第7章「部屋割りから始まった事件」



ゼファーが部屋に入ってから数分
無言の圧力が食堂を包み、誰も・何もしゃべれなかった

あ・あの、あなたがゼファーさんですよね?
すいません何も言わずに現場に向かってしまって

沈黙に耐えかねたマックスが謝った

・・・数秒の沈黙の後ゼファーが口を開く
いや、気にする事は無い。お前のおかげで事件が解決されたと聞いた
・・・だがな、ルシード

ゼファーがルシードを睨んだ
な・なんだ?
さすがのルシードも気迫に押され気味になる
無線で連絡ぐらいするべきではないのか?
いや、すまん。完っ璧に忘れていた

・・・・・・
場の沈黙がさらに増す
ほほぉ・・・潔いな・ルシード
うだうだ言い訳したって しゃーね―だろ
ふっ、まぁそれほど怒っている訳ではない、久々にヴァレスと話が出来たしな
めちゃめちゃ怒こってたじゃんかなぁ?
ねー
少し軽くなった空気にほっとしたのかビセットが軽口を叩く
ビセット・ルーティ聞こえているぞ…それよりもルシード、マックスをどうする?
どうするって・・・なんかあったっけ?ルシード
部屋だよ、今うちの事務所には空き部屋がねーんだ
部屋が無いならさぁ、これを機にバーンと増築したりして
フローネが首を横に振りながらルーティに言う
ルーティちゃん、それは出来ないわよ
え?なんで?
今、公式には事務所のティセちゃんの部屋が空き部屋なのよ
あーそっかー、そういえばそうだよねぇ

メルフィが書類を持ちながら席を立つ
それについてですが一応三つ案があります
まず第一案『マックスさんにルシード・ビセット・ゼファーと同室になってもらう』

それはちょっとマックスがかわいそうでない?
ビセットが言うとメルフィが続ける
第二案『ティセさんにフローネ・ルーティ・私の部屋にきてもらい部屋を空ける』
なーんで私の名前が入ってないのかね?
バーシアさんの部屋に入った人が肺癌か口頭癌になってしまいますから
ははっ、確かにねぇ
ルーティが同意すると・・・
ルーティーーー私と同室にさせてあげようかぁ?
やぁぁーやめてぇぇぇ
ルーティはタバコの煙を吹きかけられながら脅されると脱兎の如く逃げていった
コホン・・・では第三案『男同士か女同士で同室になって部屋を開ける』
ん〜やっぱティセがどっか移動するほうがいいだろうな
私もそう思ってました、ティセさんのほうが私物が少ないですし
ルシードが意見をするとメルフィも同意した
まぁ明日ティセに聞いてみるか
そうだな・・・マックス、今日は俺の部屋に泊まるといい
俺はまだ自己紹介を聞いていないから聞かせてくれ

はい、ありがとうございます
結局1日目はゼファーの部屋に泊まることになったのだった

このとき扉の向こうにティセがいることを誰も気付いてはいなかった
コレが新たな事件の幕を開けるきっかけとなった



次の日の朝、ミーティングも終わりマックスは事務所内施設を案内されていた
最初はビセットやルーティが案内を買って出たのだが
サボり根性が見え見えだったのでルシードが即却下、結局メルフィが案内している
ちなみにビセットもルーティもルシード監視のもと厳しい訓練の最中だ

案内の途中、ティセの部屋の前を通った時マックスが訪ねた
そういえばティセさんはまだ起きてないんですか?
えぇ、ティセさん昨日はずいぶん歩き回ったから疲れているんじゃないかしら?
ティセは朝のミーティングに起きてこなかった
このときはまだ誰も異変に気付いてはいなかった
・・・ちなみにバーシアも起きてなかったが、コレは異変でも何でも無い・・・


あぁ!?まだティセは起きてねぇのかよ
昼食の時間になってもティセは起きてこなかった、バーシアでさえ起きているのにである
誰か起こしてきてやれ
ルシードは心配してるんだか怒こってるんだかよく解らない声で言う

ティセいないよー、どっか行ったんじゃない?
ティセを起こしに行ったルーティが慌てて戻ってきた
えぇ!?」「なにぃ」「どうしたんだろうねぇ
食堂がざわざわとなり、みな口々にティセのことを話している
少し落ち着け
そこにゼファーの落ち着いた声が入り皆が黙る
今はしっかりと状況を確認するのが先だろう?
そうですね・・・
メルフィがそういうとゼファーはルシードの方に向き直る
ルシード、本来ならばこれはお前の役目だ、しっかりしろ
う・・・すまん
まぁ・・・いい さて、ここからはお前が仕切れ
ん・・・じゃぁ今朝から誰もティセを見た奴はいないんだな?
全員が同意を示す
昨日は部屋に戻ったんだよなぁ・・・だったら今朝出たはずなんだが・・・
やはり誰にも、何も言わずに事務所を出るのはなんか変だ」
あ!
突然ルーティが声を上げた
んだ?
そういえば今朝こんな物がテーブルの上にあったけど
そう言ってポケットから紙切れを取りだしテーブルの上においた
んーなになに・・・『にひてもすーエづマ6・・・』何これ?
横からビセットが覗いて読むが全く日本語になっていない
ルシードが取り上げて見てみるがやはり読めない
あれ?
するとそれを横から見ていたフローネが突然驚いたようにな声を出した
それ・・・ティセちゃんの字です
なにぃ?
え・・・と・・・『旅に出ます 探さないでください』
またかよ!!今度は置手紙があるだけましか・・・とにかく探すぞ!!
了解
バーシアはルーティと一緒に旧市街を回ってくれ、ミッシュでも情報を聞いておけ
」「おっけぇ
ビセットは俺と新市街方面を探す
りょーかい
フローネはマックスとエクイナス山に向かってくれ、そこで情報を集めろ
解りました」「了解です
メルフィは事務所待機、ゼファーは事務所周りを頼む
はい」「そうだな、やれば出来るじゃないか、また飛び出すのかと思ったぞ
まさか・・・よし、BF出動だ
りょーかい



ルシードとビセットは新市街方面を歩き回りながらティセを探していた
だが既に1時間ほど歩いたはずだが目撃情報すらなかった
ったく、ティセのやつどこ行きやがったんだ・・・
うーん・・・あんまりティセの知ってる所って無いからなぁ
・・・あ
ん?どしたの?ルシード
「あら、ルシードさんにビセット君 散歩ですか?」
リーゼさん、いや実は・・
ルシードがティセの事を聞こうとしたところで、ビセットがルシードの前に出た
どうもこんにちはリーゼさん。どうしたんですか?
リーゼの前という事で、上機嫌であるが緊張した声でルシードを押しのけて話す
既に、ティセのことは頭から抜け落ちてしまったかのようだった
「私は買出しです、シェールったら仕事ほったらかしてどこか遊びに行っちゃうから」
ったくシェールのやつ・・・あ、俺が手伝いますよ
「いえ、いいのよ。そちらも急いでいたんじゃないんですか?」
おいビセット、世間話は後にしておけ。ひとつ聞きたいんだが
ティセのやつ見てねーか?今朝からどこにもいないんだ

「いえ、今日は一度も見かけてないわ、それじゃ見かけたら事務所のほうに連絡しますね」
そうしてくれると 助かる
「それでは、私も店に戻ったらお客さんに聞いておきますから」
あぁ、頼む

リーゼは会釈して広場の方に歩いていった
んーリーゼさんも知らなかったか・・・
ティセはこの辺りだとクーロンヌぐらいしか知ってる場所が無いのに

てかビセット、こっちは急いでるんだからあんまり長ったらしい話はすんな
いや、あれは挨拶だって、あの後聞こうとしてたんだよ
嘘付け、忘れてただろうが
いや・・・って あ!
ん?
シェールだ、ちょっと俺ティセの事聞いてくる
あ、おいビセット
呼び止める間もなくビセットは広場の方に走っていってしまった
ったく
すぐに追いかけようとしたところで通信機にコールが入った

はい、こちらルシード
こちらマックス、フローネさんがティセさんを見たっていう鳥から話を聞きました
なにぃ、なんて?
ボジェーロ百貨店の屋上から森の方を見た時にピンクの髪の毛をした女の子がいたと
ここの位置からだと遠いのでルシードさん先に向かってください

了解、ちょうど今その近くにいる
そうですか、こっちも今向かっている途中ですが結構遠いので
わかった、あまり焦ってると怪我するからゆっくり来い、一応森は危険だからな
解りました、何かあったら連絡ください
おう
通信機を切る
近いな、ビセットは・・・めんどくせぇ・・・一人で行くか


ボジェーロ百貨店の裏から森の中に入り闇雲に歩き回る
ティセの髪はピンクだから相当目立つはずだった

だが、数分経ってもティセはどこにも見つけられなかった
既に情報が古かったのか・・・それとも変な風に行き違ったか・・・
ルシードさん
マックスか?フローネはどうした?
フローネさんならあそこに
マックスの指をさす方向にはフローネとその周りに鳥が数十羽いた
まだティセさん見つかってないんですよね?ちょっと鳥達に探してもらうって
あぁ・・・なるほど、助かる。10分ぐらい探したんだが、見つからねぇ
そうですか・・・ティセさんの髪は特徴的だからすぐに見つかりそうなのに・・・
だな・・・軽い見落としかもな・・・
話しているうちにフローネの周りから鳥が飛び立っていた

しばらくフローネの周りから消えていた鳥達が帰ってくる
そう、ありがとう
フローネが何か言うと鳥達は一斉に飛び去った
センパイ ティセさんの場所わかりました、こっちだそうです
おう

ティセはボジェーロ百貨店裏の草むらで気持ちよさそうに眠っていた
こいつ・・・寝てたのか・・・どうりで頭が見つからねぇワケだ・・・
でもティセちゃん無事見つかってよかったですね
ったく・・・帰ったら説教だな
まぁまぁ、ちゃんと理由も聞いてあげましょうよ
ティセさんにだって何かあったんだと思いますよ
まぁとりあえず事務所につれて帰るか
ルシードはそう言うとティセを背負う
うぅん・・・ご主人さまぁ
あ?起きてんのか?
ティセ・・・お役に立ちたいんですぅ
そういうティセの目は閉じていて、どこかいつもの言葉と違う
寝言か?器用なやつだな
ティセ、居場所がなくなるのは嫌なんですぅ、あの家にいたいんですぅ
ティセちゃん・・・
魔物がご主人様みたいにかっこよく退治して、認めてもらうんですぅ
ったく・・・心配かけやがって・・・こいつは・・・
文句をいいながらもルシードは微笑んで
お前はうちに必要だ
後ろを歩く二人に聞こえないよう小さく呟いた


あれぇ・・・ここはぁ・・・
目ぇ覚めたか?
ティセはベットで横になり、その脇にはルシードが座っていた
あれ、ご主人さま・・・ティセ・・・
いいんだよ
ほぇ?
お前はここにいていいんだ、必要なんだよ・俺達には・お前が
ご主人さま・・・
まぁ・・・とにかく、どうしてそう思ったんだ?
何が・・・ですかぁ?
自分が必要ないって思った理由さ
ほぇ!?何で知ってるんですかぁ?
アホか自分でいってたんだよ
そ・そうでしたっけぇ?
とにかく、どうしてだ?
えっとぉ、昨日お夕飯の後、みんなが話しているのを聞いたんですぅ
あ?
ティセには出て行ってもらうって、部屋を空けるって
・・・バカが・・・
ほぇ?
まったくお前は・・・進歩してねぇな、前もそんな感じでだったな
でもぉ、確かにそう言ってましたぁ
意味が違げーよ、ティセに事務所を出てもらうとは一言も言ってない
ふぇ?
マックスがここに来たから部屋が足りなくてな、
ティセと誰かを同室にするっていう話が出ただけだ、決まった訳じゃないけどな

はぁ
まぁとにかく食堂に来い、みんな心配してっからな
あ!!
ん?どうした?
ティセあそこに住みますぅ
あ?
そういうとティセはルシードをつれて部屋を出てある場所に連れて行く
ここですぅ
ここって・・・倉庫だぞ?
そうですぅ、ここならティセも住めますぅ
ガチャッ
あ!おい
バタンッ
そう言ってティセはルシードが止める間もなく中へ入ってしまった
その直後
ガラガラガラガラガラ
!? ティセ!!
突然何かが崩れる音がして慌ててドアを開ける
はぁうううううぅぅぅぅぅ
ここに住むのは・・・止めとけ
そうしますぅ
ティセは倉庫に詰めてあった荷物の下敷きになりながら弱々しく答えた



ティセを連れて来たぞ
おっそーい、なんか変な物音もしたし、なんかあったの?
いや、何にも・・・って、俺の席は?
ルシードが驚いたのはマックスがルシードの席に座っていた事だった
あの・・・ここに座れって・・・
マックスが申し訳なさそうに理由を言った
9人だからなどうしても一人はテーブルの脇に座ってもらう必要がある
それに付け加えるようにゼファーが言う
それが・・・俺か?
リーダーとして上座に着くべきだろう?
ったく・・・上座ってどっちだよ
さぁな、どっちがいい?
こっちにするか
そういうと廊下側にイスを置いて座る
ご主人さまそこになったんですかぁ?
そうらしいな
じゃあティセ、ここが良いですぅ
そう言ってメルフィの席を指差す
いいわよ、それじゃ交換しましょうか
わーい、ありがとうですぅ

さて、それじゃさっそく部屋を決めるか
ティセはどこに移れば良いんですかぁ?
えーと、男性とバーシアさんの部屋がダメだから・・・
メルフィ、フローネ、ルーティから選んでもらう事になるな
メルフィとゼファーがルシードたちが来る前に話し合っていたまとめを言う
えっ!?ティセお部屋で寝て良いんですかぁ?
え?
だんわ室とかお庭じゃないんですかぁ?
ティセさん、そんな酷い事はしないわよ
えっと えっと れじゃティセが選んで良いんですかぁ?
そうよ
えーっと・・・ティセみんなのところで寝たいですぅ
ご主人様とかフローネさんとかルーティさんとか・・・

って俺を入れるな
ご主人さま ティセと寝るの嫌ですかぁ?
・・・嫌とかそういう問題じゃない、男とバーシアの部屋はダメだ
うぅ・・・それじゃ全部で寝たい出すぅ
・・・全部って、どうやってかな?
ルーティがティセに訪ねると、それにバーシアが答えた
交代で寝ればいいんじゃないの?日替わりとか週代わりとかで
そうしますぅ、毎日お泊りですぅ
・・・ティセはそう言ってるが、3人ともいいか?
ルシードが訪ねると3人は一様に了承した
それじゃまずはあたしの部屋ね
はい ルーティさん、ふつつかものではありますがよろしくお願いしますぅ♪
ティセ それはココじゃなくていつか『ご主人さま』に言うセリフだよ
はわっ、そうなんですかぁ?
なーに言ってんだか・・・
ルシードの呟きはみなの騒ぐ声にかき消され誰の耳にも届かなかった


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