CLANNAD「杏2 Sneaking Mission」


杏「ほら朋也、ちゃんと隠れて」
言われて首を引っ込める
杏は塀に張り付きながら角の向こうをうかがっている
それを横目に見ながらオレンジジュースのパックにストローを刺した
杏「あー私も喉渇いた〜   ズズズ」
つられるように杏もオレンジを飲む
だが、不思議な事に俺の手元のパックは消失していた
朋也「俺の・・・」
杏「いーじゃないの 減るもんじゃ無し」
朋也「減ってる減ってる!紛うことなく減ってるし!!
杏「ズズ・・ズ・・・あ、無くなっちゃった 捨てといて」
朋也「うわっ!鬼!!
杏「ったくジュース一つでセコイわね・・・って曲がったわ、行くわよ」
そういうと中腰のまま塀沿いに進む
(や、怪しいから、職質でもされそうだぞ)
逃げる事も出来ない俺は仕方なく後に続く
次の角で杏は身を隠し、先をうかがっている


そもそも、こんな事になったのは、昨日こんなことがあった為だ・・・
杏「朋也、ボーっとしてないで行くわよ」
朋也「へ?や、今から回想シーンに入るところなんですが?」
杏「何ワケ解らない事言ってんのよ ほらっ」
朋也「引っ張るなって・・・ったく」

俺達が尾行している対象は椋
勿論椋1人ではなく脇には件の男も居る
すなわちあのカップルのデート しかも頭に『初』がつく
そしてお節介根性満載のお姉さんはこう言うわけだ

『温かく見守ってあげましょう』と

その言葉を発して尾行を決行する女は世界に5人と居まい
そしてその筆頭は間違いなくこの女だろう
いくら影ながら見守ると言う言葉があるとはいえ
本当に影から見守る奴がいるか?
・・・いや、いたんだが・・・
とにかく俺は興味がないわけではなかったのだが
こんなコソコソしながら付いていくとは思っていなかったのだ
俺の時はあんなに堂々とやってきたというのに

んで、待ち合わせの1時間も前から呼び出され
今に至る訳だ



朋也「おぉっと?アレはゲーセンじゃないか 椋もそわそわとそちらを見ている〜
   ん?男も気がついたか?・・・・しかし歩調はゆっくりになったものの素通り!!
   せっかくの得点チャンスを逃してしまった〜〜残念ニッポン!!」
杏「やかまし!!なーに声に出してんの?イカレタ?」
朋也「いや俺が解説しないと伝わらないだろ?」
杏「だれに?」
朋也「・・・さぁ・・・・・・」
杏「・・・」
朋也「・・・」
杏「・・・・・・・・・」
朋也「そんな『救急車呼ばなきゃ』って顔をするな!」
杏「そんな事思って無いって、既に手遅れだと思ったから呼ぶ気は無かったわよ」
朋也「なお悪いわ!
杏「ったく、そんな事はどうでも良いのよ」
朋也「良くはねぇ!」
杏「ほら、次 角曲がったわよ」
朋也「へいへい」
この女には何を言っても無駄なのか・・・
渋々と後に続く
杏「って椋!?

椋「お姉ちゃん、何をしてるんですか?」
杏「こ・これは・・・そのねぇ・・・」
・・・ココは・・・先に逃げ――
杏「ちょっと待てぃ」
朋也「ぐぇ」
ノールックで奥襟を掴まれた!?
椋「朋也さんも、これ以上続けるなら勉強見るの止めちゃいますよ?」
朋也「う・・・それは、困るな」
うむ、困る。最近は何とか杏に追いつこうと勉強を教わっている
一年からほとんど勉強をしていないのでほとんど無謀なのだが
それでも椋は嫌な顔一つせずに付き合ってくれていた
椋「お姉ちゃんも、帰って朋也さんのを見てあげてください」
杏「うーん、でも今日は家に誰もいないからねぇ」
椋「静かで集中できるから良いじゃないですか
  帰って二人きりで・・・・・・ってちちち違いますよ!?
杏「う〜〜ん?」
朋也「何が違うのかなぁ〜?」
椋「ああああのそそそそその、だだだから、そそそそそうじゃなくって
朋也「な〜にが」
杏「そうじゃないのかなぁ?」
椋「わわ私が言いたいのはそそその・・
朋也「聞こえんなぁ〜〜?」
杏「妹を苛めるんじゃないわよ!!」ズビシッ
朋也「イタッ って杏から始めたんじゃないか!」
杏「そだっけ?まぁそんな事はどっちでも良いのよ」
(・・・そうですか・・・)
杏「まぁばれちゃしょうが無いわね、戻ろっか 朋也」
朋也「あぁ そうだな、で・どう?今夜?」
杏「う〜ん、考えてあげても良いんだけどなぁ〜」
朋也「頼むよマイハニー」
杏「それじゃ今夜は記念日ね」
椋「そーゆー会話は私を間に挟まないでやってくださ〜〜い!!
そういうと顔を真っ赤にしながら駆けていった
椋が見えなくなって
朋也「なぁ杏?」
杏「ダメよ」
朋也「うわっ即答!?」
杏「今日はダメー」
朋也「既にそういわれ続けて数ヶ月」
杏「だって・・・ねぇ・・・・・・んじゃ私と同じ学校に入れたらね」
・・・むぅ・・・確か今日は誰もいないらしいよなぁ・・・
ボタンなら俺が本気を出せばどうとでもなるし・・・
杏「私が本気を出せば朋也もどうとでもなるからね」
そうなんだよなぁ・・・
朋也「って!心読むなよ!!」
杏「だって顔に書いてあるし」
朋也「う・・・」
杏「ねぇ?」
朋也「ん?」
杏「どうしても・・・その・・・したい?」
朋也「う・・・まぁ・・・そりゃぁなぁ」
杏「・・・」
朋也「・・・」
杏「・・・・・・」
朋也「・・・・・・」
杏「・・・・・・・・・」
朋也「・・・・・・・・・」
杏「・・・・・・・・・・・・」
朋也「・・・・・・・・・・・・」
杏「・・・・・・・・・・・・・・・」
朋也「・・・・・・・・・・・・・・・」
杏「  」
朋也「へ?」
杏「やっぱりダメーーー!!」
朋也「なにぃ!?ここは『(弱々しい声で)いいよ』とかじゃないのかぁ!!」
杏「ま・まぁ私たちには早いわよ」
朋也「うお〜〜〜〜」
杏「んじゃ東大は入れたら考えてあげるわよ」
朋也「絶対無理!しかも『考えただけ』っていう逃げ道付き!・・・しかもよく考えるとさっきより難易度が上がってる!?」
杏「ちっ」
朋也「何だその舌打ちはーーー!?」
杏「細かい事気にしな〜い、だいたい日取りを決めてするもんじゃないでしょ」
朋也「う・・・まぁそうだが・・・」
杏「だったらいつまでも女々しく騒がない! いつかそーゆー日も来るわよ」
朋也「・・・期待しないで待ってるよ」
杏「あはは、そーしてくれると助かるわ・・・(ゴメンね)・・・」
朋也「キス、ならいいか?」
杏「へ?家もうすぐよ」
朋也「あっちは待たなきゃいけないんだから、こっちは・・・な」
杏「もう、しょうがないわねぇ」


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