アスカリトの真意は



アイザックがBFの前に姿をあらわしてから数日が過ぎた
BFのメンバーはいつも通りに戻ってきたがマックスはそうでもない
一心不乱に訓練していたかと思えば、その後座り込んで考え事をする
何を考えているのか 解りきっているが声のかけようが無い

そんな中シープクレスト保安局にある手紙が届いた
アスカリトから送られた犯行予告である
前回はBFと多くの捜査員を出し抜いて絵を盗まれてしまっていた
2度目の挑戦状
この挑戦状に対しロイド部長は前代未聞の数の捜査員を動員する
その数は全捜査員の半分以上
ほかに事件が起こらないならまだしもこれだけの総動員はほかに類を見ない

当然BFは対魔法の戦力として全員の出動が決められた
今回のターゲット標的はシーサイドホールのある一室に飾られた絵画である
現場が大きいにもかかわらず捜査員はそれを埋め尽くすように配備されている
BFは一番大切な実際に絵画の有る部屋に配備された

まったく・・・本当にアスカリトの奴 来んのかよ・・・これだぜぇ
ビセットがカーテンを開けながら呟く
窓の外 つまりホールの外にもかかわらず捜査員で埋め尽くされている
ホールの中は見なくても分るような状況だった
確かに捜査員の数は多いが・・・それでも奴は来るだろう そういうやつだ
ルシードが言いながら今回の標的の絵を見ていた

と 言うより、逆にこれだけの数がいるからこそ 簡単に近づけるでしょうね
マックスが言うとルーティが疑問の声を上げる
えーそうかなぁ? 入ってきたらすぐに見つかっちゃうじゃない
例えば・・・ルーティさんがあの人の多いところを警備していたとして
周りの人を全てを覚える自信有りますか?

うぅ・・・さすがにあれだけいると無理かも
ま・ここでしっかり守ればいいってことだよ
ルシードが締めくくりこの話は終わりになる


キィ
ドアが開く音にBFが身構える
が、入ってきたのは先ほど挨拶していたこのホールのオーナの娘フェスだった
「お茶とお菓子お持ちました、急いで作ったので少し形がいびつですけど」
へぇ フェスさんが作ったんだ うまそうだなぁ いただきまーす
ビセットがクッキーをほおばる
BFのみんながお茶を貰ってお礼を言う
ルシードだけはカップを口まで運んだが口をつけずにそのまま戻した



ボーーン

日付が変わったな、今から予告日だ。みんな気ぃ引き締めろよ
そうですね
ルシードが時計を見ながら言ったが、返事をしたのはマックスだけだった
二人は部屋の異常さに気付く
ついさっきまで話をしていたバーシア、ルーティ、フローネは机に突っ伏して寝ていた
そしてビセットは先ほどまで立っていた場所で倒れていた
おい、どうした?
ルシードが隣りのバーシアの肩をゆする
「さすがですねルシードさん、無意識の内に警戒していたという訳ですか」
なっ!?お前アスカリトか!?
「ですが貴方にも眠ってもらわねばなりません」
フェスがルシードを指差すとルシードはその場に崩れた

ルシードを眠らせるとフェスはアスカリトの姿になる
とはいえ「前回の時に見せた姿」というのが正しい
本当の姿かどうかは誰にも判別する事はできないのだ 本人を除いて

「ちなみに皆を起こそうとしても無駄ですよ、何をしても目覚める事はありません」
お前を倒せば起きるってことか?
「いえ、まぁそれでも起きるとは思いますが
そんな事なさらなくても朝6時の鐘と共に目を覚まします
外でお休みになっている捜査員の皆さんと一緒にね」
なっ!?
慌ててカーテンを開けて外の様子を見る
外を警備していたはずの捜査員が全員その場に倒れていて
町すらも眠ってしまったかのように静まり返っている

なぜ俺だけを残した?俺も茶を飲んだはずだが
「貴方に用がございましてね、他の方達には邪魔されたくありませんでしたので」
何の用だ? 話でもあるのか?
「いえ・・・貴方と・・・戦おうと思いましてね」
突然マックスに向けられたアスカリトの両手から炎が放たれる

ぐっ
とっさに横に転げてかわすが炎はルシードを包んでいた
「おっと失礼」
パチン
アスカリトが指を鳴らすとルシードを包んでいた炎が一瞬で消える
「失礼しました 待っていますのでルシードさんに回復魔法をかけてあげてください」
な・お・お前がやったんだからお前が治せ
「おや、そんなこといっている場合ではないでしょう
もしかして・・・回復魔法が使えないとでも?」
あぁ、そうだよ だから頼む・・・やってくれ
完全に使えない訳ではない
だがそれは微々たる力しか発揮されない事は分りきっていた
到底この重度の火傷を治すほどの力は無い

アスカリトがゆっくりと呟いた
「なぜ?」
?
「なぜ貴方はできないと決め付けるのですか?
魔法など使い方は人それぞれ、『これが回復魔法』などと言う決まった形は存在しない」
何が言いたい!? 訳がわからん
「貴方は相手に魔力を送り込み破壊する事ができる」
!!?・・・なぜ知っている?
「それを逆に再生することができるとは思わないのですか? やってみなさい」
そんなこと無理に決まっ  
「マックス 自分の能力に限界を作るな お前には無限の力が眠っている さぁ」
くっ

言われるままにルシードの身体に手を当て魔力を送り込む
「さぁ 体が治ることをイメージしてください
細胞の一つ一つが再生していくさま様を強くイメージしなさい」
アスカリトの言葉が自然と心にしみていく

しばらくするとルシードの火傷は綺麗に消えていた
「よろ宜しい、合格です・・・次のレッスンに移らせていただきましょう」
な・さっきのはわざと?
「先ほどのようにまた炎を放ちます、水の魔法で防いでください」
アスカリトはマックスの問いに答えるつもりは無いらしい
そんな事出来な  
自分の限界を決め付けるな マックス!!
・・・
「水をイメージしながら魔力を放出しなさい・・・お前なら出来る」
水水 みずみず ミズミズ
「いきますよ、はぁっ
先ほどと同じように振り上げられた手から炎が放たれる

ジュウウウウウ

マックスが放った水は炎をかき消しアスカリトをも濡らしていた
「お見事 予想以上の力です・・・それでは続いてレッスン3」
お前は一体・・・
「すみませんが その質問に答えるつもりはありません
さて、最後のレッスンです・・・貴方にも寝てもらいます」
なッ!?
「自分がどのように眠らされていくのかをよく憶えておきなさい」

アスカリトが指を鳴らすと急に睡魔が襲ってきてマックスはその場に倒れた
虚ろな意識の中で声が聞こえた
「頼むぞマックス アイザ・クとめ・・・・・・・・お前・・しか・・・た・む・ぞ我が・・・・・クス・・・」



ボーン ボーン ボーン ボーン ボーン ボーン


あ〜あ、結局アスカリトにしてやられちゃったね
ビセットがぼやいていた
すでに任務は終了してBFの面々は事務所に戻っていた
全くあれだけの捜査員をみんな眠らせたくせに 何もしないで戻るなんてなぁ
そう、アスカリトは結局絵を盗まなかった、絵の前に置手紙が残されていた
『確かに拝見しに参上致しました』と

なぁ?マックス お前アスカリトと何か話したのか?
一応報告書には全員が眠った事にしておいたが

・・・・・・アスカリトは・・・いえ、アスカリトのことは後回しですね
ルシードさん特訓付き合ってくれませんか?

お?どうした 急に
アイザックに勝つための特訓ですよ 少しでも時間が惜しい
なんか知らんが元気になったみたいだな
よし各自訓練始めろ 奴はいつ来るか分らねぇんだからな



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