○月×日 ユキの日記


私たちはたいやき屋を出た後、神殿の宿を借りた
ヒースさんとカツモトさんは嫌がっていましたが結局お金もないので折れてくれました
受付のお姉さんの視線が変だったけど・・・何かあったのかな?

部屋は二部屋用意してくれました
あまり空いていないようだったので最初は遠慮したのですが
お姉さんは断固として譲りませんでした

最初は4部屋用意するとさえ言っていました
そして何故かヒースさんとカツモトさんは同室という事でした
アレはどういう意味だったのでしょう?

取りあえずは5人でお話をして
PTとして組んでみようという事になりました

全員が冒険者に成り立てでちょうど良かった事と
あと、何か・・・感じたから・・・

他の4人も同じように感じたのでしょうか?




その後はそれぞれのお部屋に移動して(フェンナさんと同室でした)
お話をしていて、ちょっと剣を持たせてもらいました
重くてとても私には扱いきれません
筋力的には大差ないはずなのですが・・・
アレを振り回してちゃんと敵に当ててしまうのですからすごいです
私ではきっと全然当たらないんでしょうね(厳密に言うと2+2Dです)




そしてフェンナさんが寝たところで部屋を出ました
気が付かないように、と思ったのですが普通に気付かれていたみたいです
それでも何も言わないでいてくれたので神殿を出ました
そしてあの店へ




おじさんは店の中で待っていました
「よう、どうした?気化抹茶たいやきか?」
「・・・・・・」
「・・・ふぅ・・・出るのか?」
「・・・はい」
「そうか・・・・・・」
まるでそれが当然であるかのように返事をし、グラスをあおった

「止めは・・・しないんですね?」
「止めて欲しいのか?」
私は少し考えた後、小さく首を振る
「だろうな、お前はバイトだ 止めたきゃ止める、当然の事だろ」
「それでも・・・おじさんは何か隠していませんか?」
「何の関係もない一介のたいやき職人が何を隠すっていうんだ?」
「・・・私のこと・・・なにか知っていますよね?」
「・・・・・・身分証に書いてある事ぐらいだ」
「・・・・・・・・・」
「・・・昔話だ、俺は昔冒険者だった」
それは解る
そうじゃなかったらあの力、恐いくらいです
「3人の小さなPTだったがな全てが楽しかった
 男2人と女1人のPTだ、俺達は互いに同じ相手を好きになり
 競い合い笑いあった 結局奴に取られちまったがな」
「・・・それは?・・・」
「俺達2人はロリコン ロリコン言われて大変だった、まぁ気にならなくなったがな」
「・・・」(それは・・・きっと・・・)
「数年が過ぎ、あいつらには子供が出来たが俺達はずっとPTを組んでいた
 それを奴が、突然解散しようと言い出した
 俺は激昂した、奴に掴みかかったが・・・奴の目を見て怒りは消えた
 ・・・暫くして2人は、2人の子供をつれて消えた、足取りもわからなかった」
「お父さんは何を思って消えたんですか?」
「昔話だ、お前には関係ねぇ」
「・・・その人はどうして?」
「解らなかった、ある程度の脅えと決意 あいつの目にはそれだけだった」
「何で私にこの話をしたんですか?」
「お前の目が奴に似ていたから・・・かな
 まるで・・・親子に思えるぐらいにな・・・」
「・・・」
「・・・コレをやる」
「?」
突然の事に驚きつつも差し出された子瓶を受け取る
5センチほどの長さしかない瓶にはピンク色の液体が6割ほどまで入っている
「これは?」
「使い魔召喚の依り代だ」
「召喚?使い魔をですか?」
「あぁ、一般的に使い魔は生き物を使役することで得ることが多い
 だがサモナーの中には使い魔を自ら召喚する奴らもいる
 それには元となる依り代が必要なんだ、奴が昔使った残りだ」
「お父さんが・・・」
「召喚してみろ」
「え?」
「その瓶を握って集中しろ、お前ならできるだろう」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
…………………………
ポンッ
「お、出たな・・・ってこりゃぁ・・・」
「・・・・・・」
目の前に現われたソレは頭と胴しかなく
短くした蛇のようでいて身体は全体の大きさに比べて太い
「ぷっ」
「わ・笑わないでください!」
「くっくっく・・・あぁ、すま――なにぃっ!?」
笑っていた顔が一瞬で引き攣る
その視線の先にあるのは私の手、の中の小ビンだった
満たされていた液体はいつのまにか消えてしまった
依り代となって消えてしまうようですね・・・
「どう・・・したんですか?」
あまりに長い時間沈黙だと不安になってしまいます
「あ・・・あぁ、すまん・・・依り代が・・・無くなった事に驚いたんだ」
「?・・・もしかしてダメでしたか!?」
「いや、違う 逆だ」
「?」
「奴が使い魔を召喚した時に使用したのは瓶全体の3割程度だった
 依り代というものは召喚される物の力によって使用量が変動する
 より高次の使い魔であればあるほど量が多くなる
 そして使い魔は召喚する物の魂で決まる」
「・・・?」
「まぁ早い話が素質はあるってことだ・・・ツチノコでもな(笑)」
「う〜〜 あ!お父さ・・・そのPTの男の人は何を召喚したんですか?」
「・・・動物を統べる龍の王・・・ファーヴニル・・・」
「えぇ!?」
「の直系とされ、現存の竜の始祖とされる『ワイヴァーン』だ」
「なぁんだ・・・・・・ってそれでも十分凄いじゃないですか!?」
「そうだな、俺は今でも信じられんぞ」
「はぁ・・・・・・」
「だからそのツチノコも・・・(笑)・・・きっと・・・(笑)・・・」
「随所で吹き出しながら慰めなくても良いです!」
「あぁ悪い悪い、んじゃ名前でも付けてやれ」
「え?」
「これから長い付き合いになるんだからな」
「え・・・っと・・・『ぽち』」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「くっ・・・あーはっはっはっは、『ぽち』か?犬じゃないんだぞ?」
「うぅ・・・」
「変えた方が良いんじゃないのか?」
「いいんです!この子は『ぽち』です、ねーぽち?」
「意地にならなくても良いんだぞ?」
「いいったらいいんです!あ、そういえばその龍の名前は?」
「・・・・・・『タマ』」
「・・・」
「・・・ったくお前ぇら似てんな、さすがだよ」
「・・・」
「達者でな、俺から話すことはもう無い」
「・・・はい」
「あいつ等を見つけたら教えてくれ、ぶん殴ってやるから」
「解りました」
「死ぬんじゃねーぞ、必ず見つけ出せ」
「はい・・・・・・いままで、お世話になりました!」
「おう」




神殿の部屋に戻って布団に入っても暫く眠れませんでした
これからどうなるのか・・・不安でした・・・
いつのまにか朝になっていたような感じ

でも身体は疲れていたのかいつ寝たのかは解らないのに寝坊してしまって
急いで食堂へと向う途中すれ違う人の視線が痛くて・・・
食堂で皆さんと会うと一斉に笑い出します
私の頭の上には『ぽち』がいて、事情を説明するのが大変でした


これから何が起こるのでしょうか・・・
不安と・・・期待で一杯です






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