『ヒース独立記』

第7話「間抜け」

「・・・これは!?」

暗幕の隙間から部屋を覗き込んだご主人が驚愕の声を浮かべます

「なんにゃ?どうしたにゃ・・・」

それにつられるように中を覗く1人と1匹(私)

「にゃ!?」←レオナさん
「にゃ!?」←私

そして同時に素っ頓狂な声を上げてしまうのです
私たちの目に映ったものは・・・

「にゃ・・・にゃん()にもにゃい(無い)にゃ・・・」

暗幕の隙間は多少狭いとはいえココまで近付けば少なくとも半分ぐらいは見渡せます
少なくともその視界の届く範囲には何もありません

「はっはっは、馬鹿な事を 何も無いわけないだろう」

そしてそれを意味不明に強気なご主人が否定するのです
大抵この手の雰囲気の時には・・・アホな事言ってる時なので私は何もいいません
でもレオナさんにはそんな事情がわかるはずも無く

「にゃに言ってるにゃ、それじゃヒースには何か見えたにゃ?」
「暗幕」
「・・・・・・他」
「床 割と綺麗だな」
「・・・・・・・(拳を握り締める)」
「ちょ・ちょっと待て、軽い茶目っ気じゃないの」
「・・・・・ココであんたを殺すとアタシが落ちるからね」
「ふぅ(安堵)」

・・・それってフライトかかってなかったら殺してたんでしょうか?・・・

「ヒース・・・あんたがさっき言ってたのは信用していいにゃ?」
「レーダーの事か? 勿論だ 生まれてこの方外した事なんてありはしない」
「今は?」
「感じるぞ 合計3人がこの部屋にいるはずだ」
「・・・ならさ、暗幕ずらせる?風操って」
「ん?窓割って突入の方がいいんでない?」
「もし暗幕に隠れた部分にその3人がいたらどうするの?」
誰だ!窓割るなんて言った奴は!!
「で?出来るの?」
「・・・・・・放置はきっついんだけど?」
「どうなの?(笑顔)」
「で・・・できると思う」

レオナさんは恐いほどの満面の笑みでしたが、ご主人も何故か笑顔です
・・・かなりひきつってますが・・・

「んじゃ さっさとやるにゃ、一応隠れてね」



「ん・・・・・・・・・・・・・・・・・」

ご主人が精神を集中すると少しずつ 暗幕がずれはじめました
十数秒も経てば完全に端に寄り、中を見渡せるようになったのです
こういったのを見ると魔術師であることが再確認できます
いえ、疑ってた訳じゃないんですが・・・

「・・・」
「・・・」
「にゃんにもにゃいわね」
「だな・・・おっかしぃなぁ まだ感じるぞ、この先に」
「・・・・・・ヒース?」
「ん?」
「・・・ひとつ疑問にゃんだけどさ・・・暗幕・・・ずらしたじゃにゃい?」
「は?どう見てもずれてるだろう?」
「・・・じゃさ・・・なんでまだ暗幕の影が床に大きく写ってるにょ?」
「へ?・・・」

「・・・幻覚で違う風景を見せる魔術ってある?」
「・・・ある・・・んじゃないかな・・・然るべき準備をすればそう難しくは無いと思うぞ」
「・・・もしそれ(・・)だったら・・・私たちから見えなくても・・・向こうからは丸見えじゃにゃい?」
「・・・そう・・・なるな・・・」
「だったらさ・・・こんな風に覗き込んでるのって・・・かなーり間抜けにゃ?」
言ってる間にとっとと離れろーーー

がっしゃーーーーん!!


2人(と1匹)が離れようとした瞬間、突然ガラスにひびが入り 砕け散ってきました
ぐあぁ!!

咄嗟にご主人がガラスの散弾からレオナさんと私を庇いました

ご主人の背中にはガラスの破片が突き刺さり、一旦距離を置きます

ヒース!
大丈夫だ! 突っ込むぞ!
なっ!?馬鹿言ってんじゃ  
「風よ!刃の(ごと)吹き荒れろ!!

そのまま逃げ帰るかと思っていたのでしょう
(というか私もそう思ってました)
窓際に無防備に立っていた人を風の刃がなぎ払い
私たちはそこへ一気に突入したのです






ちなみに・・・このときご主人から精神同調で漏れてきた声はレオナさんには教えてません
ご主人はガラスの弾丸をくらいながらも
エアリアルスラッシュを撃ちながらも
心の中はある叫びに埋め尽くされていました

俺のアルリク傷つけようとした奴ぁぶっ飛ばす!!








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