☆月△日 ユキの日記


しばらく日記が滞ってしまいました

サボっていた訳ではなく、書ける状態に無かったからです

事の始まりは3日前、神殿に呼び出された事でした・・・




「ユキか、よく来た これで全員そろったな」
案内された部屋に入るとランディアさんと、4人の人たちがいました
冒険者のようですが面識は有りません

それれは他の人たちも同じようで、おしゃべりなんかもしてません


それからランディアさんの説明がありました
簡単に言うと『クラン=ベル』に行く使者の護衛

人選に関して聞いてみた人がいましたが、言葉を濁して教えてはくれませんでした




道中ははっきりいって何事もありませんでした
何故こんなに護衛が必要なのかも良くわからないほどです

メイジ/セージでエルダナーンのランシャンさん
シーフ/レンジャーでヒューリンのミーシャ君
シーフ/シーフでヒューリンのジョディーさん
ウォーリア/サムライでヒューリンのユウタ君

皆話してみると気が合い、楽しく話をしたりしていました

・・・でも・・・
・・・ランシャンさん以外とはもう話すことが出来ません・・・




『クラン=ベル』に着いてもまだ普通でした
ある程度の活気があり、とても何かあるとは思えないほど

でも、神殿に近付くにつれその異常な状況が解ってきます



明らかに薄れる人通り

町の人はまるで
『そこに道がある事をだれも知らない』かのように別の道に折れていきます

そして神殿前に来た時
使者の人たちがごく自然にその前を通り過ぎてしまいました

一瞬何かの冗談でもしているのかと思いましたが、違いました
彼等には神殿が見えていなかったのです

あれほど大きくて存在感の有る神殿が
神殿に行く事を目的としている人にさえ、知覚させない状態にあったのです


これ以上は危険だ
私たちはそう判断しました

もともとの任務は状況の確認と、ごたごたの解決

でもこの状況はただのごたごたなんかじゃ有り得ません
どう考えても人外の・・・おそらくは魔の物が絡んでいます

必要なのは使者よりも、これを処理できる強い冒険者

5人のうち2人はLv3だけれども他はLv1
対応できるとは・・・とても思えません

ですが引き返そうとする私たちを、突然何かが取り囲みました

「くくく・・・また実験台が現われたな・・・」
プロラと名乗る魔族が現われ、私たちは妖魔によって襲われてしまいます

必死で防戦するも、まったく対応できません
私は無力でした

見える範囲に必死で結界(プロテクション)を張っても、私の後ろで誰かが襲われてしまう
気付けば立っているのは私とセージのランシャンさんだけ

「そのエルダナーンは無価値だが・・・そこのヒューリンはなかなか使えそうだな」
魔族の男はそういうと攻撃をランシャンさんに集中しました

ここでも私は無力でした

結界(プロテクション)を張っても、圧倒的な数の差で突破されてしまう
かといって、割って入って敵を倒す事も出来ない

魔術師であるランシャンさんはその集中攻撃ですぐに倒れてしまいました


・・・そして、私も同様に倒されました・・・

・・・そこからの記憶はほとんどありません・・・

・・・断片的な記憶・・・

・・・みんなと戦っている記憶だけがおぼろげに感じられる・・・


そして私は助けられました
パーティの人達に
見知らぬ冒険者達に

感謝の気持ちが大きくなるとともに
悔しさがこみ上げてきます

ジョディーさん・ミーシャ君・ユウタ君
いずれも改造され、魔人にされてしまいました

『わたしも後一歩遅ければそうなっていた』
と、ランディアさんが教えてくれました

ウェルチさんを改造する為の実験台として




私は相手を傷つけるのは苦手でした
だから冒険者になってもアコライトの能力を伸ばし、守るために頑張ってきたつもりです

でも、あの状況ではそんな力はまったくの無意味でした

だから私は決めたんです
『守るために 戦おう』と




『クラン=ベル』の復旧作業の手伝いがあったために私以外の4人は遅れて帰ってきました
私はプロラの支配下にあった時間があるために先に帰還
魔術的な検査をいろいろと受けていました

そしてみんながラインに帰ってきた後
ランディアさんからの召集がありましたが、予定よりもかなり早くそこに行きました
嫌な顔一つせず会ってくれ、先にお話を伺いました

とはいっても報酬の件だったので、規定のお金の1/5だけ受け取りすぐに神殿を出ます
ランディアさんは1/2を渡すといっていたのですが、辞退しました
3/5の受け取る相手はもういないのです
私なんかがそれを受け取っていいはずが有りません



そのまま私は懐かしい場所に行きました

分かれてからしばらくは近付かないようにしていた場所

「へいらっしゃい」
バイトらしき男の人が威勢良く声を張り上げています
私は適当に注文して席につき、しばらく待つことにしました




「2丁お待ち!」
そういって私の前に皿を置かれる
皿には2尾のたいやきが置かれています
しばらくはそこで時間を潰すことになりそうです
まだまだ店内は忙しそうですから



閉店時間になると客は私1人
バイトの人たちは 残っている私を咎めることなく帰っていきました

そしてさらに数分がたち、奥からおじさんが出てきます
「・・・どうした?」
何もかも知っているかのような口調ではあるけれど、静かに問い掛けてきます
「・・・・・・強く・・・・・・なりたいんです」
「お前はアコライトだ、癒し・守るのが役目だろう」
「だめ・・・なんです、それじゃ守りきれない時があるんです」
「強くなれば、相手を傷つける」
「・・・・・・」
「その覚悟がお前にはあるのか?」
「・・・はい」
「生半可な覚悟じゃ お前が潰れるぞ」
「自分が壊れる事はそれほど怖い事じゃありません
 むしろ目の前でだれかが倒れる事の方が・・・よっぽど嫌です」
「そうか・・・・・・なら、付いて来い」
「はい」





場所はライン近くの平原
下草はそれほど高くなく、足首ぐらいまで
その中で3m程の距離を開け、二人の人影が立つ
大人と子供 ぱっと見それほどの身長差がある

「俺の所に来たって事は、拳で戦うって事だな」
「はい」
「ならばかかって来い、まずは俺に一撃でも浴びせて見せろ 最初は我武者羅でも良い」
「は・はい!」

当たらない
どんなに頑張っても、フェイントらしき物を入れてもかすりもしない
おじさんは一撃避すごとに『腰が高い』『握りが甘い』『手首を気持ち外に曲げろ』と怒鳴る
そして2度目同じ注意をする時には、一緒に拳が飛んでくる
勿論本気で打っているわけが無いのですが、それでも吹き飛ばされるかと思う程です



数時間動いていたんでしょうか
或いは数分しか経っていないのかもしれません

私は疲れて足も手も、満足には動かなくなってきました
なんとか一番 疲れないようにステップを踏み
一番 拳・腕への衝撃が少ないように拳を出す

それの繰り返しでした

パシ

いつもの空を切る感覚とは違う
何かが拳に触れたような感触がして顔をあげる
私の手はおじさんの胸に当たっていました

はぁ・・・ふぅ・・・あれ・・・?」
「最後の方の動き、覚えてるか?」
「・・・・・・た・たぶん」
「疲れを取ってもう一度だ」
そういってポーションを私にくれた
「疲労回復のポーションだ」
そう説明してくれたコレは普通に市販している物ではないのでしょう
ラベルなども見たことのないものでした

でもそれを飲むと疲れが嘘のようになくなってしまいました


そこからはある程度スムーズでした
最初は力んでしまいましたが、そのうち先ほどの感覚が戻ってきます







その特訓は明け方まで続きました

そして終わり際、不思議な事が起きました
おじさんが私の攻撃を難なく避し、拳を繰り出そうとした時です
突然おじさんの拳が止まりました
ふと見るとおじさんの眼前にぽち(ファミリア)が現われ、しっぽで顔を叩いたのです

その後はぴょこぴょこと跳ねて私のところに戻ってきました
盾がなくなってからは 帽子の中で寝ていたはずですが・・・

結局理由は良くわかりませんが、ぽちが新しい能力に目覚めたという事みたいです





「俺が教えられるのはココまでだ、後は実戦で学べ」
「はい、有難うございました」
「あとしばらくうちで働け、稽古代替わりだ」
「あ・はい よろしくお願いします」





そんな感じでまたたいやき屋でのバイトが始まりました
バイトといってもお金は入ってこないんですが
それに任務があったり、集まりがあったら来なくても良い
できるだけ暇な時に来いといっていたので、本当にありがたいです

感謝しても しきれませんね




徹夜で特訓の後、たいやき屋でのバイトだったのでさすがに疲れました

おやすみなさい




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