夫だ、お前こそしっかりやれよ ほらティセ負ぶされ

旅館に着いたら通信してくれ、状況を伝え今後の動きを決める
おう
それとこれも持って行け
ゼファーはルシードに先ほどの霧吹きを渡す
予備の分だ何かあったら使え
サンキュー
ルシードは全然疲れていないようで先ほどのようにまた走り出した


あても無く1人出歩いていたビセットとルーティは
偶然にも一緒になり二人で山の中を歩いていた
あーまだ町につかねーのかなぁ 通信機も使えないし
もー言わないでよ、余計にいらいらするじゃないのよ
だってなぁ〜、この通信機壊れてんじゃねーの?
ビえっとが通信機をぶんぶん振ると紙が落ちてきた
それにルーティが気付き拾った

ん?何コレ・・・『迷ったら中を見ろ』だってぇ
ビセットが迷いそうだから入れてくれたのね アハハハ

なにおー、って あっ! ほらルーティのにも入ってる
えーワタシもぉ?まぁとにかく見てみようよ何かいいことが書いてあるかも
でもコレ見ると負けた気分にならない?
うーん でもまぁしょうがないんじゃない? 見た後にこっそりと戻しておけばいいし
あーしかもコレ糊付けしてあって破かないと空かないや くっそ〜ゼファーめ

ビリビリ
ビセットが中の紙を取り出す
なになに・・・迷ったら上に登って頂上を目指せ?・・・って何だコレ
あたしのも同じ事が書いてある
なんで登らなきゃいけないんだよ・・・ん?ルーティあれ!!
あーーーーー町の光だーーー
やった〜〜〜〜

二人は我先にと駆け出した



草の上にフローネを寝かすと先ほどかけた自分の魔力を抜き取る
すると間もなく目を覚ました
ん・・・うん?
おはよう、フローネさん
あれ・・おはよう・・・ってさっきのゾンビ達は? あれ?
とりあえず逃げてきました、ここは洞窟です自然に出来たみたいですね
逃げ切れたんですか?
いえ、入り口のあたりで待ってますよ 結界を張ったから入って来れないでしょうが
じゃぁいずれは
僕がなんとか・・・いえ言葉を濁してもしょうがないですね
・・・殺すしか・・・ないです

そう・・ですよね、ごめんなさい無理言って
とりあえず最後に1,2匹だけ残して、それだけやってみます でも大部分は・・・
しょうがないですよ、あの仔達もあのままいるよりはずっといいはずです
そうですね・・それじゃ行って来ます、フローネさんはここで待っててください
あ、私も
フローネさんはここにいてください、さっきの二の舞になります
・・・そうですよね、私は足手まといになっちゃいますよね
そんなこと言わないでください!そんなこと言っちゃ駄目です
仲間じゃないですか助け合って当然でしょう?それに・・・

・・・それに?
・・・あー・・いや・・・あ、それに外の奴らを倒している間に魔力が尽きると思うんで
そしたら補給してくれますか?

それはいいですけど・・・もうひとつ何か言おうとしてませんでした?
や、無いです それじゃ行って来ます
それ以上の詮索を避けるようにその場を離れた



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