第1部『ゲームスタート』

第1話「始まりの刻」

 ふと気付くとそこは大きな体育館のような場所だった。
周囲にはかなり多く人・・・50・・・60・・・・・・100人くらいだろうか。
それだけ多くの人が床に横になり眠っている…自分もさっきまではそうだったのだろう。
程なくして周りの人たちが起きはじめてきた。部屋全体がざわざわしだす。
自分も知り合いを見つけ話し始める・・・今まで何をしていたのか、何故ここに居るのか・・・結局何も分らない。
周りの人たちの同じようだ。



少しそうしていると何人かの人が部屋を調べ始めていた。
それを見て自分も始めてこの空間を見渡してみる・・・パッと見 周りにドアのような物は見えない。
窓もはるか高いところに、しかも黒いカーテンがかかっていて窓が存在することしか解らない
・・・そう、今気付いたのだがこの部屋は不自然なほどに天井が高い。
4,5階位はあろうかという高さだ。
そして一方には演説でもするかのような舞台が設置されている。
いつのまにか周りを調べていた人たちは集まって話をしていた・・・やはり出口はないということだろうか。





??「おはよう諸君、ぐっすりと眠れたかい?」
どこからともなく声が聞こえる。それと同時に一人がロープで舞台に降りてきた。
??「これはどういう事だ?」
先ほど部屋を調べていた集団の一人が声をあげる
??「ん〜キミは確かカノン・ヒルベルト(74)君だね?噂は僕も良く聞いているよ」
カノン質問に答えろ!
男の見下した態度に声を荒げ上着の内ポケットに手を入れる
「ん?」
だがその手は目的の物を掴む事は無い
??「ムダムダ、キミらの銃やナイフ・爆弾などの武器の類は全て回収させてもらった」
カノン「・・・たとえ素手でも貴様一人ぐらいどうとでもなる」
そう言い終わらないうちにカノンと呼ばれた人は舞台の上に飛び上がっていた。
すると男は余裕の表情で 懐から何かスイッチのような物を取り出した。
それを見てカノンが動きを止める
??「これは爆弾の起爆スイッチ・・・作動すればこの場所は跡形も無く吹っ飛ぶぞ」
カノン「・・・お前も死ぬぞ」
??「構わないさ・・・ちなみに俺の心音が停止するとやはり爆弾は爆発する・・・気を付けな」
カノン「くっ・・・」
??「解かったらここから降りな、この舞台に立ってて良いのは俺だけさ」
そう言われてカノンは男を睨みつけながら ゆっくりと舞台の下へと降りる


【残り100人】







第2話「虚構(ゆめ)現実(げんじつ)か」

それを見届けた男はゆっくりと話し始めた
管理者「さて・・・何故ここに集められたのか・・・不思議に思う人も多いでしょう、
 キミ達に集まってもらったのは他でもない・・・・・・今日はちょっとキミ達に・・・殺しあってもらいます
その言葉に冗談のような空気が流れる。周りを見ればざわざわと何か話し始めている
??んな事する訳ねーじゃん
ひときわ高い声が聞こえ 皆が声の主を見る
管理者「えっとキミは・・・確かピート・ロス君(98)ですか?」
ピート「そーだよ」
管理者「ふふっ昨日徹夜で覚えた甲斐がありました・・・で?どうしましたか?」
ピート「殺し合いなんてする訳ねーじゃんか」
そのはっきりとした言葉に回りも同調し始めた
ざわざわと騒ぎ出し、その声は次第に大きくなってゆく
管理者「君はみんなを殺したくなんか無い・・・と?」
ピート「あったりめーじゃん!何でみんなを殺さなくちゃいけねーんだよ?」
管理者「じゃあ・・・キミが死ね」
パァン
男が言い終わった直後、何かの破裂音が建物全体に響く。
直後先ほどまで元気にしていた子が赤い物を撒き散らしながらその場に崩れた
すぐに白衣を着た男が駆け寄るが、遠目に見ても既に手遅れであろう
管理者「何か・・・他に質問あるか?」
沈黙・・・皆がこの状況を理解するのに必死だった
管理者「何にも無いなら次いってもいいか?」
カノン「お前らの黒幕は誰だ?」
カノンと呼ばれた男が再び口を開いた
管理者「言うと思うか?」
カノン「・・・何が目的だ・・・」
管理者「さぁな、俺はただの下っ端さ・・・神の意志のままに動く、な」
カノン「・・・やはりキヨタカか・・・」
カノンは小さく呟くとそのまま黙っていた

黙り込んだカノンをしばらく愉快そうに眺めた後、男は再び口を開く
管理者「それじゃ細かいルールを説明しよう。
 君たちが必要としている情報だ、きっちり覚えておけ、不安なら紙に書いておくのも良いぞ

 まず一番大切なことだ、これを忘れちゃ話にならないからな頭に叩き込んで置けよ
『自分以外の全てを殺し尽くせ』これがこのゲーム最大のルールだ。
 ルールであると同時に勝利条件でもある、これが満たされた時キミの勝利が決定する。
 ちなみに文字通り全員を殺す必要は無いぞ、隠れていたら全員が勝手に自殺したって事になればキミの勝ちだ。
 で、敗北条件は『君の死』のみだ。簡単だろ?
 ちなみにこのゲームの舞台は島だが、島から脱出しようとすれば確実に射殺する
 ・・・この場合も敗北条件を満たすからキミの負けだ、逃げ出す事の出来る確率はほぼ無いと言ってもいい
 まぁ0%ではないが・・・この島の沖2qを数十隻の潜水艦が見張っている
 ・・・発信機が取り付けられたキミ達ではまず脱出不可能だろう
 それでもトライしてみるという勇者は是非トライしてくれたまえ、こちらも遠慮なく射殺させてもらうよ。

 ただし、ちょっと海を泳ぐだけなら射殺はしない
 敵から逃げていたら海に飛び込まなきゃならない状況になるかもしれないしな
 まぁ岸から2,30mも離れたら殺すからそのつもりでいろよ。ここまでのところで何か質問あるか?」


皆が押し黙っていた・・・自分も今何かを話せるような状況ではない
カノン「それ以外なら何をしても構わないのか?」
カノンがまた質問をした
管理者「あぁ、これ以外にルールは無い」
カノン「それならお前達を殺してもいいという事か?」
殺気を込めた声でカノンが聞く
管理者「やれるもんならな、それでこのゲームが終了する訳ではないが」
男は不敵な笑みを崩すことなく答える
カノン「・・・・・・続けてくれ・・・・・・」
管理者「ん、それじゃ続きだ、次はルールではないがゲームの開始の仕方、及び注意やアドバイスなどを語ってみようか。
 まずキミ達はこれからくじ引きで5つのグループに分けられ、それぞれ別の場所に連れて行く。
 まぁこのまま解散にするとすぐに決着がついて面白くないからな
 で、その後もう一回くじ引きをして順番を決めたらこちらで用意したバッグを持ってゲームフィールドへと出てもらう。

 そのバッグには簡単な地図と磁石それに食料・飲料水・武器・その他日用品が少し、あらかじめ入れてある
 食料は全てパンだが、バターロールや食パン・アンパン・あげパンなどいろいろ用意してある。
 これらの内ランダムで2つが入っている、さらに水分もただの水道水から六甲のおいしい水やコーラなどもある、
 まぁ楽しみにしてくれ。ちなみにさすがに食えない物は1つもまじってないから安心しろ。

 んで、肝心の武器だが、これもランダムだ
 おなじみの銃器の類や刃物なんてのもあるが、中には明らかにハズレに見えるものも有るだろうが
 君たちの知恵と勇気と運で乗り切ってくれ。
 さらに武器が悪くてもあきらめる事は無い、救済措置としてこのフィールドにはいくつか武器が隠されている
 ある物は建物の中に隠されていたり、林の中に置いてあったり
 と結構多くの武器が隠されているから暇があったら探してみるのも面白いぞ

 ちなみに難しい場所に隠してある武器ほど威力が高い
 支給される武器をはるかに凌ぐ威力があるからむしろはじめは宝捜しをしたほうがいいかも知れんぞ。
 っとこんなところか、それじゃ質問が無ければ最初のくじ引きを始める」

全員が無言でそれに従っていた。

もうこれに抗う術は残っていないのかもしれない


98番 ピート・ロス 死亡
【残り99人】








第3話「闇夜」

??「くそっ何なんだよこれは!?」
小さな声で呟くがどうにもならない事は解っている
先ほどピートが撃たれた光景が思い浮かぶ・・・何もできなかった・・・
あの時、自分が死ぬのが怖くてピートに駆け寄る事すらも出来なかった
周りは闇 森の中を一人で走っている

ガチャッ ガチャッ ガチャッ ガチャッ
??「ちっ」
腰につけていた鍵束の音が森の響く
??「こんなんじゃすぐに殺されちまう」
慌てて鍵束を外すが、『女の子の信頼の証』であるこの鍵束を捨てるのははばかられた、いろいろ考えた結果目立って大きな木の枝にかけておくことにした
??「必ず・・・生きてこの場所に・・・」
誰にとも無く誓うとその場を離れた
??「まずはクリスと女の子達を守らねーと」
アレフ・コールソン(24)はそう呟きながらまた森の中を駆け出した


【残り99人】







第4話「ゲーム開幕」

カノン・ヒルベルト(74番)は全体的にかなり遅いスタートとなった。
カノンが連れて行かれた建物の中でラスト・・・だから建物の中で武器の確認が出来た
カノン「清隆・・・お前は何を目的としているんだ・・・歩君が僕を殺さなかったからか?」
誰にも聞こえない声で呟く
カノン「武器はエアガンか、弾は麻酔針
 ・・・清隆・・・
 お前はまた僕に無様な操り人形になれというのか?歩君の成長のために・・・いいだろう僕は一般人を殺さない
 その誓約は守る・・・麻酔で眠らされればその者の末路は決まっているような物だが・・・運がよければ生き延びる」
しばらく考え込んでいたカノンが再び立ち上がった時、目に宿る光には陰りがあった

虚ろな目のまま建物を出て森の中へと消えていく
カノン「歩君・・・再び僕を止めることが出来るのか?」
小さく呟くと視界の端に人影を捉えた

??「ダ・ダレ?」
目の前の女は身の丈にも近いハンマーを構える・・・が、
パン
??「う・・・ふぁ・・・」
バタッ
正確に心臓付近に打たれた麻酔により女はその場で眠ってしまった
カノン「運があればまた目覚めるよ・・・・・・歩君・・・まず一人目だ・・・早く僕を止めろ」
そう呟くとまた歩き始めた

カノンの立ち去った後、女の拍動が徐々に弱まっている
・・・そのまま通常の麻酔では考えられないほどにまで低下を続ける・・・
そして文字通り眠るように息を引き取った

・・・その頃・・・
あの舞台の上にいた男が電話を受けていた
管理者「はい、順調です・・・はい・・・はい・・・・・カノン・ヒルベルトですか?はい、思惑通りです
銃の細工には気付いていません。全て神の敷いたレールの上を走っていますよ・・・はい」
プツッ
管理者「くっくっくっ せいぜい踊れ カノン・ヒルベルト」


99番 ルーティ・ワイエス 死亡
【残り98人】








第5話「見落とし」

もともと知り合いの集団は自分を含めて12人
5つのグループに分かれるのなら3,3,2,2,2という結果は妥当なところだろう

だがそれは意図が絡んだ場合の話
くじ引きという手段を選んだにも関わらずこの結果
偶然といえばそれまでだが、何かしら裏工作があると思っても不思議ではない

自分とルーティさんとゼファーさん

ルーティさんは・・・大多数の人たちと同じように非常に動揺している
周りをほとんど見ず、目を合わせようとなどしない
近寄って話し掛けたいところだが・・・もっと不安にさせる出来事が起こるだけ
勝手な移動や会話は禁止されている
ココで無駄に命を投げ出す事に意味はない

幸い自分の順番はルーティさん出発の直後
出来るなら追いかけて合流したいところだ

ふとゼファーさんを見る
軽くルーティさんのほうにアゴを
僕が小さく頷くと・・向こうも頷く

≪次、ルーティワイエス 前に出ろ≫
音響機器が嫌に耳に響く
ルーティさんはその声にびくびくしながらも何とか前に出ると妙に大きな鞄を受け取る
そして銃器で追い立てるようにして建物の外に放り出された


間隔の5分間がもどかしい


この建物の参加者は既に半分ほど
他の建物ではココよりも早く開始したところもあるし、逆もあるらしい



≪次、マクシミリアン・アーセニック(3)出ろ≫

すぐに前に出ると鞄が渡される
ここにいる兵士の顔を軽く見回す
そのほとんどが変な自信に満ち溢れているようだ
(ホント・・・何考えてるんだろ・・・)
そう考えながらもこの場では何も行動は出来ない
言われたとおりに建物の外へと早足で歩き出す




暗い森の中をひた走る
月明かりはあるものの、木々に遮られているせいで足元はかなり暗い
下草を踏みつける音が響くがあまり気にしても居られない

『5分間隔での出発』

ある一定方向にいつもの速さでルーティさんが歩いていれば追いつくまでに約1分半
ただし正確な方向がわからないからもっと時間がかかるかもしれない
でもルーティさんはかなり警戒しながら歩いているはず
きっと・・・どこかで追いつくはずだ

マックスは自分の感覚を最大限に使う
自分とは違うリズムの足音を
自分とは違う衣擦れの音を
自分とは違う息遣いを
どんな小さな音でも聞き漏らさぬように と

・・・だが、それは動かない物を感知する事は無い・・・
・・・すでに事切れてしまったヒトは音を発しない・・・
・・・故に、ルーティが倒れている近くを通っても・・・
・・・・・気づく事はありえなかったのである・・・・・




十数分が過ぎた
いまだルーティらしき人影は見当たらない

もしかしたら根本的に方向を間違えたのかもしれない
建物から出たときの様子から大体の当たりをつけていたのだが・・・
もしかしたら一気に方向転換した可能性も否定できない

だが、もしかしたら恐くて走って逃げているのかもしれない
その場合はなかなか追いつくことは出来なくなってしまうだろう


・・・
とりあえず一息つこう
ココに来てはじめて鞄を空ける
武器を確認・携帯し、精神を集中し始めた


【残り98人】


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