CLANNAD「智代3 デート」


智代「朋也、そろそろお昼にしようか」
朋也「心配するな、俺たちが頑張らなくても時刻は昼だ」
智代「・・・」
朋也「・・・」
智代「ともやぁ?そろそろお昼にしなぁい?」
朋也「わ・解った」
(恐っ!!)
朋也「でもどうする?」
智代「作りに行くか?」
朋也「いや、今から帰ったらデートっぽくないだろ」
智代「そうか?・・・ならどっかで食べていくか」
朋也「すまん、金欠」
智代「・・・ふぅ、私が出すといっても聞かないな」
朋也「当然、どっかで買って公園で食うか」
智代「コンビニは・・・この辺にあったか?」
朋也「商店街まで出ればあるだろ」
智代「あ、パン屋」
朋也「あぁ・・・あるな・・・(ちょっと危険なのが)」
智代「あそこで良いか?」
朋也「智代が良いなら」
智代「あぁ」

智代が戸を空ける前に戸は勝手に開く
早苗「早苗パンと早苗は古河家のお荷物だったんですねぇ〜〜〜〜
危険を感じて智代をドアから遠ざける
それと同時に中にいた男が店外へ飛び出した
秋生「おれはどっちも大好きだ〜〜〜〜〜
パンを口にくわえ、手には花束という出で立ちで後を追う
以前より台詞が危険な物になっているのでかなり心配になる
智代「なぜパンを咥えたまま叫べるんだ?」
朋也「いや、俺に聞かれても・・・」
智代「入っても平気か?」
朋也「いや、何で俺に・・・」
智代「一応知っているんだろう?私を守ってくれた感じだったし」
朋也「ああ・・・ま、入っても大丈夫だよ。勝手に商品をとっても誤魔化せそうだ」
智代「そんな事はさせないがな」
開けっ放しのドアから中に入る

渚「いらっしゃいませー お・岡崎くん?」
朋也「あれ?古河か、店番してたんだな」
智代「古河?」
朋也「あ、紹介しとくか――」
渚「坂上さん!?」
智代「あぁ、やっぱりか」
朋也「・・・知り合い?」
(確かに中庭で一目見たことはあったけど・・・意外な交友関係が)
渚「はい、実は以前演劇部を作ろうとしていた時にお世話になりまして」
智代「いや、何の力にもなれなかった、すまない」
渚「いえ・・・」
智代「や・・・」
朋也「ストップ、美しいんだが・・・状況が全然わからん」
渚「あっ、すみません。えっと以前に部を作ろうと生徒会を何度か訪れたんですが
  毎回話を聞いてもらえなくて、その時に坂上さんにアドバイスを貰ったんです」
朋也「へぇ・・・でもダメだったのか?」
智代「顧問がつかなくてな、手の空いている先生がいなかったんだ」
朋也「あれ?でも昔演劇部有ったよな?その先生は?」
智代「合唱部が新たに作られ、そっちの顧問をしていたんだ」
朋也「そっか・・・残念だったな」
渚「いえ、そのときはダメでしたけど、今はサークルに入ってるんです」
朋也「あ、大学か」
渚「はい・・・あんまり良い大学じゃないですけど」
朋也「ま、大学の良し悪しじゃないだろ」
渚「はい、そうですね」
(前よりも明るくなったな、自信もついたみたいだ)
渚「ところで、お二人はデートですか?」
朋也「あ・あぁ」
渚「岡崎くんと坂上さん、とってもお似合いです」
朋也「お前は恥かしい事をさらっと・・・まぁとにかく今はパンを売ってくれや」
渚「あ、はい ご自由に選んでください」
朋也「早苗パン以外のお勧めを適当に見繕ってくれ」
渚「あ、ははは・・・解りました、幾ついりますか?」
朋也「どうする?」
智代「まかせる」
朋也「んじゃ・・・3つ」
渚「はい」
ガラッ
秋生「くっそーさすが早苗だぜ、このオレを撒くとは」
片手に花束を持ったままオッサンが戻ってきた
秋生「っと、らっしゃい・・・っててめぇか、彼女連れでいいご身分だなぁ
   目の前にも上玉がいるってのに手も出さねぇとは・・・出させねぇけどな!!!
朋也「はい、金」(無視)
秋生「・・・・・・・ふんっ」
オッサンは金を受け取ってパンを確認する
秋生「かー、てめぇ早苗パンも買いやがれよ、俺の食卓に並んじまうだろうが」
朋也「あ、早苗さんお帰り」
秋生「オレは朝昼晩夜食すべて早苗パンでも全然OKだ〜〜〜〜〜〜
朋也「んじゃまた何かあったら来る」
智代「私もだ」
渚「はい、お待ちしています」
秋生「ぜぇぜぇ、てめぇは二度と来るな」


智代「面白いところだな」
朋也「まーな」
智代「古河は・・・朋也の事が好きだったのかもな」
朋也「はぁ?」
智代「思いっきり意外って顔をしているな」
朋也「そりゃな、何でそう思うんだ」
智代「何となく、女のカン・・・というやつだ」
朋也「女の勘ねぇ」
智代「さっきの反応とか、今思えば前に話していたのは朋也の事だったのかもな」
朋也「へ?なんて?」
智代「それは言えないな、っとそんなに混んでないか」
公園はある程度人はいるが多くも無い
空いているベンチの一つに座る
朋也「あれ?パン4つ入ってる」
智代「サービスじゃないか?昔好きだった男への」
朋也「その話止め、智代妬いてる?」
智代「む・・・していない・・・ことはない・・・」
(智代にしては歯切れが悪いな)
朋也「悪いが・・・例え古河がそうでも、その気持ちには答えられない
   俺は智代のことが一番好きだからな」
だから出来る限り率直に自分の気持ちを伝えてみた
智代「・・・ずるいぞ、言えといった時には言わないくせに、こういう時に・・・」
朋也「嫌か?」
智代「そんなことはない、むしろ嬉しい」
朋也「ほら、とっとと食おうぜ」
智代「あぁ     美味いな」
朋也「ちなみに味が普通なのはあのオッサンが作ってる」
智代「普通?」
朋也「あぁ、不思議な味がしたら、それは早苗さんの想像(創造)物だ」
智代「・・・ところで朋也」
朋也「ん?」
智代「・・・・・・いや、なんでもない」
朋也「?」
 公園を眺めながらパンを食べる
 一つ食べ終わり残った1個に手を伸ばす
ボリボリボリ
朋也「☆○λつД※△∀∂」
智代「な・なんだ今のふっくらした外見にそぐわない音は・・・」
朋也「あなえばんだ(早苗パンだ)




智代「落ち着いたか?」
急いで買ってきてくれたお茶を飲み干すとようやく一息つける
朋也「くっそーーーあのオッサン・・・姑息な真似を・・・」
智代「どういうパンだったんだ?」
朋也「・・・ポテトチョップスが入ってた」
智代「は?」
朋也「おそらくコレが噂に聞く『スクリューパンチ味』に違いない」
智代「なんだその変な味は」
朋也「季節限定だとか地域限定だとか・・・とにかく素性はわからないが
   とにかく強烈な味がするのではないかと、まことしやかに噂される一品だ」
智代「パンに入っていたから味覚が変になってたんじゃないか?」
朋也「・・・違うとは言い切れないな」
智代「まぁ私のを半分食べろ」
朋也「お、サンキュー」
(ま、当初の目的と同じに修正されたからいっか・・・ってあんまり良くない気もするが)

ぷひ
朋也・智代「ん?」
足元にはあの謎の生物がいた
朋也「お・お前、何でこんな所に」
 慌てて周りを見渡すが買主はいないようだ
智代「何だ?この・・・犬?・・・いや、違うな・・・」
朋也「ウリボウだってさ、名前は『ボタン』」
智代「知ってるのか?」
朋也「杏のペットだよ、たまに学校に来てたりした」
智代「へぇ・・・パン食べるかな」
 もの欲しそうな顔でこちらを見るボタンにパンをちぎってあげている
 ぷひ♪
智代「お、食べてる食べてる・・・結構可愛いな」
(うーん、こうやってペットと遊んでいる絵も・・・良いかもしれないな)
 ぷぷひ♪
智代「悪いな、もう私のは無いんだ」
朋也「俺のもない」
 ぷひぃ〜
少し物悲しそうだ
 ぷ?
そして何かを発見したかのように目を輝かせベンチに飛び乗った
 ボリボリ
 ぴぃ〜!?
朋也「あ・・・」
智代「あ・・・・・・ん?」
ビュッ バシィ!!
横で何かが聞こえて振り向いてみると
俺の眼前に智代が英独辞典を掲げている
・・・いや、状況から察するに・・・
杏「朋也〜〜ボタンに何すんのよ!!
・・・やっぱりか・・・
つまり・・・
ボタンが失神
⇒それを杏が発見
⇒杏が英独辞典を俺に投げる
⇒智代がそれをキャッチ
・・・という訳だ、うん・・・
杏「なに1人で納得してんのよ、ボタンに何したの?」
朋也「何って、危険なパンを食べてしまったんだ」
杏「パンって、そんなもので倒れる訳が無いでしょう!?」
朋也「ん・・・じゃ食ってみ」
 そういってパンを差し出す
杏「・・・・・・」
朋也「どうした?まだ口付けてないところがあるからガブっと行け!」
杏「やめた、何か危険な気がする」
(ちっ、勘のいい奴だ)
杏「にしても・・・」
朋也「ん?」
杏「あなた達幸せそうねぇ、あんまり長居しても野暮だからあたしは退散するわ」
朋也「あ・あぁ、悪いな、気ぃ使わせて」
杏「ん、ほら ボタン? 大丈夫?」
杏はボタンを胸に抱えると公園を立ち去った






食後、ベンチに二人で座って公園の人の流れをただ見つめる
ふと、杏の言葉が思い出され不安が過ぎる

朋也「なんだか・・・少し恐いくらいだな」
智代「ん?どうした?」
朋也「幸せすぎるっていうか・・・こんなんで良いのかってさ」
智代「突然だな」
朋也「そうでもないだろ、今朝会った時の家族の反応が思いのほか良かったし・・・
   智代の才能を潰すとか・・・あの生徒会みたいに言われる事だって覚悟してたのに」
智代「私は元々エリートという訳ではないからな」
朋也「まぁ・・・そうだけどさ・・・」
智代「それに・・・いい話ではないが、両親は離婚寸前まで行きかけた二人だ・・・
   いまさら自分のことを棚にあげて子供に説教など出来ないだろう」
朋也「あ・・・すまん」
智代「謝らなくていい、私が言い出したんだし・・・それに、今となってはただの通過点だ」
朋也「でもさ・・・」
智代「聞け 朋也、この世に失敗の無い人間なんていると思うか?」
朋也「いや、んな事無いだろう」
智代「あぁ、どんな人間だって失敗をする・・・それを元に成功させるかが個人差だ」
朋也「失敗は成功の母・・・か・・・」
智代「あぁ、少なくとも『今』を胸を張って誇れる人生を歩んでいるのなら
   過去の失敗も全て胸を張って誇れる・・・というと少し語弊があるか・・・
   とにかく失敗だって明るい要因に見えてくるものだ」
朋也「そう・・・か・・・」
智代「朋也だって失敗や挫折はあっただろう・・・古河も藤林も春原も私も・・・
   様々な出来事を体験し、大なり小なり失敗してきたはずだ・・・」
朋也「(俺も・・・)」
智代「それで良いんじゃないか?私は『今』を誇ることができる
   朋也にとってはどうだ?」
朋也「あぁ、俺もだ」
智代「だったらそれでいい、過去の事はいいんだ
『今』と『未来』をより良くする為に堂々と生きていけばいいんだ」
朋也「そっか・・・だな・・・」

・・・智代の言葉はおそらく・・・
両親の事とか、智代の荒れていた時代を指す訳ではない
生徒会や学校に言われて智代と別れてしまった
そのことを指しているのだろう

朋也「なんだか、智代に元気付けてもらってばかりだ」
智代「私だってよく元気付けられる、お互い様さ」
朋也「そっか・・・」
智代「朋也」
朋也「ん?」
智代「もうすぐ創立者祭があるんだが、一緒に周らないか?」
朋也「あぁ、こっちもその予定だったんだ、こっちこそヨロシク」
智代「ふふっ・・・」
朋也「?」
智代「いや、簡単に決まったな・・と思ってな」
朋也「断る訳無いだろ」
智代「・・・そうなんだけどな、こういうことを聞くときは少し不安になってしまう」
朋也「そう滅多な事では断らないって、んじゃ創立者祭のときは校門に行くからな」
智代「解った」
朋也「んじゃまたどっかブラブラしますか」
智代「あぁ」


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