出立


先の戦闘が終わってから僕達5人は会議室に集められた
普段は教官達の会議に使う場所であるため僕は始めて入る場所だった
そこには僕達の他にゼファー先生とルシード先生とバーシア先生が座っていた

しばしの沈黙の後ゼファー先生が口を開いた
さてと・・・何から話せばいいのか・・・
順を追って・・・できれば全て話してくれ
フラウドがまっすぐゼファー先生を見つめて言う
うむ・・・まず悪霊発生件数が増加していることは知っているな?
頷く
それの原因となっているのが、かつてマックスの戦ったアイザックだった
え!?でもとーさんが倒したって・・・
思わず口に出してしまうが、既に答えを用意していたゼファー先生が答える
あぁ、だが倒したときには既に遅かったのだ。アイザックは各地を巡り
破壊活動を続けてきた。公式発表はまだだが、間違いなくそれが原因とされている


そしてエミュとミラがココに来た次の日・・・マックス達はある街へと向かった
カニューレ・・・ココでマックス達はある新しい敵と遭遇した

『意思を継ぐもの』ってやつか?
フラウドが先回りする
そうだ、今回と同じように最後には砂となって消えたそうだ。
そしてその敵は何かをしている・・・何か・・・詳しくは解らないが
・・・だが良い事である筈がないだろうな

詳しくは解らないって、何となく解るって事か?
そうだな、一応今考えているのは何か・・・強大な魔物の召喚と考えられている
そんな物・・・どうしようってんだ?
さぁな・・・ただアイザックは人類の抹殺を目標としていた・・・今回も同じかもな

ゼファーは少し溜めてから語りだした
最近の悪霊の大量発生、これはアイザックの行なってきた破壊活動に起因する
そもそもアイザックが破壊してきたのは何か? それは一種の結界だった

「結界?」
そう、それは誰が張った訳でもなく自然にそこに存在していた代物
我々が『悪意』と呼ぶものを昇華するための結界
それが破壊されれば『悪意』は充満し、ただの霊が悪霊へと変化しやすくなる

「・・・」
今はこれだけだ。だが、『悪意』が完全に漏れているにしては被害が少なすぎる
よって・・・『悪意』はどこかへ流れているものと推測されている
何のために集めているのか・・・おそらくは・・・何かの召喚・・・と考えられている

どうにも・・・『おそらく』とか推測が多いな
仕方あるまい、全て憶測だ
フラウドの突っ込みにゼファーが苦笑する
今『悪意』が流れる場所は調査中だ、だから今は『悪意』の元を出来るだけ断つ
今後は、お前達にもその任務についてもらう事になる

ずいぶんと急だな、後期日程ってのは良いのか?
安心しろ、元々この任務が後期日程だ
全部予測済みって訳ね
いや、今回のこの騒動は完全に予想外だった、相手は予想以上のスピードで動いている
予定より少し早いが、もう明日にはココを発ち、任務に当たってもらう事になる

ゼファーはそこまで言うと全員の顔を見回した
いいか?
ゼファーの確認に一斉に頷く
では、今日はこれで解散とする。各自旅の準備を整えておけ



そして翌日
エミュら5人とルシード、バーシア、ゼファーが校庭に集まっている

マリカはルシードにくっつき話をしていた
お父様ぁ
昨日決めたんだから泣くんじゃねーよ
でもぉ、お父様は来ないなんて知りませんでしたぁ
しょーがねーだろ、ゼファーの言う事をちゃんと聞けよ
うぅ・・・
ったく・・・
ルシードは頭を少しかくと用意しておいた物をマリカに渡す
ほれ

マリカは渡された細長い包みを開けた
杖?
最近開発した杖だ、こいつで頑張ってくれ
・・・
マリカは無言でそれをギュッと握り締めて力強く頷いた

アイラ、しっかりやって来るんだよ
コクッ
ん、それじゃこれ持っていきな
ン?
一応最新型だからね、大事に使いな
フルフル
ん?欲しくないの?
フルフル・・・お母さんのは・・・
あーあーあー、あたしのはいいのよ、今の気に入ってるんだから
・・・
遠慮せずに貰っていきな
・・・コクッ

じゃあな親父、短い間だったが・・・世話になった
・・・待てフラウド、聞き流しているのか・・・そうでないのか・・・
ん?
俺はお前らについていくぞ
は?
俺はお前らの指導をする為に一緒に旅をする予定だ
なにぃ!?
何だ、聞いていなかったのか?
初耳だ!!
ふむ・・・そう言われてみればお前にだけは言ってなかったかもな
何だよそりゃ?じゃ俺は感動の別れは無しか?
無論だ
それじゃ餞別とか・・・
あるわけが無かろう
ふぅ・・・なんてこったい
なんてな、お前だけ無いのは不公平だろうから不本意ながら用意しておいたぞ
そう言ってゼファーは何かをフラウドに投げる
お、サンキュー、さすが親父・・・ってこれは―
いい色艶だろう?どの品評会でも大賞を総なめした素晴らしい石だ
この曲線といい この重みといい この艶といい・・・心和む事この上なし

・・・いらん
そうか・・・まぁお前にはまだ早いか
ってか親父が先行き過ぎだ
ほら、こっちが本物だ
ったく、小ネタは良いからさっさと出してくれよな・・・杖か
マリカのと同型だが効果は違う、こっちは回復・補助魔法を強化してくれる
サンキュ
なに、俺としてはお前達でこの武器の性能を確かめられる
んだよ、俺たちは実験台か?
最新鋭の武器を使えるということだ、あまり気にするな
物は言い様だな


そんな6人の様子を少し離れた場所から見ている2人
エミュとミラ
その顔は少し悲しそうだった

エミュ、ミラ
えっ?
だが突然後ろから声をかけられ驚いて振り向く
お父さん・・・お母さんも
そこにはマックスとフローネが立っていた
悪い、遅れた
ごめんなさいね、もっと早く来るつもりだったのよ
二人とも何か言葉を出そうとしたが
それよりも早く両目から涙がこぼれ落ちた







アカデミーの先生やマックス達に見送られ出発する
移動はマックスの召喚した鳥獣だった
一瞬でアカデミーは小さくなり後方へと流れていった

エミュとミラの首には宝石がぶら下げられている
マックス達の用意した物
二人は大事そうにそれを握り締めながらアカデミーの方向を見つめていた


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