CLANNAD「風子2 海へ」


海へ行く
そう決まったのはそんなに不思議な事じゃない
もう夏休み真っ盛り
他の3年はともかく俺は受験なんてさらさら考えていない
風子は諸々の事情で1年だからまったく問題ない

そして風子はヒトデが好き
ならば海にも行きたいという流れになることは当然だろう
俺も風子と海に行ってみたいと思う


でも学生という身分では制限もある

まずお金がない

お金がない状態で海に行こうとするとどうすればいいのか

一つは近く・金もかからない海に日帰り
だがそれでは内容もしょぼくなってしまう

そしてもう一つの方法は・・・・・・


祐介「キミと会ってまだあんまり長くないが・・・なんとなくキミの人となりがわかった気がするよ」
朋也「はは、すみませんね、お邪魔しちゃって」

・・・・・・大人に便乗する事である

俺と風子は公子さんと祐介さんを海旅行に行くよう焚き付け、それに一緒に来たのだ

祐介「確かに風子ちゃんはキミ1人と小さな海に行くよりは
   『おねぇちゃん』と一緒に海に出るほうが喜ぶだろうからね」
朋也「よく解ってますね、俺個人としては微妙ですけど」
祐介「まだあの子は疎いだけだ、いずれ変わるさ」
朋也「だといいんですけど」

ちなみに女性陣は着替えに言っている
俺と祐介さんで場所をとり
着替えて――といっても中に着てきたので上を脱ぐだけだが――パーカーを羽織るだけ
女性の身支度はずいぶんと時間がかかる
ただでさえ緊張するのにこの待ち時間が辛い

朋也「ちなみに」
祐介「?」
朋也「さっき言ってた『おねぇちゃん』と一緒にっていう部分
   ちゃんと風子の秤には祐介さんの存在も加味されていましたよ
   まぁやっぱ俺としては微妙なんですが」
祐介「ま、らしい(・・・)な」


・・・にしても・・・


朋也「長いっすね・・・」
祐介「まぁ・・・こんなものだ・・・」
朋也「はぁ、そうっすか・・・」
祐介「・・・まさか緊張してるのか?」
朋也「いや!!・・・・・・してます」
祐介「今のうちに言っておくが、あんまり驚くなよ」
朋也「へ?」
祐介「あと褒めるのは危険かもしれない」
朋也「ナニユエ?」
祐介「来れば解る」
朋也「はぁ」
(褒めて欲しくない状況ってどんなんだよ・・・)


公子「お待たせしました」
朋也「あ、公子さ――」
(!?)
朋也「ふ・風子・・・?」
風子「なんですかその目は!失礼です!!」
(なんで・・・)
朋也「・・・あ・・・その・・・」
風子「風子だって好きで着ている訳じゃ――」
(なんで限りなくスクール水着っぽいんだ〜〜〜〜〜)
確かに胸に『6-3 ふうこ』などというプリントは張っていない
だが紺色のワンピースはどう考えてもそれを思わせる
つーかその実は名札を剥がしただけなんじゃないかとも思える
(いや・・・しかし・・・)
朋也「確かにコレはコレで・・・いや、むしろコレが似合うのか!?」
風子「それは風子にとっては褒め言葉でも何でも無いです!!
(確かに・・・)
朋也「・・・風子にビキニなんて似合わなかろう
   ・・・だがこのワンピース(紺色)との一体感はどうだ?
   これぞまさしく『風子の水着』なんじゃなかろうか
   ・・・まぁ聞かれたら怒られるだろうが・・・」
風子「完全に声に出てます><
朋也「なにぃ!?しまった!!」
公子「くすくす」
祐介「ったく」
風子「すさまじくショックです!」
朋也「あ・・・まぁ、似合ってるよ」
風子「慰めになってません><」
朋也「じゃ似合ってないよ」
風子「それはそれで少し傷つきます!!」
朋也「複雑だなぁ」
風子「女の子というのはそういうものです。とりわけ風子は繊細なんです」
朋也「それはおいて置いて」
風子「放置ですか><」
朋也「海、行こうぜ せっかく来たんだしさ」
風子「・・・・・・」
朋也「ほら、ヒトデとかいるかもしれないぞ」
風子「なに突っ立ってるんですか!?早く行きましょう!!
(早っ!! 俺はヒトデ以下!?)
公子「お気を付けて〜〜」
祐介「しっかりと風子ちゃんを守れよ」
アダルトチームの声援を受けて海辺へと移動する



そして



ぽわ〜ん

朋也「おーい?風子」
風子「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
朋也「風子?ふうこ?FUUKO?」
風子「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
足首ぐらいまで海に入った状態でしゃがみ込み、足元にいるものを見ている
そしてそのまま遠い世界へ旅立たれた

(こりゃ何言っても無駄か)
かといって悪戯する気にもならねぇしなぁ
っていうかこの状況で悪戯すると・・・
後ろをチラリと伺う
公子・祐介「・・・」
どうするのかと興味津々のご様子だ
この状況で全てを敵に回す勇気は俺には無い
っていうか何を期待しているんだ?
キスでもしろと!?
また後ろを見ると
・・・・・・
二人とも人差し指で自分の口を指している
・・・・・・
二人は何を考えて・・・や、待てよ?
今なら家族公認
この海は人が多く誰も他人の事なんて見ちゃいない
堂々と・・・・・・・・・行ける!!

朋也「風子?」
風子「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
朋也「キスするぞ?」
風子「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
意識が戻っていない事を確認するとヒトデを挟んで風子の前にしゃがむ
と、引き波でヒトデが俺のほうに動いてきた!
朋也「うわぁ」
慌てて回避
いくらなんでも実物に触れたくは無い
そしてヒトデを微妙に避けながら風子の顔を覗き込む
朋也「風子・・・」
そして顔を近づけ・・・
さっぱーん
朋也「ぅわぶっ」
風子「わっ」
あまり高くない波だったが、かがんでいた為に海水が俺の顔をなでていく
そして俺の鼻の穴へ海水が浸入してくる
(がぁ)
思わず立ち上がってしまう
風子「何してるんですか?」
朋也「か・海水が鼻に!!」
風子「朋也の顔が目の前にあったような気がします」
朋也「気のせいだ」
風子「そんな訳有りません、この周りを常に厳しくチェックしている風子が間違える訳有りません」
朋也「何を言っているんだ?ヒトデがいたらしゃがんで覗くのは当然だろう?そしたら顔も近くなるさ」
風子「それもそうですね
(とても扱いやすかった!!)
二人の待っているほうをチラッと見ると
・・・
二人ともくすくすと笑っていた
(カッコ悪りぃ)


先ほどの波でヒトデも流されていったらしい
風子「さて、戻りましょうか」
朋也「海の存在価値はヒトデのみかよ!?」
風子「はい それが?」
朋也「せっかく来たんだから泳ごうぜ」
風子「嫌です」
朋也「なんで」
風子「ヒトデがじっくり見れません」
朋也「ふ〜〜ん」
風子「な・なんですかその目は?そこはかとなく失礼です」
朋也「泳げないの?」
風子「し・失礼です!!風子はかつて陸のヒトデと呼ばれた事もあるんですよ!!
(意味が解らない弁明だった!!)
朋也「それは泳げるという意味なのか?」
風子「そんな事は問題では無いのです!!
朋也「無いのかよ!?」
風子「とにかく風子の泳ぎをココで見せるまでも有りません」
朋也「ほら、じゃ練習しようぜ」
風子「だから泳げないといってる訳じゃ」
朋也「いーからいーから、俺が教えるって」
風子「本当ですか?」
朋也「あぁ」
風子「溺れそうになったら助けてくれますか?」
朋也「あぁ」
風子「息継ぎとか覚えられますか?」
朋也「あぁ」
風子「ヒトデを見つけたら素手で捕まえてくれますか?」
朋也「嫌」
風子「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
朋也「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
風子「何で引っかからないんですか><
朋也「いや、予想できるから」
風子「その物言いは風子が単純だといってるようです」
朋也「や、その通りだから」
風子「プチショックです><」
朋也「いいから行くぞ」
手を引っ張って沖へと移動する
風子「あ・ま・心の準備が〜〜」
朋也「大丈夫だ、人間やろうと思えば何とかなるものだ」
風子「そんな〜〜〜」



かなり長い時間海で遊び、日が西の方に移動してからようやく砂浜に戻る



朋也「ふぃ〜〜疲れた」
風子「地獄の特訓でした・・・」
朋也「風子は俺にしがみついてただけだろ!!
風子「あんな深い場所で手を放すからです」
朋也「深いといってもお前の身長以下だぞ・・・」
風子「それでも波が来れば風子は沈んでしまいます」
朋也「それも慣れだよ、最後には波がきても平気だったろ」

公子「お疲れ様」
祐介「お帰り」
朋也「あれ?二人は泳がなかったんですか?」
公子「行きましたよ、すぐに戻ってしまいましたけど」
祐介「こっちは君たちほど若くないんだからな」
朋也「はぁ」
祐介「こんなビーチでキスしようとするほどはね」
朋也「はっ!?」
(忘れてた!!)
風子「キス・・・?」
朋也「さぁて時間も遅いし宿に戻らないと」
祐介「時間はまだまだ大丈夫だぞ」
風子「風子に何をしようとしたんですか!?」
朋也「や、何もしてない」
風子「嘘です!聡明な風子には全てが解っています」
朋也「解ってるなら聞く必要は無いな」
風子「あぅ・・・」
朋也「さーて質問も無いみたいだし戻りましょうよ」
風子「ぷち最悪です!!」
公子「二人とも仲が良いですね」
朋也「まぁね」
風子「いまとっても口論中でした><」
公子「喧嘩するほど仲がいいってことですよ」
朋也「そうそう」
風子「なんだか・・・美味く丸め込まれているような気がします」
(その通りだからな)
朋也「さて、明日も帰る前にヒトデ探すか」
風子「はい!!!
(完全に丸め込まれていた!!)



こうして二人きりで無い海旅行は幕を閉じた
次の日もヒトデを見付けた風子が旅立ったのは言うまでもない事である
そして俺がそれに悪戯をする事もある意味運命だったとも言えるのであった
風子「ぷち最悪です!!!



続く・・・のか?


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