第11章「ハッピーバースデー」



マックスがBFとして活動し始めてから既に数ヶ月
世間で言う夏休みももう残り少ない
まだまだ暑いものの日は短くなってきており、確実に秋へと近付いていた


それはゴミだし当番の仕事を終え
訓練に戻ろうと事務所の前と通った時にゼファーさんに呼び止められた事から始まった

マックス ちょっといいか?
はい?
ちょっと話があるんだが・・・
そう言い、回りを気にしながら僕を事務室へ誘った

突然呼び止めてすまんな
事務室にいるのはゼファーさん1人だけのようだ
いえ、大丈夫ですよ
まぁ、出来るだけ手短に話そう。9月4日・・・何の日だか解るか?
いえ・・・・・・解りません、何かありましたっけ?
フローネの誕生日なんだ
へぇ・・・それじゃ何かお祝いするんですよね?
そうだ、やるのは3日なんだがな・・・この日しか都合が合わなくてな・・・
3日に場所はミッシュ、クーロンヌにも頼んでパーティーをする予定だ

解りました、3日ですね、やっぱみんなプレゼント用意するんですよね?
あぁ、この前もその前もそうだったろう?
あれ?でもそのときって事務所でやりましたよね?何で今回はミッシュなんですか?
俺は派手なのが嫌いだったからな、ビセットの時は向こうの都合が合わなかったんだ
そうですか・・・プレゼントどうしようかなぁ・・・
まぁ、少し早めに話したからな、ゆっくりと考えてくれ
でも悩みますね
よく考えたプレゼントなら、どんな物でも喜んでくれるさ
それが難しいんですよねぇ
そうだな・・・まぁそういう訳だ、一応フローネには秘密だからな
はい 解りました、それでは失礼します
一礼しながら事務室を出る
(・・・プレゼントか・・・どうしよっかなぁ)

−ドアを閉めた直後の事務室−
次はフローネか・・・
扉のすぐ外に居るマックスには聞こえないようにゼファーが呟いた



次の日、休憩時間に考え事をしながら町をぶらぶらしていた

ん〜〜〜〜
(うーん、フローネさんの喜びそうな物・・・フローネさんって・・・
1、ホラー好き(特にニコラス・ピースクラフト)
2、動物好き(部屋はイルカ仕立て)
動物そのものは、あげる時はいいけどその後の世話のことを考えると
事務所をいつ空けるかわからない仕事をしているから向かないだろうなぁ
)

「あれ?マックス君?何うなってるの?」
あ・・・えっと・・・シェールさん?だっけ?
「そうそう、憶えていてくれたんだね」
そっちこそ、一度歓迎会のときに顔会わせたきりだったのに
「こっちは客商売(の手伝い)してるんだから当然よ、で?どうしたの?」
フローネさんの誕生日プレゼントについて・・・ね
「そういえばパーティーやるんだってね、なんかお姉ちゃん言ってたわ」
シェールさんはフローネさんの好きな物に心当たりってある?
「・・・うーん、有るといえばあるけど・・・」
ほんと!?
「タダじゃ教えられないわね」
う・・・どうすれば?
「これ」
そう言いながら鞄からノートを数冊取り出した
えっと・・・それのノートはなにかな?
「今は何月?」
8月…の終わりだね
「そう、そして9月になると学校が始まっちゃうのよ」
・・・つまり宿題を手伝ってくれってこと?
「うん♪」
一応休憩時間が終わるまでだからあと1時間ちょっとだけだよ?
「いーっていーって、あ!お姉ちゃんには内緒よ」
はいはい
「それじゃ時間も勿体無いし行こうか」
りょーかい


1時間後

時間か・・・ここまでだね
「アリガト、マックス君のおかげでずいぶん助かっちゃった」
それじゃ、その・・・
「うん、また頼むね」
いや・・・そうじゃなくって・・・フローネさんの・・・
「分ってるって♪、あのね・・・」
うん・・・

「フローネちゃんはチョコタルトが好きなの、今度のパーティーでも出す予定だしね」
・・・・・・それってつまり、僕がプレゼントする訳には行きませんよね?
「う〜ん、まぁ普通はしないだろうね」
・・・・・・騙した?
「うそは言ってないわよ、一応ね♪」
でも僕の意図は知ってたよね?
「もぅ、男の子があんまり細かい事を気にしないの、ほら、もう時間じゃない?」
はぁ・・・人に頼るな・・・って事ですかね

「まぁ、一応アドバイスしておくと・・・マックス君の選んだ物なら何でもOKだと思うよ」
アドバイスどーも、それじゃまたね
「今度クーロンヌでおまけしてあげるよ」
ありがと
「また頼むね〜」
・・・それはちょっと勘弁してくれ・・・


シェールさんと別れて事務所まで戻る間もずっとプレゼントのことを考えていた

・・・ホラー系は渡してみたら既に持っている可能性が高いし
僕が選んでも趣味に合わないだろうから却下・・・
・・・動物そのものってのは辛いから、動物をモチーフにしたものかなぁ
でも置物って部屋の中でホコリ被るだけだし
女の子だしアクセサリーとかかなぁ・・・
・・・そうするとペンダント、指輪、腕輪、ネックレス、ブローチ、ピアス、かんざし・・・
それに服に合わせて青・・・海の色とかかなぁ・・・
でもアクセサリーで動物系ってどうしても子供っぽくなるから別にこだわる必要は無いか

あれ?もしかして・・・
あとで資料室をで調べてみるか

とりあえず思考がある程度まとまり少し上機嫌で事務所に戻った



その日の当番で思っていたよりも資料室に来るのが遅れてしまった
そうしたら、資料室から出てくるフローネさんとバッタリ出会う
あれ?フローネさん?
マックスさん?調べ物ですか?
うん、ちょっとね
まさかあなたのプレゼント探してますとも言えないので言葉を濁す
あ、私ちょっと出かけてきます、夕飯までには戻りますから
は・はい、いってらっしゃい
フローネさんと別れて資料室で先ほど考えていた事を調べ始める
やっぱり・・・
意外にも早く 思ったとおりの結果を見つけられ少し嬉しくなる


次の日
昨日と同じように休憩時間に事務所の外へ出る
昨日とは違い今日はちゃんとした目的が会った
エクイナス山へと入り、ある程度進んだところで魔力を集中する
そして不思議な魔力が感じられるところを重点的に、少し掘って ある物を探し始めた


1時間後
思ったよりも時間はかかったがその分かなりの数を発見できた
僕の持っている袋の中には綺麗な水色をした小石がたくさん入っている
よし、こんなものかな・・・
その袋を大切に抱えて下山し、次の目的地へと移動する


次の目的地はアクセサリーショップ、ただし普通に売るだけのところではなく
他の店より少し特殊な事をしていた
これでブレスレットを作って欲しいんですけど
そう言って袋の中身を見せると店長はかなり驚いた顔をしていた
「ふぅん・・・」
少しの間こっちをじっと見てきた後、ようやく口を開いた
「ま、いいでしょ・・・いつまでだい?」
出来れば10月3日まで…って大丈夫でしょうか?
そういうと店長は少し微笑んだように見えた
「分った、10月1日に取りに来な、遅れたら没収するかもしれないから忘れないようにね」
そんなに早く?、ありがとうございます
「いや、少し面白そうだからね・・・プレゼントかい?」
え!?・・・・・・はい
「渡した結果を後で聞きたいねぇ・・・恋人かい?」
べ・別にそんなんじゃないですよ、誕生日プレゼントですから
「ま・いいさ、早速始めるからまた1日になったら来な」
あ・サイズとか・・・
「あぁ・・・そうだったねぇ、どれくらいだい?」
・・・・・・・

「それじゃ、また来な」
はい、よろしくお願いします
「あ・そうだ、ちょっといいかい?」
はい?
「あんたの持ってきた石、結構数が多いから余ったやつ貰っていいかい?」
はい いいですよ、このためだけに拾ってきたんですし
「ん、それじゃな」
はい


宝石店を出たあとは傍から見てもかなり上機嫌だったらしく
途中でフローネさんとすれ違った時にどうしたのかと訪ねられてかなり焦った
まぁ出来るだけ平静を装おうとしたが・・・ちょっと自信が無い・・・
フローネさんが急いでいたようなので追及されずにすんだようなものだ
次からはもうちょっと注意しないとな・・・




そしてブレスレットも滞りなく出来上がり、受け取った

このブレスレットの素材は特殊な石で、魔力を帯びている
それほど珍しい石ではないのだが
魔力を持たない人には他の石と区別が出来ない為、一般に売られては居ない
エクイナス山にも落ちてはいるが、魔力がある程度満ちた場所
・・・つまり自然が溢れるところにはどこにでも形成される石だ

淡い水色をしており、磨くとそこそこに綺麗
そして何より魔法能力者が魔法を使うのを助ける働きがある
この石自体が魔力で出来ている為か
この石を身に付ける事で体内の魔力を引き出しやすい状態に出来る
ただ効力はそれほどでもなく、気休め程度の物
一応実用性はあるが、なくともほとんど支障は無いが
それでも何か効力をもたせるためにこれをプレゼントにしたのだ


そしてパーティー当日の朝

朝のミーティングでマックスとフローネに本部出頭の命令があった
理由は書類提出などだが、本来ならルシードやゼファーがする仕事だった
だが、何となく理由がわかったのでマックスは何も口出しせず了解した
フローネも特に口を挟む事は無くそのまま朝のミーティングは終了となった


午前の訓練は通常通り行なわれ、昼食後 本部へ行く前に部屋に戻った
部屋で身支度をしているとドアをノックされた
はい?
俺だ、入るぞ
ゼファーさん?どうぞ

今日の出頭の意味・・・わかっているか?
他のみんなはパーティーの準備をするんですか?
そうだ そこで、本部での仕事などすぐに終わるだろうから
レインステップにでもフローネを誘って足止めしてくれ

はい、分りました・・・どれくらいですか?
大体午後の4時ぐらいには準備が終わる
他の場所でも回って出来るだけ時間をつぶしてくれ

がんばります
そう気張る必要は無いさ、まぁ上手くやってくれ
はい・・・あっ
どうした?
これ僕からのプレゼントなんですがミッシュまで持っていってくれませんか?
分った、それじゃ頼んだぞ
はい



簡単な身支度をしてフローネさんと事務所を出る
この後みんなミッシュへと移動しパーティーの準備を手伝う手筈だ

本部での仕事などそう多くはない
先週の仕事の内容と、備品の状況とその補充、特殊な事件があればその詳細
それらの書類を提出し、ロイド部長の質問があればそれに答える
むしろ本部での待ち時間のほうが長いくらいだった


本部での仕事が終わり建物から出る
当然4時には程遠く、現在午後1時
当然この後フローネさんを誘って時間を稼がないといけない
だけど言い出せない
本部を出て市庁舎通りを通って川沿いに出るとBF事務所がもう見える
・・・早く言わないと・・・
・・・今事務所には誰も居ないし・・・
・・・とにかく唐突でも良いから・・・
あのっ」「あのぅ
・・・
フ・フローネさんからどうぞ
いえ、マックスさんのほうから
えっと・・・ちょっと寄り道しませんか
・・・不自然すぎだし・・・
いいですね 私もそう思ってたんですよ
・・・え?・・・
行きましょ
は・はい


この後レインステップでお茶を飲み
アレクトール広場でゆっくりし、ボジェーロ百貨店などによって時間をつぶした
(ちなみにミッシュ方向にはいけないので新市街の方だけだ)
その後大体いい時間になってきたので
ミッシュへ自然に誘えるように占いサロン天狼星へ誘う

それじゃ次はミッシュにでも行きましょうか
そうですね
午後4時20分・・・ちょうどいい頃だろうと思いミッシュへ誘う


ミッシュの前でフローネさんの顔を盗み見る
ここを開けたらパーティー会場 驚く顔が少し見てみたい
「あ」
視線が交って慌てて顔をそむける

ミッシュのドアノブに手をかける
カランカラン

パパパパァン
二人とも誕生日おめでと〜う
クラッカーの音と共にミッシュに集まっていたメンバーの祝福の声が上がる
・・・今入ってきた二人共に・・・
へ?」「え?

だって私の誕生日は明日なのに・・・
明日は俺が都合が悪くてな・・・すまんが今日に変更させてもらった
確かにゼファーさんは明日本部に出頭する事になっている
そ・・・それはいいんですけど・・・

僕の誕生日って・・・?
自分で知らないのか?昨日がお前の誕生日だったろう?
ルシードさんはそう言うが自分には覚えがない
いや・・・魔学ではそんな行事はなかったですから・・・忘れてました

つまり二人とも上手く騙されてくれたってことね
二人の驚く顔面白かったぜ
ルーティさんもビセット君も腹を抱えて我っている
ほらほら、二人ともそんな所突っ立ってないでこっち来な
バーシアさんがテーブルに座って酒ビンを振りながら二人を呼ぶ
つまり早くパーティー(飲酒)を始めたいらしい


それじゃそろそろプレゼント渡さないとね
ビセットがそう言って二人に包みを渡す
その後も次々に二人にプレゼントが渡される
いまだ驚いたままの二人はとりあえずそれを受け取る
あ、それじゃこれ僕からのプレゼントです
ありがとうございます、私からも・・・これ
開けてみて良いですか?
はい、私も空けますね
二人でそう言って包装紙を取り、箱を開ける

・・・あれ?・・・
フローネさんコレ」「マックスさん
そう言って二人とも自分の渡された箱の中身を見せあう
この箱に入っていたのは自分が用意したブレスレットだった
だが相手が持っているのも自分が用意したブレスレットに見える
・・・もしかして・・・二人とも同じプレゼントを用意してたってこと?
ビセットが首をかしげながら訪ねてきた
そうみたいですね
えぇ・・・別に話していたわけではないんですけどね・・・
確かに自分が渡されたサイズは自分が用意したのよりサイズが大きい
つまり自分用に作ってくれたってことだろう
ありがとう、大事に使わせてもらいます
私もです、ありがとうございます

その後再び宴会は始められ、バーシアさんは相当に飲み、
メルフィさんはつき合わされ相当に酔っていた
ゼファーさんも巻き込まれたはずが、いくら飲んでもずっと普段通りだった
ビセット君とルーティさんも次々に出てくる料理を食べていき
みなパーティを楽しんだ


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