第2部『戸惑いの中で』

第1話「遭遇戦」

マクシミリアン・アーセニック(3番)は静かな森の闇の中で一人佇んでいた
武器はナイフ
・・・元々使っていたのとほぼ同型なので他人にとっては頼りないかもしれないが
少なくとも自分にとってはヘタに銃器が当たるよりもしっくり来る
・・・まぁ銃より強いのかと問われると困るが・・・

マックス「ふぅ・・・ダメか・・・」
つい声を漏らしてしまう
先ほどから試していたのだが、ここでは魔法が使えない
・・・使えないというのは正確ではないかもしれない
身体の中に魔力はある、それを手先に集めるのもいつもと変わらず出来る
・・・だが外へ魔力を放出すると途端に弱くなるのだ、まるで乾いた砂が水を吸い取るように魔力が拡散してしまう。
結果極端に弱くなってしまうので使っても意味が無い

魔力をナイフに送る事も不可能だった
ナイフに送った直後 やはり魔力は拡散してしまう。
直接身体に触れればあるいは可能かもしれないが、残念ながら周りに知り合いは居ない
とりあえず目下するべき事は・・・BFのメンバーを探す事、既に殺る気になっている者を止める事・・・
得に、少し前に出発したルーティさんを探す事・・・
ある程度走り回ったのだが まだ見付ける事が出来ていなかった
もしかしたらどこかに隠れていて、その脇を通り過ぎてしまったのかもしれない

サクッ サクッ サクッ サクッ サクッ サクッ
マックス「ん?」
誰かが歩く音・・・すぐに身を隠すとその人影の呟きが聞こえて来る

??「まったく・・・何でこんな・・・夾くん・・・」

マックス「女の子・・・人を捜しているみたいだ・・・」
そのままその子は自分の側を通り過ぎた
特に知り合いではない・・・一応、現段階で何も無いなら接触する必要は無いだろう
特に狂気に囚われている雰囲気もないし

       ピン       -

マックス「っ!? な・・・なんだ?」
これは殺気?あの女の子からではない、あの子は今ものんきに歩いている・・・じゃあ・・・
かすかに人影が見えた、気配はほとんど無い
たまたま肉眼で確認できたから・・・そこに居るとわかっているからこそ解る
・・・その程度の気配しか感じさせない

・・・かなり強い・・・

そしてその人の視線の先を振り返ると・・・
マックス「やっぱり・・・あの子・・・か・・・」
人影が銃を構え狙いを定める

パン パス

人影の射撃は正確そのものだった 戸惑いも、手震れなんてものも無い
それゆえに動作にあわせてバッグを盾にすることが出来た
消音機付きの小さな音だが女の子も気付いたらしい
??「な・何? だれ?」
マックス「静かに・・・何者かに狙われてる」
??「え?」
女の子は取り乱したりはせず、静かに僕の視線の先を追う
的確な判断だ、下手に騒いだり逃げたりしない分とてもありがたい
マックスだれだ!出て来い!

ガサッ

言われて銃を構えたまま男が姿を現した
マックス「あんたはさっきの・・・」
カノン「・・・カノン・ヒルベルト・・・君は?」
マックス「マクシミリアン・アーセニック」
こちらが名乗ると一瞬照準がずれる
チャンスかとも思ったが、迷った一瞬の内に再び銃を構えなおした
カノン「・・・・その名前、どっかで聞いた事がある・・・」
マックス「あいにくと僕は君のことは知らない」
カノン「いや、確か何かの本か何かに出てきた・・・まさか・・・」

パン キィン

突然放たれた銃弾はナイフによって軌道をそらされる
素晴らしいほどの命中精度だ
銃口の向きで胸を狙っているようには見えるが・・・
心臓から僅かに外されたらガードできなかったかもしれない
だがそれを悟られないようにする必要がある
少し恐れのようなモノが表情から読み取れる
出来る事ならこのまま・・・

マックス「話の最中に不意打ちか?」
カノン「・・・ここはいったん引きましょう、君を相手にするには武器が少なすぎる」
そういうとサッと林の中へと消えた
その時 安堵感からつい警戒を解いてしまった・・・それが良くなかった
マックス「!?」
先ほど感じた殺気を再び感じた。慌てて横に転がる
が、銃撃は別の人物を狙撃していた
??「あぁ・・・うぅ・・・」
バタッ
マックスな!?しまった」
女の子の脇には小さな針が刺さっていた、そのままその子は眠ってしまう
マックス「・・・さすがにこのままって訳には行かないか」
すぐに針を抜くがしばらくは目覚めそうにも無い、移動するのはしばらく延期か・・・
そう思ったとき異変に気付いた、女の子の呼吸が弱々しすぎる
脈を取ってみると尋常ではない遅さであった・・・
その後間もなく なす術も無く女は死に至った
マックス「まさか・・・これを狙っての麻酔なのか?・・・あるいは彼自身知らないのか・・・」


とにかく悔やんでいても仕方が無い・・・
女の子を気に寄りかかるように座らせ両手を足の上で重ねさせる
・・・少しの間黙祷をする・・・
その間注意力が散漫に成っていたようだ

ガサッ
??「神楽さん!?」
故にここまで近付いていた人影に気付く事が出来なかった
誰かの名前を叫びながら男は女の子に駆け寄る・・・そういえば名前も知らなかった
・・・カグラ・・・と言うのか・・・

男が肩に手をかけると女の体が崩れる
??「神楽さん・・・・・・貴方が・・・神楽さんを殺めたのですか?」
男はその子の亡骸を抱きしめながら僕に静かに訪ねる
マックス「・・・いえ、僕ではありません・・・が・・・守りきれなかったというのも事実です・・・」
??「そうですか・・・・・・・・・・・・いえ、貴方のせいではありませんよ」
マックス「ですが・・・」
??「いえ、決して貴方のせいではないのです。少なくとも別の誰かが殺めたのでしょう?」
マックス「・・・そう・・・ですね」
??「神楽さんを弔ったらここを離れます、他にも探すべき人がこの狂気の場所にいるのです」
マックス「僕も・・・そうします」


??「正直・・・見知らぬ貴方を完全に信用した訳ではありません」
カグラさんを弔い終わった後、男は小さく呟き始めた
??「そこまで無条件に人を信用するという事は 私には出来ません・・・でも・・・
 貴方の知らない人が死んで涙してくれる人が 悪い人であるわけがありません」
言われて目元に涙がたまっていることに始めて気付いた
??「それじゃ行きますね、貴方も生き残ってください」
マックス「あ、僕はマクシミリアン・アーセニックといいます、あなたは?」
籍真「私は草摩籍真(44)・・・それでは、縁があればまた会いましょう」
マックス「はい」

籍真さんはカグラさんの前でもう一度黙祷するとゆっくりと歩き出した

僕も動かないと・・・まずBFのみんなだ・・・さすがにまだ死んでないよな?


43番 草摩神楽 死亡
 【残り97人】








第2話「治療」

暗い森の中を懸命に走る
決して早くもないけど、逃げ切れるなんて思ってないけど
それでも不安でしょうがないから力の限り走る

さっき後ろで足音が聞こえた
それがスタートの合図のように走り出した
あの人は追って来ているのか・・・もう諦めたのか
そもそも殺す気がなかったかもしれない
むしろ知っている人だったのかもしれない
でも・・・それを確かめる気にはならなかった
いや、殺しあうのがこのゲームのルール・・・殺意があると思っていたほうがいい

逃げなきゃ 逃げなきゃ
逃げなきゃ 逃げなきゃ
逃げなきゃ 逃げなきゃ
逃げなきゃ 逃げなきゃ

だが逃走の終わりは無慈悲にも、突然やって来た
      ドックン      
??あぅ・・・こんな時に・・・
突然の発作・・・人魚の呪い・・・・・・視界が急激に狭くなる
ドサッ
??大丈夫か!?

気がつくと落ち葉の上に寝かされていた
まだ虚ろな目であたりを見渡すと、近くに白衣を着た男の人が座っていた
??せん・・・せ・・い?
??「ん?気が付いたか?」


??「すいません」
??「気にするな、オレは医者だ。発作が起きれば助けるさ」
??「いえ、あの・・・いきなり逃げたりして・・・」
??「それも気にする必要はない。こんな状況だからな、追われれば逃げるのも当然だ」
??「あ、そういえばどうして追ってきたんですか?」
??「走り方が少し不自然だったからな、気になった・・・医者の性分かな」
美魚「あの・・・私は二見美魚(79番)です、アナタは?」
トーヤ「トーヤ・クラウド(20番)だ」
美魚「トーヤ先生・・です・・・ね」
トーヤ「まだ苦しいだろう、この薬を飲んで休め オレが見張っているから」
美魚「は・・・はい
薬を飲むとすぐに身体が楽になり眠りの中へと落ちていった


トーヤ「ふぅ・・・取りあえずはこれで凌げるか・・・」
ガサッ
トーヤ「!?」
??美魚!?
突然女の子が現われた
??「あの・・・美魚に何したの?」
そう訪ねながらも手にしたナイフを突きつけてくる
トーヤ「発作を起こしたので薬を上げた、今は眠っている」
??「本当に・・・それだけ?」
トーヤ「そうだ、眠ってるだろう?」
??「向こうに眠っているように・・・死んでいる人がいた」
トーヤ「・・・悪いが・・・その事は知らない」
??「そう・・・」
トーヤ「とりあえずそのナイフを下ろしてくれないか?普通に話も出来ん」
??「・・・・・・」
トーヤ「それに君も足を怪我しているようだ」
??「・・・・・・」
女は全く反応しない
手に持ったナイフをきつく握り締め
そしてそのナイフは小刻みに振るいえている

ナイフを持っているとはいえ、もし戦えば負けてもおかしくないと考えているのだろう
トーヤ「・・・しかたないな」
仕方なく自分の鞄をあさり始める
??「う・動かないで!!
少しナイフを近づけるが気にせず鞄からポケット・ピストル(支給品)を取り出した
??なっ!?
女の子は硬直した が、
トーヤ「ほら」??「え?」
一瞬女の思考は停止した
俺は取り出したポケット・ピストルを女の子の足元に放ったのだ
??「何のつもり?」
トーヤ「俺が少しでも怪しい動きをしたら引き金を引いてくれ」
??「な・・・あ・・・」
女は非常に混乱していた・・・まぁ自分でさせたのだが・・・
トーヤ「ほら、しっかり持っておけ」
そう言って拾わずに居たピストルを手渡す
トーヤ「そこに座って右足を出してくれ」


真魚「あ・・・ありがと」
トーヤ「礼はいい、オレが勝手にした事だ」
真魚「いや、あの・・・先生の事疑っちゃって」
トーヤ「気にするな、こんな状況・・・ふふっ」
真魚「?」
トーヤ「いや、さっきの子ともほとんど同じ会話をしていたんでね、名前的に・・姉妹か?」
真魚「はい、あの子は妹です」

トーヤ「そうか・・・それじゃあの子は君が守ってやってくれ、わたしはもう行く」
真魚「え?行くの?」
トーヤ「あぁ私にも探しておきたい人が居るんでね」
真魚「そうですよね・・・少し残念です」
トーヤ「一応薬を置いていく、発作が起こったら飲ませてくれ、これで4回分だから多すぎても少なすぎてもダメだからな」
真魚「はい、解りました・・・あ、このピストル」
トーヤ「それは君が持っていてあげてくれ、万が一の為にな それに私にはこれがある」
真魚「メス?・・・でも刃物とかって」
トーヤ「何故だか解らないが奴等には回収されずに残った・・・ま、余り傷つけたくないがね
    どうせ自分で治療する羽目になるだろうからな。 では」
真魚「あの・・・探している人の名前は?」
トーヤ「・・・オレと同じ白衣を着ているからすぐ解ると思う、ディアーナ・レイニー(98番)だ」
真魚「解りました・・・お気をつけてください」
トーヤ「あぁ、こっちもその霧島先生を探しておこう・・・それでは」
そう言って走り去る
真魚「お気をつけて・・・」
【残り97人】







第3話「不思議な提案」

??「ここまで来れば・・・大丈夫かしら」
普段運動なんかしないからもうヘトヘトだった
もしこんな状況でなければすぐに眠っていただろう
??「こんな所じゃ本も読めないなぁ・・・みんなどうしてるんだろう・・・」
シェリル・クリスティア(21番)は木陰で休みながら自分の鞄から本を取り出した
今は夜で、灯りはは月明かりのみ
本などまともに読めないし、読んでいる場合でもない事は解っている
解ってはいるのだが、これが夢のような気がしてならない
今眠ってもう一度起きたらいつも通りなんじゃないか・・・そんな気さえする
だが今眠れば待っているのは死だろう・・・
ピートくんの死に際が思い出される・・・
・・・もうあの日々には戻れない・・・
シェリル「ふぅ・・・・・」
ため息がもれる、これからみんなも・・・私もどうなるんだろう
ガサッ
シェリル「だ・だれ?」
思わず持っていた本を握り締める
・・・いざとなれば投げて、逃げる・・・
管理者「管理者の者ですよ」
シェリル「さっきの人・・・」
管理者「はい、覚えていてくれて光栄ですよ」
シェリル「な・・・なんのようですか・・・」
手にした本を持つ手に力が入り、それ以上に震えが止まらない
こんな人を人とも思わないような奴に会ってしまうなんて・・・
管理者「警戒しないで下さい、別に私はあなたを殺そうと思っているわけではありません」
シェリル「え・・・」
管理者「まぁあなたが私の言う事を聞けないとあらば・・・私の気が変わってしまうかもしれませんがね」
シェリル「ど・・・どうすればいいんですか?」
管理者「とりあえず私についてきてください、ここではいつ誰が現われるか解りませんからね、ゆっくり話も出来やしない」
シェリル「・・・解りました・・・」
逆らえない
・・・今こうして後ろを歩いていても足の震えが止まらない
さっきまで一人でいたときも怖かったけど・・・今はもっと怖い・・・



連れて行かれた場所は1つの小さな部屋
途中から目隠しをさせられていたのでどこにあるのかよく解らない
シェリル「あの・・・ここで何を・・・」
管理者「いえ なに、ここでアナタにゆっくりと読書してもらいたくてね」
シェリル「・・・どういう意味ですか?」
管理者「言葉通りですよ」
そう言われても全く信用できないし、真意もわからない
確かにさっき本は読みたかったけど・・・こんな不可解な状況で本なんて読めるわけが無い
シェリル「あなたは・・・何が・・・」
管理者「さっき言った通り本を読んでもらうだけですよ・・・この本をね」
そう言って一冊の分厚い本を取り出す
カバーはかかっておらず、タイトルも何も書かれていない
シェリル「その本を読んだら私をどうするんですか?」
管理者「別に何も、ただお帰りいただくだけですよ・・・戦場にね」
シェリル「・・・・・・」
迷った・・・確かに怪しい・・・でも、この場にいる限りはもしかしたら安全かもしれない
少なくとも森の中に一人で立っている方が数倍危険であろう
ならばここで一時平和に過ごせるのなら良いのかもしれない
最後の晩餐になるかもしれないが・・・それでも・・・
シェリル「わかりました」
管理者「ありがとうございます、それでは集中して本を読めるように私は退出しますね」
そう言って男は部屋の外へと出て行った
続いて鍵の閉まる音
見える窓は全部鉄格子がついている・・・逃げられないよね・・・やっぱ
他の荷物は全て取り上げられているので仕方なく渡された本をパラパラとめくる
特に何の変哲も無いただの本であった
シェリル「しょうがない、読もうか・・・」
もし読まなければ殺されるかも知れない、とにかく私はコレを読むしかないのだ
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
【残り97人】






第4話「懐かしい(場面での)出会い」

沢村司(35番)は夜の住宅街を歩いていた
人の気配は無い、元々住んでいた人たちは皆退去させられたのであろう
そんな中を歩きながら司は今まで起こった事を必死に考えていた


何がどうなってやがる、昨日まではいつも通りだったのに・・・
いつも通り寛と言い合いをして、バイト先で劉さんにからかわれて・・・
それが突然『殺し合いをしろ』だと?冗談じゃない
今まで通りでいいんだ、アホみたいな始まりだったけどあの家族計画のままで

そう、今まで通りに戻ろう
まず一番心配な末莉と春花を探して、準と青葉と真純さんを探そう
寛と劉さんは殺しても死なないだろうからきっと大丈夫だろ
他の奴らだって好き好んで殺しなんてしたくないはずだ
きっと出会っても殺しあうなんて有る訳が無い

「この家・・・」
似ている・・・あの家族計画がはじまった家に・・・
別に外見はそれほど似ていないが
周りの家とは違った古いつくりの家はそう感じさせた
「もしかしたら・・・」
もし自分みたいに他のみんなが考えていれば会えるかもしれない
・・・家族(一応そんな感じの奴ら)に・・・
「入ってみるか・・・」
もしかしたら既に誰かいるかも知れない、少し期待しながら中へと踏み込む

このドキドキしながら無断で家に入るのも妙に懐かしい
そんな懐かしがっていられる状況ではないのは分ってはいるが

・・・そういえばふすまを開けたとき末莉が体当たりして来たんだっけ・・・
昔の平穏を懐かしみながらふすまをそっと開ける
ドッ
「うっ!?」 ??「きゃぁ!?」
・・・まさか本当に・・・
一応警戒しながら開けたので倒れるほどではなかったが
逆に相手はしっかりと伸びていた
「まいったな・・・」
一瞬期待したが末莉じゃない、他の知っている奴でもない
むしろもっと幼い少女だった
「ったく・・・放っては置けないか」
昔の自分だったら捨てていっただろうか・・・それとも殺していた?
いや、今の自分は殺さないし放っても置けない・・・それでいい


一応部屋に少女を寝かせてから家の中を調べたが特に誰もいなかった
ライターなど役に立ちそうな物は拝借する
この家ですべき事を全て終わらせても少女は目を覚まさない

「お〜い、大丈夫か?」
ほおを軽く叩きながら読んでみる
??「ン・・・ふぁ・・・」
「気が付いたか?」
??「あれ?・・・ここは・・・あなたは?」
「俺は沢村司、さっきそこでぶつかっただろ?」
??「あ!申し訳ございません、突然足音が聞こえたもので怖くなって部屋を出ようとしたんです・・・あ、私 河原瑞音(16番)と申します。よろしくお願い済ます司お兄様」
「いや、お兄様ってなんだ?」
??「はい?」
「いや、何で俺をお兄様って呼ぶんだ?」
??「変・・・ですか?」
「・・・いや、いい」
もう慣れてしまったのかもしれない・・・兄と呼ばれる事に・・・

「あー お前には誰か探している人はいるのか?」
瑞音「『瑞音』とおよび下さい、一応いますが・・・」
「だったら一緒に探してやる、瑞音一人だと危険だろうから一緒に来い」
瑞音「司お兄様にも大事な人がいらっしゃるのでは?」
「だからまとめて探してやるって、どうせやる事は変りゃしないんだから」
瑞音「え・・・でも、足手まといになってしまいますよ」
「いいって、お前をこの場に残していく方がよっぽど気が引ける」
瑞音「・・・分りました、よろしくお願いします。司お兄様」

何となく・・・
兄と呼んでくれるこいつを・・・
懐かしい場所と場面で出会ったこの少女を
あいつらにダブらせていたのかもしれない

いつのまにか俺は家族を求めるようになっていた
・・・昔からは考えられんな・・・
・・・まぁ・・・こーゆーのも・・・悪くないか・・・
「行くぞ」
瑞音「はい司お兄様」
【残り97人】







第5話「その男、原崎豊」

「まったく・・・なんだってんだ」
森の中に嘆息の声が響く
「いきなり殺し合いをしろだと?ふざけるなよ。俺は警察だ・・・殺人犯を追う人間がそんなことできるか!」
俺は口元を苦くゆがめながらバッグの中身を探る
奴の言っていた通りパンが2つ(ラスク×2)・・・同じ物かよ・・・
それと飲み物(牛乳1lの紙パック)・・・コップもなしかよ・・・
世界地図とコンパス(円を書く道具)・・・もう訳わかんねーよ・・・
それと黒い革のベルトと銃
「コレは・・・」
見慣れたその形
手にとって見ると何度か持った事のあるその重さ
ごく稀に携帯する事もある警官用の拳銃「NewNanbu」である
弾の管理しやすいリボルバー
一緒に入っていた弾丸は30発・・・その中に空砲が5発・・・
「食料はともかく・・・武器は当たり・・・か・・・」
自分から攻撃する気など毛頭無いが、襲われれば応戦せざるをえないだろう
そんなときに訓練した事のある武器と言うのはありがたい

ベルトを肩からかけ、ホルスターに銃をしまう
小腹が空いていたのでラスクを牛乳と一緒に飲み込む
このラスクは学生時代、昼休みの食料争奪に敗れた者が食す
いわば敗者の食べ物だった
・・・何せ硬くて食べ難い・・・
それにやたらとのどが渇くのもイマイチだ
支給された牛乳もそう長くは持たないだろう
「食料の確保もしておかないとな」
少しはなれたところに家らしき物が見える

先に出発した物と鉢合わせる危険があるが・・・
出会う人全員が敵とは限らない・・・むしろその逆であると信じたい
とある事件で再開した医師や看護婦とも先ほど奇妙な再会をした
まさか偶然とも思いがたいな・・・
とにかくそいつ等は確実にこの殺し合いには反発しているはずだ
特に霧島拓也はどうしようもない程のお人よしだ
自分を殺しに来た奴でさえ治療をしようとするかもしれない
そして他の奴らだってこの状況を甘んじて受けるわけが無い・・・そう願う
とにかく食料の確保だ・・・多少危険を伴うが・・・行ってみる価値はあるだろう



森の開けたところに木造の家がポツンと立っている
人のいそうな気配は無い
だがこんな風に不自然に一軒だけあればいつ誰が入ってもおかしくないだろう
まぁ慎重に動くか・・・
銃を右手に持ち扉を慎重にスライドさせる
ほんの小さな音のはずだが妙に響く
中を覗き込むが光は見えないし気配も無い
土足のまま中を進む
電気がつくのかもしれないが用心のために付けないでいた

「冷蔵庫か・・・」
かすかな駆動音を鳴らしながら冷蔵庫が置いてある
明けてみると灯りがついていて、冷気が漏れてくる
どういうわけか電気が通じているらしい
中にはめぼしい物は無い
各種調味料とごぼう、ほうれん草、ニンジン、じゃがいも、大根・・・
狙ったかのように調理しないと食えない物がこれでもかというほどに詰め込まれている

ガスコンロは動かない・・・ガスが止められているようだ

水は出る・・・何の変哲も無い水道水に見えるが・・・
・・・コンロが動かないのでは煮沸も出来やしない・・・罠ではないと信じるしかないか

しばらく台所を漁っていると奇妙な点が見えてきた
まず包丁やフォークが無い・・・包丁を置く場所はあるから主催者が隠したのだろう

そしてなぜか他の家電製品が動かない・・・電子レンジやオーブントースター、食器洗い機など・・・
あらゆる冷蔵庫以外の家電は電気が来ていない・・・元のブレーカーが落ちているのか・・・細工か・・・

そして戸棚の中には大量の『サ○ウのご飯』・・・レンジ動かねーよ・・・
他の部屋も調べてみるが何処もダメ・・・テレビ、クーラーなどは勿論、洗濯機もだめ・・・

「やっぱここのを使うしかないのか・・・」
再び冷蔵庫の前に立つ
レンジを動かす為には生きているコンセントが必要
そしてそのコンセントは冷蔵庫以外は死んでいるときたもんだ
ご丁寧にコンセントは冷蔵庫の真裏・・・さらに隙間はほとんど無く、ホコリだらけ・・・

冷蔵庫に手をかける
くっ・・・ぬぅ・・・・・・・・・・・・・・・・・はぁ・・・だめか・・・」
びくともしない・・・っていうかこれだけ物が入っていれば当然だろう
諦めて冷蔵庫の前に座り込んで扉を開ける
少し寒くなるがとりあえず重そうなカボチャや大根を取り除く
「・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・めんどくさ・・・」

何処にこれほどの(食えない)食材が入っていたのかと言うほど詰め込められている
嫌がらせとしか思えない
最初はしっかりと並べていたのだがだんだん面倒になり適当に放っていく
気が付くと台所とそこにつながる廊下はジャガイモやにんじんが散乱している・・・
「うわ・・・足の踏み場も無い・・・」
一応冷蔵庫を動かす為にスペースを空けてはいるが、それ以外は・・・ヤバイ
「かたさないで逃げちゃおうかなぁ」
そうすると数日後にはこの家は悪臭の立ち上る『素敵な家』になるだろう・・・

ガラ・・ガラ・・・・ガラ・ガラ・・・ガラ
どうでもいいことを考えていたら微かな物音がした
不規則にドアの開く音・・・用心しながらゆっくりとあけているかのような・・・
ってヤバッ!!
呟いてとっさに床を見る
床は相変わらず・・・芸術的なまでの仕上がりだ・・・
ギシ・・・ギシ・・・ギシ・・・
足音がゆっくりと近付いてくる
こんな状況じゃ明らかに人がいるとばれる
とっさに銃に手が伸びる
・・・いや、ダメだ・・・これを手にしていればこっちがやる気だと思っていらぬ不安を呼ぶ
この状況でその不安は『殺し合いをする引き金』となるのに十分すぎる・・・
場合によっては窓から逃げる事が必要か・・・

ギシ・・・ギシ・・・ギシ・・・
あと少し・・・

ギシ・・・ギシ・・・
??キャッ!? あわ・・あわわああああああ
ドシーーーン

突然の悲鳴と共に『誰か』は見事に倒れた
足元には無残につぶされたジャガイモが・・・
廊下にはジャガイモに転倒させられた女(声から判断)がいる
一応最初は警戒していたのだがその後何の物音もしない

「し・死んだか?・・・」

もしこんな事で死んだらやだなぁ
日常でこんな死に方をしたらどういう検死をするんだろう
死因は・・・まぁ頭部への衝撃とかだろうけど・・・
凶器がジャガイモと取れないことも無い・・・この場合俺は過失?それとも故意?・・・
まぁどっちにしてもそんな事件を担当したいとは思わないが・・・

「一応・・・生きてる・・・な」

息はしている
特に怪我も見られないし、ただの気絶か
あーよかったこんな所で『妙』な前科がつかなくて
ジャガイモで殺人できても嬉しくねーしな

とりあえずこの子の二の舞にならないように足元に気を付けながら女の子を抱える
すり足で移動して女の子をリビングのソファーに寝かせる
「にしても・・・」
小さい子だなぁ・・・制服を着てるから中学生か・・・高校1年くらいかな・・・
クゥゥゥ
「アレ?・・・って俺じゃないよな」
腹の音に少し焦るが俺のじゃない・・・つまりこの子のか・・・
ま、大丈夫でしょ、危険な子には見えないし・・・



??「う・・・うん・・・・・・アレ?」
「目 覚めたか?」
??「へ・・・あれ?・・・ここ・・・あれ?」
「さっきそこで転んだろ?頭とか痛くないか?」
??「うーん、少しズキズキするけど・・・多分平気です・・・ってあなたは?」
「俺は原崎豊(73)、君は?」
こだま「えと、里見こだま(33)です・・・」
「こだまちゃん・・・ね」
こだま「む・・・私は『ちゃん』って年じゃないですよ!」
「え?高校1年ぐらい?」
こだま「失礼ですね、私は3年生です、もうすぐ卒業ですよ!」
「え?中3?」
こだまち が い ま す、高校3年です、ほとんど大学生ですよ」
「え・・・」
こだま「何で沈黙するんですか?」
「え・・・だって・・・」
こだま「ほら」
生徒手帳らしき物を見せてくる
確かに・・・高校3年生・・・里見こだま・・・
「ほんとだ・・・」
こだま「まったく・・・ほん  クゥゥゥ あ・・・」
「腹減った?」
こだま「いや、その・・・はい」
「まぁいいや俺も飯にしようとしてたし、一緒に食うか?」
そういってやっとこさ動かした冷蔵庫の裏に回り電子レンジに二つ入れる
スイッチを入れるとちゃんと動き出した
「少し待っててくれ」
こだま「はい・・・有難うございます・・・」



「そうか・・・君もよく解らないうちに・・・」
こだま「えぇ・・・原崎さんは?」
「ん?」
こだま「これからどうするんですか?」
「とりあえず殺し合いはしたくないね、する気なら君を殺ってるし」
こだま「ですよね、それじゃ一緒に行動しましょうよ」
「え?俺はいいけど、君は良いの?」
こだま「はい、原崎さんは良い人ですよ。信用できます」
「ま・・まぁそう言ってもらえると嬉しいんだけどね」
こだま「それじゃ行きましょ」
「そうだな」
【残り97人】







第6話「力の限り投げつけろ!!」

心臓が早鐘のように鳴り響く

その音さえ五月蝿いと思うような沈黙の中

木の陰に必死に身を隠す

『敵』は近くにいる
『敵』と呼んで良いのかどうかすら解らないが
今この場所のことを考えれば当然『敵』であろう
むしろ『敵』でないはずがない

だが、自らの手に握られた『それ』はあまりに頼りない

一応『それ』は金属で出来ている
だが『それ』は力が強い訳でもない自分にも容易に曲げる事が出来るだろう
バッグに入っていたそんなものを頼りにしてひたすら身を隠す
こんな物では相手がどんな武器であろうとまず負ける
落ちている石ころの方が良い武器となるだろう
だがそれを拾う気にもならない
目を・気を逸らしたら即座に死んでしまうような気がする

『敵』は1人なのか、それとも複数なのか

『敵』はやる気なのか、そうでないのか

『敵』こちらの気付いているのか、気付かずいなくなるのか

『敵』は・・・『敵』は・・・


足音が近付くにつれ緊張は増していく
既に許容量いっぱいにまで膨れ上がってなお増加していく緊張
息を必死に押し殺そうとするが、身体は貪欲に酸素を欲し
心臓は破裂しそうなほどに拍動を続け全身に血液を送る
そしてそっと木陰から顔を出し人影を見る




??「いやぁ由希君(53)が僕を頼ってくれるなんて光栄だなぁ」
由希「たまたま一番近くにいた知り合いってだけ、偶然だよ」
??「うっわぁ、冷たいねぇ」
由希「紫呉(48)こそ、この辺に犬はいないの?」
紫呉「遠くにいることはいるっぽいけど、鼠ほどはねぇ」
由希「こっちもほとんどいない」
紫呉「え?」
由希「こんな場所なのに、鼠はほんの数えるほどしかいない」
紫呉「そんな訳ないでしょう?こんな場所で」
由希「・・・異常だね、でも確かだよ」
紫呉「そっか・・・まぁ元々この状況が異常だしねぇ、今さら驚かんけど」
由希「紫呉」
紫呉「ん?なんだい?」
由希「本当に何も知らないんだな?」
由希は一直線に紫呉の目を見る
一欠片の嘘も許さないと言ったその目で
紫呉「・・・あぁ、コレは僕のたくらみとは違うよ」
由希「・・・はぁ、信じるしかないか」
紫呉「そうそう、信じる物は救われるってね」
由希「まったく・・・鼠たちには引き続きあたりを捜索してもらう」
紫呉「そうだね、これ以上の犠牲はまっぴらだしね」
由希「・・・・・・」
紫呉「暗くなるのも良いけど頼むよ、襲われた時は由希君が頼りなんだから」
由希「・・・解ってる」



男が二人近付いてくる
この場に似つかわしくない顔で話ながら

冷静な自分は彼らが敵である訳がないと言う

だが臆病な自分はそれを心から信じる事は出来ないと言う

『その』金属を持つ自分の手につい力が入る
このまま通り過ぎてくれればいい
だが、もし気付かれたら?

戦うのか?

逃げるのか?

それとも・・・




由希「紫呉」
由希が立ち止まり小さな声で呼びかける
声は出さずに振り向く
由希「誰か・・・いる・・・」
紫呉「十二支?」
由希「違う、知らない女の子」
紫呉「・・・こっちから呼びかける?」
由希「・・・脅えてるらしい」
紫呉「不用意の声をかけるのは危険・・か・・っていってもそれ以外に方法はないか」
由希「だね・・・」




人影は突然立ち止まった
気付かれたか?
どうする?
この場所にいてもしょうがない

逃げるか

立ち向かうか
いや、立ち向かったところでかなうはずがない

『敵』は男二人、自分は女、武器は貧弱
勝てる要素などない
絶望的だ
逃げるしかない

どうやって?

銃器を持っていたら?

走って逃げられるの?

・・・どっちもだめ・・・
くっ・・・こだま・・・私もうだめかも・・・
ガサッ
??「ッ!?」
隠れようと身体をずらした事が裏目に出た
もう隠れきれない
完全に位置はばれた
行くしかない
前か・・・後ろか
??あぁぁぁぁぁぁ
木陰を飛び出す



ガサッ
・・・・・・「あぁぁぁぁぁぁ
紫呉「由希君?」
由希「解ってるよ」

女は突然飛び出し右手に持った金属を必死に振り回す
リーチの短い武器にそれほど恐れる必要はない
むしろ気を付けるべき事は我を忘れた動きと体の接触
冷静に右手を掴み女のスピードを利用して軽く引っ張る
??「あっ?」
バランスを崩した隙に後ろに回り、右腕を固める
??「痛っ!!」カシャン
関節の痛みに女は武器を取り落とした
由希「あ」
紫呉「由希君・・・やりすぎ・・・」
由希「いつものクセで・・・」
紫呉「女の子には優しくしなきゃ、離してあげな」
由希「う・うん」
手を放すと女はすぐに距離を置く
??「な・なんのつもりよ」
女は精一杯の強がりを吐く
由希「何のつもりも何も、こっちは殺す気なんてこれっぽっちもないよ」
??「・・・」
紫呉「加減を忘れた由希君が失礼したね、お名前は?」
??「・・・」

刺す様な疑いの眼差しをむけられた紫呉だが、まったく動じることなく続ける
紫呉「おっとすまない、僕は草摩紫呉、こっちは草摩由希」
ひかり「・・・結城ひかり(92)」
紫呉「ひかり君ね、いやぁ綺麗な名前だねぇ、名は体を表すと――」
由希「紫呉邪魔」
女に歩み寄ろうとする紫呉を無理矢理どかす
紫呉「ひ・ひどいなぁ」
由希「ゴメン、大丈夫だった?」
ひかり「え・えぇ」

落ち着いてその男の容姿を見れば、色恋沙汰にあまり関心のないひかりも一瞬息を呑む
ひかりの周りにいる男達はある意味美形と呼ばれる者が多い
だが、それらはいずれも『変わり者』と呼ぶ方が似合う者達だった
目の前の男はそれらとはひと味もふた味も違う雰囲気を持っていた

紫呉「おや、これはひかり君の武器かな」
紫呉は由希の側に落ちていたステンレス製品を持ち上げた
ひかり「あ」
ひかりはすぐにそれを引ったくって隠す
別に武器を取られたとか思ったわけではない
ただ単に見られたくなかっただけ
紫呉「・・・スプーン?」
ひかり「う・・・」
見られた・・・屈辱・・・
紫呉「それが支給武器?」
ひかり「そ・そうよ、悪い?」
紫呉「それだけしか入ってなかったの?うわぁ最悪なくじ運だねぇ」
ひかり「コレだけじゃなかったけど・・・」
紫呉「? 他にも入ってたの?」
ひかり「ッ!? な・なんでもないわよ、武器はコレだけ」
慌てて否定するが、それが嘘である事はミエミエである
紫呉「でも支給された物は別にあったんでしょう?」
だがそれが隠したいことであることもミエミエなのだ
それを見てなお、嬉しそうに聞いてくる紫呉に対し、ひかりは

・・・この男・・・紫呉とかいったわね・・・こいつは合わない
というかむしろこっちの反応を見て楽しんでる
最悪・・・

と、初対面ながら思うのだった
ひかり「コレと一緒だったの!」
やけになってポケットの中身を投げつける
紫呉は難なくそれをキャッチし手を広げる
紫呉「・・・サイコロ?」
ひかり「・・・そうよ」
紫呉「・・・スプーン・・・さじ・・・サイコロ・・・サイ・・・さじを投げる、サイは投げられた」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜殺す
紫呉あははははははーーーーーーー!!
由希「紫呉笑いすぎ」



由希「で、ひかりさんだっけ?これからどうするつもり?」
紫呉ぷっ、サイは投げられた・・・
ひかり「私は・・・その・・・殺し合いなんてしたくないです・・・」
紫呉しかもさじを投げるって・・・くくっ
由希「じゃ仲間探しって感じかな?」
紫呉シャレ・・・駄洒落武器・・・はははっ
ひかり「そうしたいんですけど・・・何の手がかりも力も無くって」
紫呉あ〜おかしかった、じゃ僕や由希君と一緒に行く?」
ひかり「でも・・・」
由希「ま、しょうがない・・・この状況だし協力し合わないと」
紫呉「由希君いい事言うねぇ」
ひかり「で・・でも・・・」
由希「信用できないよね・・・まぁそれもしょうがないんだけど」
ひかり「いえ!そういう訳ではなくて、私ばっかり得するような気が」
紫呉「ケ・セラ・セラ、気にしな〜い、ココであったのも何かの縁さ」
由希「そうだよ、みんなでココから抜け出すことを考えよう」
ひかり「えっと・・・は・はい、よろしくお願いします」
ひかりは自分の意思とは無関係に赤くなる顔を隠しながら大きく頷いた
こんな経験は生まれて初めてだった
かつて『姐さん』と呼ばれた女の面影は無く
もしあいつらに会ったら笑われるのは目に見えていた
まぁ笑ったら二度とそんな口聞けないようにするだけだが・・・
【残り97人】


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