ダブルクロス 〜それは裏切り者の証


【オープニングフェイズA】



シーン1『勇悟と雄吾』  -ScenePlayer渡良瀬勇悟-

東京近郊N市 小さな市ではあるがジャームによる事件は多く
それに伴いオーヴァードも多くすんでいる地域である

またK市と隣接するこの町は合同で事件にあたる事も多い

そのN市支部支部長 渡良瀬勇悟は自らのデスクの上で五月蝿く鳴る電話をじっと見る
ナンバーディスプレイには見慣れた文字列が写っている
周りの目もあり 放っておく訳にも行かず受話器を耳に当ててすぐさま口を開く

勇悟「もしもし 霧谷さん?また厄介事ですか?」
霧谷「いきなりだね勇悟君、ま・その通りなんですけど」
勇悟「もう32回目ですけど、私を勇悟と名前で呼ぶのは止めません? で、どんな?」
霧谷「もう32回目だが気にするな。 ちょっとファルツハーツ(FH)が動いてね」
勇悟「そら厄介ですね」
言っても無駄だと解っているので余り長くは引きずらずに仕事の話に移る
それに遊び半分では聞いていられない内容に突入したようだ

勇悟「で、詳細は?」
霧谷「細かい事は電話(コレ)じゃ無い方がいいでしょう
   イリーガルが一人向かってますから彼から話を聞いてください」
勇悟「イリーガル? 誰が何時ごろ来るんです?」
霧谷「誰かはすぐ解るでしょう・・・時間は・・・・・ですね」
勇悟「は?」
ガチャッ
??「ちわーっす」
勇悟「・・・あの?霧谷さん?」
霧谷「それじゃ頼むよ」 ガチャン ツーツーツーツー
勇悟「キミか・・・」

受話器を持ったまま固まっている私に近付いてくる見慣れた男
確かに良く知っている人物だった



シーン2『相も変わらず・・・』  -ScenePlayer上月司-

司「は・腹減った・・・」
世の中どっかおかしい
っていうかある男が全面的にオカシイ
今日で29回目になるが財布の中を覗いて見る
残金27円
なんか残る額っていっつも同じような・・・

今日胃に入れた物と言えば、ケイトに貰ったジュース半分だけ
弁当も分けてくれると言ってくれたんだが・・・
あの2人とメシを食う気にはならねぇ
だいたいあいつらは    ヴヴヴヴヴヴヴ
司「っと電話か もしもし」
霧谷「どうも、霧谷です」
司「おぉ!仕事(きりたにさん)っすか 依頼ですよね」
霧谷「そうです、財布の中身も昨日の買い物で27円になったはずですしね」
司「なぜそれを・・・っていうかあの微妙な安売りはもしかして!」
霧谷「まぁそれはそれとして、貯金も1227円ですよね?」
司「まぁ・・・でも・・・」
霧谷「今月の光熱費が1200円ですか・・・というか良く抑えましたね」
司「生活の知恵ってやつですよ ははは・・・(渇)」
霧谷「で、受けてもらえますか?」
司「もちろんですよ、兄貴のお守りだろーが 世界が相手だろーが」

霧谷「とりあえず内容ですが・・・いまそっちに車が向かっています」
ブロロロロロロロロロ
霧谷「書類の入った封筒を渡しますからN市支部に向かってください」
ロロロロロロロロロロ キィッ
司「どわぁ!?
と、目の前に止まった車の窓がほんの少し開けられ、何かが投げられる
ガサッ
突然の事で何が起こったのかは解らないが、とりあえず俺の手元にはでかい茶封筒がある
そんな俺を尻目に車は急発進し、どこぞへと行ってしまった
霧谷「では、たのみますよ、支部長によろしく伝えてください」ブツッ

ツー ツー ツー ツー ツー


と、言う事があったのが1時間前
五月蝿い腹の虫の合唱を聞きながらN市支部にたどり着いたのだ


勇悟「司君でしたか」
司「ども、またお世話に成ります」
グー
司「・・・・・・」
勇悟「また・・・ですか・・・」
司「そっす」
勇悟「カツどんでいいですか?」
司「なんか犯罪者にでもなった気分っすね」
勇悟「いりませんか?」
司「激しくいります



シーン3『意外な声』  -ScenePlayer上月司-

司「うまい 美味いよ」
勇悟「310円になりますよ」
司「金とるんすか!?」
勇悟「社員価格ですから大丈夫ですよ」
司「俺の財布にとっては全然大丈夫じゃありませんが・・・」
勇悟「そういうと思って既に今回の報酬から引いておきましたよ」
司「解られてるのも微妙ですね」
勇悟「まぁその辺は置いといて、とりあえず食べちゃってください
   食べ終わったら仕事の話に移りますから」



     *     *     *


司「ごっそさん」
勇悟「それじゃ説明しましょうか」
先ほどまでディスプレイを眺めていた勇悟が司に言った
勇悟「今回のを簡単に説明すると
   FHがある人物を拉致する計画があるらしく、その護衛です」
司「それは俺だけが当るんじゃないんすよね?」
勇悟「えぇ」
司「まさか・・・兄貴とかだったりは・・・」
勇悟「安心してください、違いますよ フラッシュバレットです」
司「あぁ、三沢さんか、あの人もアク強いけど・・・兄貴ほどじゃないな」
勇悟「当たり前ですよ、彼ほどのがそうホイホイいたら・・・困りますね、果てしなく」
司「もっと言ってやってください、本人に解る様に・・・日本語で解るかは微妙ですが」

勇悟「というか、司君と三沢君は知り合いなんですか?」
司「前に飲みにいったんですよ、兄貴に対する愚痴を聞きに」
勇悟「コラコラ、2人とも未成年でしょ」
司「奢りっていうからつい」
勇悟「・・・・・・苦労してますね」
司「ほっといてください」

プルルルルル プルルルルル プルルルルル

勇悟「っと、その三沢君の事務所から電話ですね」

ピッ

勇悟「もしもし」
??「もしもし〜フリーマーセナリー上月ですがぁ〜〜♪」
司「あ・あにきぃ!!!!



シーン4『来訪者』  -ScenePlayer三沢秋一-

秋一「ふぅ」
溜息と共に自らの事務所兼自宅となっている家に入る
先ほどまでは学校に言っていたために疲れたのだ
とは言っても屋上で寝ていただけだが
・・・きっと地面が固いから疲れも取れなかったのだろう・・・

『約束』は学校に行くこととある部に入る事だけ
なら行って入部さえすれば文句は無いはずだ
屋上で寝ようが保健室で寝ようが良いだろう
実際顧問も霧谷サンも何も言ってこないんだ

薄暗い玄関を抜け、電気もつけずに奥に進む
巧妙に隠された隠し戸を空けて地下室に入る
ココには仕事に必要な機材や資料などが山のように積んである

広さは10畳程度でそこそこの広さがあり
本棚には様々な資料が山のように並べられている
お勉強は好きにはなれないがこういったものを読むのは苦ではない
上手くターゲットに近付く為には様々な知識を持っていて損は無い

遠くから狙撃するにしても狙撃地点に潜り込む為に知識が要る
ここが自然の中なら木に登るなり、木陰に隠れるなりすればいい
だがココは都会だ
一般人で普通にしていては入れない場所など山のようにある
またターゲットの動きを先回りする為には様々な職業の事を知っているとやりやすい




先ほど郵便受けから取ってきた封筒を空ける
すると中からは1枚のディスクが出てきた
それをネットに繋がっていないパソコンを起動させディスクを挿入する
続けて長いパスワードを入れてクリックをすると中身が表示される

その中には新たな依頼が記されていた
今回の依頼は護衛 本来の仕事とは少し違うが、こういう事は珍しくない
霧谷サンは度々『普通の仕事』のようなものを俺に回してくる
その意図は何となく解るが、まぁ余り気にする必要も無いだろう
俺は俺の目的の為に言われた事はやるしかない

時間を見るとそれほど時間があるわけではない
明日の午後2時
今既に夕方である事を考えれば今から動くべきだろう

ディスクの最後には今回一緒に仕事をする者の名がある
上月司
今までいっしょに仕事をしたことは無いが、面識はある
性格はまぁ良いし、腕も立つそうだ
彼自身には特に問題は無い
問題なのは・・・

??「おや?同士?何をしているんだい?」

こんな声をしやがった・・・って

秋一「な・な・なにぃ
??「ふむ・・・」
コンコン(ドアを叩いている ※部屋の中から)
??「お邪魔するよ」
秋一「・・・」
??「お、仕事か・・・おぉ司と一緒なのか ならば・・・」
秋一「って人の家に勝手に上がりこんで、人の依頼をーーって
   どーやってココに入りやがった
   っていうかいつからいやがった
   むしろ何でこの家知ってやがんだお前は!!」
??「俺はココで寝てた
   ココは俺の寝てた場所
   寝てたのは俺
   ココは俺の家?」
秋一「んなわきゃねーだろこのボケーー
??「カリウム不足だな、怒りっぽいぞ」
秋一「カルシウムだ!
??「ナトリウム不足だな」
秋一「離れてるよ!!
   はぁ、もういい で?何でここにいるんだ?永斗」
永斗「マグネシウム不足だな」
秋一「もういいんだよそのネタはーーー!!!
永斗「なぁに、昨日の夜は冷え込んだろう?」
秋一「真夏だから公園でも寝れるぞ」
永斗「ならば外で寝るのは辛い」
秋一「寝れるってば」
永斗「然るに俺はココの温かさに引かれて」
秋一「って事はお前昨日からココにいやがったのか!?」
永斗「ココに来たのはついさっきさ」
秋一「話が噛みあってねーんだよ!!
永斗「朝は出かけたからな」
秋一「やっぱ泊まったのかよ!しかも普通にココに帰宅すんな!!

永斗「ふぅ、話が長いな」
秋一「てめぇのせいだコラ」
永斗「ところで新聞は無いのか?さっきから捜してるんだが」
秋一「ねぇよ!っていうかくつろぐんじゃねぇ」
永斗「ったく用意が悪いな」
秋一「俺の家だっつーの!」
永斗「ちょっとコンビニで買ってくるぞ すぐ帰る」
秋一「戻ってくる必要はねぇっ!!
永斗「ただいま」
秋一「早っ!!
永斗「えーと第1レースは・・・」
秋一「競馬新聞かよ! っていうかどこで買ってきたんだてめぇは」
永斗「お隣りさんの机の上にちょうどあってな」
秋一「それは盗んできたのかよ!!コンビニ行くんじゃ無かったのか!!
永斗「便利ならばそこは全てコンビニ」
秋一「都合のいいことだけ覚えてんだなてめぇの頭は!!」
永斗「さってっと・・・フンフーン(赤ペンでチェックしだした)」
秋一「他所でやれーーーーーー!!!




     *     *     *


秋一「はぁ・・・はぁ・・・」
永斗「サリン不足だな」
秋一「もう訳解んねーよ ってか、んなもの持ってたら死ぬよ」
永斗「さて、本題に入ろうか」
秋一「あ?」
永斗「明日の事だが」
秋一「ん?お前もこの仕事なのか?」
永斗「どれが来ると思う?」
秋一「・・・資料ではFHが動くとしか書いてないからな・・・
   "プランナー"の計画の一端とすれば"マスター・レイス"自らが動くか・・・
   もしくは"ディアボロス"なんかが動くかも知れねぇ
   "プランナー"が動いてねぇなら"サクリファイス"か・・・"スネーク"か・・・」
永斗「なにを言ってるんだ?」
秋一「は?」
永斗「明日はどの馬が来そうかを聞いているんだが」
秋一「ならシリアスになんな! 紛らわしいんだよテメーはよーーーーー!!!???
永斗「ヒ・ヒィ! 現代っ子特有の反抗期!?」
秋一「いつからてめぇが親になったんだ!」
永斗「46日前かな」
秋一「・・・一応聞くが、その数字って何かあんのか?」
永斗「うむ」
秋一「無駄だとは思うが・・・それは何?」
永斗「万馬券だ」
秋一「聞いた俺がバカだった」
永斗「聞け! アレは寒い北風の吹く時だった・・・俺は残り少ない札を握り締めながら戦場に向う」
秋一「既に初夏だぞ」
永斗「その日のレースはほとんど決まりだった どの予想屋もこぞってある1頭の馬を・・・」



     *     *     *


永斗「そして俺はアルカ○ダとの激戦を乗り越えていった訳だ」
秋一「・・・・・・万馬券はどこに行ったんだ?
永斗「ん?」
秋一「いや、いい・・・ヤブヘビはゴメンだしな・・・」

永斗「さってっと・・・」
秋一「おい、なんで受話器を取るんだ?」
永斗「ん?電話しろと書いてあるだろう?」
秋一「どこに?」
永斗「この依頼書にだ」
秋一「・・・・・・それは俺がやる事だろ!! お前がしてどうする!
永斗「もしもし〜 フリ〜マ〜セナリ〜の上月ですが〜♪」
秋一「・・・もう、どうにでもしてくれ・・・」






シーン5『役割分担』  -ScenePlayer上月永斗-

永斗「おぅ!司もそこに居るのか?久しぶりだなぁ」

司「・・・・・・」

永斗「ん?どうしたんだ司?
   あぁ、解るぞ、兄たる俺には司の気持ちが手にとるようにわかる
   久しぶりに聞いた兄の声に対して感動に打ち震えているんだなぁ?」

司「・・・ ・・・」

永斗「うんうん、解るぞ そうか、声も出ないほどに・・・」

司「・・・  ・・・」

永斗「あんちゃん 嬉しくて涙が出そうだ」

司「・・・   ・・・」

永斗「うぅ・・・目から鱗がぁ!」

司「・・・    ・・・」

永斗「どうした?遠慮なく声をかけたまえ」
司「無駄遣いすんなやーーー!!
永斗「はっはっは、しばらく会わないうちにずいぶんと声がでっかくなったなぁ
   司の成長を肌で感じる事はあんちゃんにとってはとっても嬉しいぞ」
司「黙れ!今度は何に金使いやがった!
永斗「薔薇に決まっているだろう?」
司「嘘付け!今までより減りが早かったぞ!!
永斗「最近の薔薇ってやつぁ・・・様々な色があるんだ
   特にゴールドは高くてなぁ」
司「ふ ざ け る な !!
永斗「だがダメだな」
司「あ?」
永斗「ゴールドローズは趣味に合わん」
司「・・・・・・その薔薇、どうした?」
永斗「趣味に合わんものを後生大事に持つ気は無いからな、捨てたぞ」
司「あ に き 〜 !!

勇悟「和やかな会話の腰を折って申し訳有りませんが   
司「和やかじゃねぇよ!!
永斗「あぁ、確かに俺たちの仲を嫉妬するような会話だったな
   うむ、これからは十分注意しよう」
司「兄貴はほんとに日本語わかってんのか!?
勇悟「強引ですが本題に入ってもよろしいですか?
   っていうか、そこに秋一君はいますか? 居ないと話しにならないのですが」
秋一「・・・・・居る、一応だが」
勇悟「それじゃ本題に入ります 司君、いいですか?」
司「どぞ、もう怒鳴るの疲れた」



     *     *     *



勇悟「・・・・・・・という訳で、今回の任務は"エビルウィスパー"川島美空の護衛です
   動く勢力はF.H.となっていますが、実行部隊は不明
   少なくともマスターレイス・ディアボロスは別件で動いているそうで、おそらく違うでしょう」
秋一「そんじゃ ほとんど何もわかってないようなものだろ?」
勇悟「恥ずかしながらその通りです」
司「でもどれぐらいの部隊が動いているのか・・・っていうのは解るんだろ?」
勇悟「えぇ、通信量などから・・・おそらく10人に満たない人数だと推定されます」
秋一「以外に少ねぇな」
勇悟「少数精鋭ということなのでしょう、よってこちらも少数精鋭で向かいます」
司「具体的には俺等だけか?」
勇悟「そうなります ただ多少のイリーガルの増員は構いません」
司「だったら・・・非常に気は進まないけど・・・」
秋一「俺は嫌だ(即答)」
司「俺も本当は気が引けてるんですよ? でも一応戦力として・・・」
勇悟「確かに彼の戦力高いですが・・・っていうか聞いてます?彼」
秋一「寝てる つまらんのだろ?」
司「起きろ!バカ兄貴!!仕事だ!!!薔薇代ぐらい自分で稼げ!!!!
永斗「お・起きてますじょ?」
司「バレバレだよ!
永斗「つまり・・・あれだ、川島太一を暗殺すればいいのだろう?」
司「誰だよ太一って!! っていうか暗殺じゃねぇ!!逆だ!!!
勇悟「・・・大変ですね、突っ込み疲れません?」
司「疲れますよ、本当に 海より深く」
永斗「具体的には死海ぐらいだな」
司「それ海じゃねぇ! しかも深さが良く解らん」

勇悟「とにかく班を分けましょう」
秋一「俺は    
司「この場にいる状態で良いでしょう 俺と渡良瀬さん、兄貴と三沢さんで」
秋一「・・・・・・」
勇悟「そうですね」
秋一「俺をいたぶって楽しいか?」
司・勇悟「「少なくとも自分が助かるので嬉しい」」
永斗「それでは行こうではないか!マイベストパートナーよ!」
秋一「くっ付くな!離れろ!!
勇悟「それじゃ通信切りますよ」
秋一「バ!待  

プツッ

勇悟「秋一君って結構クールで口が悪い印象が強いんですが・・・変わりましたね」
司「アレと一緒じゃ仕方ないでしょう」
勇悟「ですね」





【オープニングフェイズA】End






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