第08章「シンカー戦」



今朝事件が起こった

突然現われた魔物に宝石店が荒らされ、重軽傷者多数
唯一1人だけ無傷で逃げ出したが行方不明
魔物の現われ方、去り方、さらに宝石を盗ったという行動と、更紗の証言から
この魔物は旅芸人一座から逃げ出した魔物「シンカー」であると断定
この魔物を退治する為にBFに命令が下り、BFは港埠頭で待機していた

なールシード、こんなのでシンカーの奴本当に来んのかなぁ?
ビセットが山のようになっているガラスの欠片を指差しながら文句をいう
あー、奴はヒカリモン光物が好きらしいからな、こんだけ光ってんだから来んだろ
おーい、ルーティ、準備は出来たか?

うん、バッチリよ『シンカーでも何でも来い』って感じよ
や、シンカーにしか意味無いし
バーシアが突っ込んだ

おいマックス、これでいいんだな
はい、これで『呼び寄せて、逃がさない』というところまではOKです
でもシンカーはかなり強いらしいので皆さん気を付けてください

ビセットが意気揚揚と答える
任せとけって、シンカーの1匹や2匹まとめて片づけてやる
や、いっぱい来られても困るし
さっきから良くわからない突っ込みをしているバーシアにルシードが突っ込む
おいバーシア、さっきからそのキャラは何だ?
や、私は元来乙女だから
意味わかんね―よ
と、突然地面が盛り上がりシンカーが現われた
すぐにルシードが指揮をとる
よし、作戦開始だ。うまくトラップに追い込め

あまりダメージを与えすぎては逃げてしまうので、致命傷は与えず
ルシード、ビセットが直接攻撃をかけつつ
他のメンバーの魔法で追い込んでいく

程なくしてシンカーは罠におびき寄せられる
ルーティ、今だ!!
ルシードの叫びとともにシンカーの頭上に液体が降りかかる
それは油だった、油を被るとシンカーは油膜が邪魔して地面に潜れなくなる
よし、しばらく魔法は禁止です
ビセット、バーシア行くぞ!!
マックスが指示をした後 ルシードが2人とともにシンカーに斬りかかる
うかつに水、風、火の魔法を使うとせっかくかけた油が無駄になってしまうため
これからしばらくは直接攻撃が主体となる
ちなみに地の魔法はシンカーの属性でありほとんど意味がないので元々使えない

だがシンカーの皮膚は硬く、さらに油がかかっているので直接攻撃も効果がない
とりあえずシンカーが普通に逃走するのを避けるための足止めが目的だった

3人の攻撃とマックスの弓矢の援護で足止めをすること数分
そろそろ大丈夫です、風の魔法で3人を援護してください
マックスから許可が出るとルーティとフローネが同時にブラストを唱える
突然の風の魔法をまともに食らったシンカーは
魔法を使う者を脅威と感じたらしく突如攻撃目標を切り替えてきた
シンカーはフローネに向かって突進してくる
慌ててマックスがシンカーの鼻先に矢を射る
先ほどまでもこれで囲いを突破しようとするシンカーを止めてきたのだ

が、それを読んでいたシンカーは矢を射られた直後ルーティのほうに目標をずらした
慌てて2本目を射るが完全にシンカーに読まれていた
一瞬スピードを緩めて目の前を矢が通過した直後ルーティに飛び掛る
きゃぁぁぁぁぁぁーーーーー
ドガッ
ぐぅっ
ルシードが身体を張ってシンカーを食い止めていた
ルシードッ!?
全員が叫ぶとルシードは血を流しながら信じられない力でシンカーを持ち上げ
マックスにシンカーの腹を向けた
今だ、撃て!!
直後シンカーの腹からは矢が数本生えていた

そのあとシンカーは完全にトドメを刺され
旅芸人一座が持ち込んだ騒ぎは終わりを迎えた

一方ルシードはかなりの出血の為、即入院したのだが
外傷はともかく内臓への影響がほとんど無かった為、数日後には退院していた

ルシードの退院を祝って・・・カンパーーーイ
ビセットの音頭にあわせて全員がコップを合わせる
カンパーーイ
バーシアはおおっぴらに酒が飲めるとあってかなりのペースで飲んでいた
ティセは終始ルシードの脇で退院を喜んでいる
しばらくコップを眺めていたマックスがルシードに突然謝りだした
今回はスイマセンでした、自分が後衛をガードする役目だったのに
マックスが謝り始めると同じように手が進んでいなかったフローネまで謝りだす
わ・私今回も足を引っ張ってしまってすいません
突然謝り始めた2人にルシードが突然怒鳴りつけた
この、鬱コンビが!!
そのままルシードが続けて怒鳴った
自分だけが悪いって思うんじゃねぇ!俺達はチームなんだから助け合うのは当然だろ
誰かがあけちまった穴は、他の誰かが埋めりゃいいんだ
んで、終わったことを後になって落ち込んだってしょうがねぇだろう
大体お前ら、俺が病院で寝ている間に相当きつい訓練してたらしいな
んなことして体壊したらどーすんだよ
もう終わったことを気にしてもしょーがねーだろ、次どうするかを考えとけ


いいたいことを一息で言ったルシードが息を切らしている間にゼファーが付け足す
『失敗は成功の母』ということだな
それと、チームに迷惑をかけるのは仕方が無い、人なんだから失敗もするだろう
だが心配をかけるな、2人の最近のオーバートレーニングは皆心配しているぞ

「わ・わかりました、すみませんでした皆さん」
パンパン
お説教が済んだのを見計らってバーシアが手を叩きながら口を開く
ハイハイ、せっかくのめでたい席なんだから暗いまんまじゃ楽しくないでしょ
それじゃ、もーいっかい乾杯しようか…BFのさらなる結束を祝ってぇ・・・

「似合わねーセリフ」カンパーーイルシードが小さく突っ込んだ


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