第10章「恐怖の・・・」



マックスさんはどんな本がお好きなんですか?
フローネが箸を止めマックスに訪ねていた

夕食中、休憩時間など何をしているかという話でうっかり
暇な時は部屋で本を読んでいます
などと答えてしまったもんだからフローネにさらに問い詰められたのだ

あー・えーと、基本的には漫画です
フローネの表情が少し暗くなったのを見てフォローを入れた
あと、小説も結構好きで読んでるんですよ
フローネがよくハードカバー本を読んでいるのを見た上でのフォローだった
へー小説ではどんなジャンルがすきなんですか?
フォローが成功したようだった、まぁまるっきり嘘ではないが
えっと封○演義みたいな歴史物とかあとリ○グみたいなホラーですね
言い終わった後フローネが固まった

ガタッ
と、とつぜんフローネ以外が立ち上がる
ごちそうさまぁっ
俺もそろそろ部屋に戻るかな
マックスとフローネ以外は部屋に戻っていく
ルシードはティセの手を引きながら席を離れマックスの肩に手を置くと
頑張れよ
とだけささやきみんなと同じように食堂を後にした
このときはまだ想像もつかなかった・・・この後何が起こるかを

バンッ
ほんとうですか!?
さっきまで固まっていたフローネが机を叩きながら聞いてきた
すでに他の人たちが出て行ったのも見えていないようだ
え・えぇ、まぁ
気迫に押され、生返事しか出来なかった

私もホラー大っ好きなんですよぉ、よかった〜わかってくれる人がいて
皆さんなかなかいい反応をしてくれないんですよねぇ

・・・まずい
心の中でそう呟いた
さっきの言葉に嘘があるわけではない
だが決してホラーマニアという訳ではない
だが目を輝かしているフローネを前に今さら撤回は出来ようはずも無い
最近ではどんな本をお読みになりました?
さらにフローネは問いかけてきた
さ・最近はあんまり惹かれるのが無くて
苦しい言い訳を試みたが
あ、じゃぁ貸しますよ、読んでみません?

どうやら底なし沼へと足を下ろしてしまったようだ
さっきの言葉も「課しますよ」と聞こえた
クエッションマークがついているのに、断る道は用意されていない

じゃぁ私の部屋にきてください
返事をしないうちに全ての話が進行し
フローネはすでに階段を上り始めていた



あ、ほらほら、これなんかどうです?『恐怖の闇鍋パーティー』
マックスはすでにフローネの部屋にいた
初めて部屋に入ったというのに気分は死刑囚さながらだ
あとこれとか、これも、これなんか凄いおすすめですよ、あと・・・
目の前に次々と本が積み上げられていく
この本棚のどこに入っていたのかと思わせるぐらいの量が積んである
そ・底無しか・・・
ん?どうかしましたか?
いや、なんでもないです
あ・そーだ、マックスさんホラー映画って見るほうですか?
フローネが目を輝かせながら訪ねてくる
マックスは心を鬼にしてこれ以上傷が広がるのを食い止めようとした
いえ、映画ってほとんど見ないんですよ
そうなんですかぁ・・・あ、でもこれなんかすごく良いですよ
『赤い食卓ケチャップまみれの恐怖』あと『恐怖の蹴鞠歌』も


否定しても攻められるのかよっ!!
口に出して突っ込む勇気は無く心の中で叫んでいた
・・・これってなんだか知らないけどルーティちゃんがくれたのよねぇ
まだ説明は続いているようだ
何とか話題を変えないと自分の部屋がホラーハウスになってしまうと思った
ん?同じ作者の作品がそろってるんですね、えーとニコラス・ピー 
そうなんですよ、私この人の大ファンなんです!!
完全にヤブヘビだったらしい
この状況から逃げ出す事は不可能そうだった

先ほどのルシードさんの意味深な言葉が今になって思い出された
そしてそのまま走馬灯のように今までの記憶が流れていく・・・
・・・さん?マックスさん?
え?あ、はい?
私の話ちゃんと聞いてくれてました?
う・うん勿論
本当ですかぁ?私なんて言ってましたかぁ?
まずい・・・性格が完全に変わっている・・・何とか誤魔化すすべ術は・・・
一瞬の思考でたどり着いた答えは自殺にも等しかった
が、誤魔化さない訳にも行かない
えっと、ちょっと言葉に出来ないですけど、僕もその本を読んでみたくなったというか・
ほ・ほんとですか?あ、じゃ、好きなだけ持っていってください
思ったとおりの展開となってしまった、が、必死の抵抗を試みる
でも汚すと悪いので少しだけにしようかな・・・
あ、大丈夫ですよ、これは読む用で保管用が別にありますから

・・・
さようなら母さん・・・僕は逝きます
どうも・・・ありがとうございます

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