第1部『罠』

第1話「2nd Stage」

《さて諸君、お待ちかねの脱落者の発表だ

09番 一ノ瀬木葉
16番 河原瑞音
41番 芹沢かぐら
56番 パティ・ソール
81番 ゼファー・ボルティ

以上5名
なんだぁ?また前回と同じスローペースだな

まぁいい、いろいろと面白い物も見させてもらったしな

これからも良い殺し合いを期待しているよ》

あたり一面に響き渡っていた放送が消えた





フィールド内、某所A
『と、これら13名がこの短い時間で死んだ物のリストだ』
その一言に、そこに集められた20人ばかりの人が一斉に硬直する
だれも・・・何も話さない・・・いや、話す事を許されていない
一言でも漏らせば、待っているのは死なのだ

だからあの言葉が本当かどうかなどこの20人には判断がつかなかった
そうして彼等は戦場へと放り出される
恐怖と戦いながら



フィールド内、某所B
ここでは20人がその床に寝かされていた
最初100人が集められた時と同じような状況で

そのうち数人が起き始め、ばらばらと目が覚めていく
そのざわつきに一部の寝ていた者も起きていった

ある者は一瞬夢か、と先ほどの光景を誤魔化そうとし
やはり自分達が同じような状況にいるのがわかると落胆する

またある者はそれでも認めようとせず、夢であると信じ続けるのもいた


パァン
そのざわつき抑える為か一発の銃声が響く
先ほど聞いたばかりのその銃声に、その広くない部屋は静まり返る

その銃声を鳴らした人物は、先ほどピート・ロスを殺した人物だった

『おはよう諸君、またぐっすり眠っていたようだね
 ここはくじ引きが終わって移動した先だ
 これから20人は先ほど決めた順番どおりにここを出て行ってもらうことになるが
 外では既にゲームが始まっている
 この会場は他と比べて非常に遠くてね、既に少々時間が経ってしまっている
 そして、この近く…といっても4キロほど離れているが…も遅れてつい先ほどのスタートだ
 すでに60人での殺し合いが繰り広げられ、生存者は2/3程度になっている
 外の奴等は十分殺る気だから気を引き締めていけよ

 さて、いちおう既に死んでしまった13人を発表する
09番 一ノ瀬木葉
10番 ランディ・ウェストウッド
16番 河原瑞音
41番 芹沢かぐら
43番 草摩 神楽
56番 パティ・ソール
69番 ローラ・ニューフィールド
70番 リオ・バクスター
79番 二見 美魚
81番 ゼファー・ボルティ
88番 リサ・メッカーノ
98番 ピート・ロス
99番 ルーティ・ワイエス

以上13名は既に死亡済みだ
諸君等も彼等に負けぬよう、いっそうの奮闘を期待する

それではこれから武器等の入ったバックを渡すので出発に取り掛かる』

そう締め括ると扉が開き、兵士のような格好をした人物が2,30人入ってくる
15人程度は銃をこちらに構え、残る7,8人が荷物を運び入れる

そうして滞りなく、順番に20人は戦場へと連れて行かれることとなる

【残り87人】






第2話「人質」

ピィン
手に持った円筒形の筒に魔力を込める
すると筒からは刃の様な物が伸びる
魔力の供給を止めると刃はすぐに無くなる

その行為を幾度と無く繰り返す

建物を放り出されてから数分
私は建物から程よく離れた場所にある、大きな石の陰に隠れている
そろそろ次の人が出てくるはずだ
・・・それを何とかやり過ごして、メルフィと合流したい・・・
既にこの場所では殺し合いが始まっているらしい
ルーティやゼファーも既に・・・

正直あんな男の言葉なんて信じたくも無い
だが、嘘を言う必要は無いだろう
あの言葉はおそらく真実

かといってそれを受け止めて誰彼構わず殺す気にはなれない
正直恐いからだ


今までに負けたら死ぬという状況で戦った事はある
だがその相手はいつだって、こちらからは遠慮のいらない魔物の類だった
相手が人の時もあったが、どこかお互い手加減をしたような戦いだった

でも、今は違う
相手は・・・少なくとも一部は私を殺すつもりでやってくるだろう
そして相手はただの一般人かもしれない
そのとき私はどうすれば良いのか
殺されそうなのだから殺し返すのか
少なくとも、それを良しとしない自分がいる
・・・だが、それを甘いと考える自分もいる・・・


・・・・・・来たか・・・・・・
先ほど自分が出てきた建物から人が出てくる
見たことのない人物・・・あと5分でメルフィも出てくるはず
それを待つためにあの人とは接触しない


・・・長い・・・
5分がコレほど長いと思ったことは無い
空は青く、雲もほとんど無い
こんな状況なのに、空はまったくそぐわないほどに透き通っている

・・・まだか・・・
多分もうすぐ出てくるはず
移動しよう

こんな離れた場所では気付かずにいってしまうかもしれないし



岩陰からそっとでて建物の方を伺う
!!!
ピィン キィン!
??「ちぃっ」
現われた男は一旦距離をとる
突然の容赦の無い攻撃
なんとか刃を出して防ぐ
とっさの判断とはいえ上出来だろう

何が起こっているのかは解らないが応戦しない訳には行かない
誰だかは知らない・・・だが、殺られるわけにもいかないのよ
バーシア「いきなり襲ってくるなんて・・・」
??「この場所の意味が解ってないってのか?」
男の感情が読めない
なにか・・・全てを諦めてしまったかのような瞳
??「ここは・・・」
いいながらじりじりと近寄ってくる
??「裏切り・殺しの為の場所なんだ・・・・・・よぉ!!
キィン
振るわれる短刀をすべて受け止める
数合打ち合って解った
コイツはそこまで強くない
油断さえしなければ負けない

そう思って踏み込んだ直後、男は大きく後ろに引いた
私は、あえてそれを追わずに攻撃の手を止めた
バーシア「刀を置いて去りなさい、命まで取ろうとは思わないわ」
??「・・・・・・」
ガチャン
(あれ?)
意外、素直に言う事を聞くタイプなんかじゃ絶対なさそうなのに・・
男はそのまま背を向け
直後何かを投げつけてきた
バーシア「くっ!」
咄嗟に左手でソレを掴む
直後左手が熱くなり、血が流れ出てきた

再び前を見たときには男は下に落とした短刀と共に姿を消していた
バーシア「ち・・・ぃ・・・」
ナイフを地面に落として止血にかかる
ハンカチを巻いても血の流れは衰えない
なかなか深く裂かれたみたいだ
普段なら魔法もありだが・・・ここで使えない事は既に試した後だ
剣になら込められる事は解っているので、無駄に魔力は使えない

それでも段々止まってきたように感じる
深いと感じていたが、そこまでではないのかもしれない
とはいえ、ただきつく縛っただけの応急処置
どこかで医療品でも捜した方が良いかもしれないが


眼帯の男「ヒャハハ 強いねぇ」
バーシア「誰っ!?」
振り返ると両目をアイマスクのような眼帯で隠した、少しキレたような男が立っている

バーシア「殺る気なら・・・容赦しないわよ」
半分はったりで半分本気だった
先ほどは私の甘さが引き起こしたともいえる
向こうが殺る気ならば・・・殺らねばならない・・・例えそれが嫌でも・・・
眼帯の男「まぁ待て、オレ様は別にあんたと戦うつもりできたわけじゃねぇよ」
バーシア「・・・そう」
眼帯の男「ちょーっと、話があってねぇ」
バーシア「・・・」
眼帯の男「俺の上を見てみな」
バーシア「ッ!? メルフィ!!」
男の頭上の木の枝には、先ほど待っていた相手が吊るされていた
バーシア「あんた!メルフィに何したの!!」
再び男に目を移すと、男は数メートルも飛び上がってメルフィのそばの枝に立つ
眼帯の男「ヒャーハハ、まだ何にもしてねぇよ・・・ま・だ・な」
バーシア「降りて来なさい!」
魔力を使って刃を形成する
眼帯の男「おぉっと、その刃をオレ様に向けたらこいつは・・・」
バーシア「くっ」
眼帯の男「心配すんな、殺る気なら捕まえた時に殺ってるぜぇ」
バーシア「・・・何をしろというの?」
眼帯の男「察しがいいな、助かるぜぇ。なに、オマエに殺しをして貰いたくてな」
バーシア「はぁ?」
眼帯の男「オマエはこれから3人、殺して来い」
バーシア「な・・何言って・・・」
眼帯の男「簡単だろ、殺し方は問わねぇ、3人殺せばコイツもアンタも開放だ」
バーシア「ア・アンタは何がしたいのよ!?」
眼帯の男「決まってんだろ?楽に人数を減らす為さ、あと・・・面白れぇからなぁ」
バーシア「〜〜〜〜〜」
眼帯の男「反抗的な目だな、いいんだぜ?俺と戦っても・・・こいつにはその前に死んでもらうがな」
男の持つナイフがメルフィの頬に当てられる
バーシア「待って・・・・・・・・・・・・・・・・・・解った」
眼帯の男「いい返事だ、苦渋に満ちたオレ好みのなぁ 俺はココで待ってるぜ」
バーシア「もしメルフィに手を出したら・・・必ずあんたを殺す」
眼帯の男「くくく ヒャーハッハッハ 解ってるって、一応な」

これ以上はなしても時間の無駄
あいつは私の反応を楽しんでいる
激昂すればそれだけあいつが調子に乗る

くそっ・・・何だあいつは、本当に人間か?
罠だなんて解りきってる
3人殺したところで返してくれる保証はないし
さらに人数を増やす事だって出来る
そうなれば泥沼だ
一生抜け出せない

だからといってこの場で争ってもメルフィが殺される
あいつはあのナイフで切り裂く事に微塵の罪悪感も感じないだろう
あいつは・・・危なすぎる

とりあえずは従うしか・・・ない
そして何とか隙を作り、あいつを殺す
あいつを殺すことには躊躇いはない
あいつは人の命を利用するべきモノとしか見ていない
ならば、私もあいつの命はゴミとでも思わないとやってられない

これから・・・仲間・もしくは武器を探す事が先決
仲間を見つけても、二人であいつには近づけない
1人は後ろから回り込んでもらうか、狙撃をしてもらうしかない
後ろから近付く、というのは簡単なトラップで察知されやすい
願わくば狙撃
魔法の使えないこの状況では狙撃に必要なのは銃器
もしくは、弓
少々原始的だけれども、扱える人物に心当たりはある

むしろ銃器での狙撃をする人物の方に心当たりなんてない
私も訓練していなかった訳ではないが、魔物相手に狙撃なんてしないから腕は鈍っているだろう
でも最悪、武器だけが手に入ったら・・・私が狙撃する・・・しかないかもしれない

何考えてるんだろ、私・・・武器が手に入ったらって・・・そんな簡単に手に入らない
隠してあるなんていってたけど、隠してあるならなかなか見つからないだろう
結局他人のを使うしかない

もし面識の無い人物に出会って『武器を貸してくれ』なんて台詞吐ける訳が無い
そこにあるのは問答無用の殺し合いの可能性が高い
そうでなくても用心深くなるのは当然、武器が手に入るとは、イコール他人のを奪うといってもいい

結局のところ・・・知らない奴とであったら・・・殺す・・・しかないねぇ
こんなうだうだ仲間を捜しているだけの時間はメルフィには無いだろう
あの短気そうな男、いつメルフィを手にかけてもおかしくない
ならば、問題を先送りにするだけにしかならなくても・・・人を殺すしかない
・・・そうなのだ・・・ココは、殺し合いをする場所で
現に知り合いが二人も殺されているのだから・・・・・・

次に見つけた人物で・・・全てが決まる・・・
奴と戦うか
奴に従うか

【残り87人】






第3話「決定」

見つけた・・・3人・・・知らない人だった
人数といい、状況といい・・・従うしかないか
・・・時間が惜しい、これで決めないと

逃げる訳にはいかないんだ



ある程度の距離をおいた場所から身を晒す
普通に命の取り合いをしようとするのならば馬鹿げた行為だろう

だが、3人はある程度は警戒しながらも何かを話し、笑いながら歩いている
おそらくは戦闘不支持派だろう
ならば無防備に現われた人物に対して、突然攻撃してきたりはしないだろう

こちらは女、脅えた風で近付けば懐まで簡単にもぐりこめるはずだ
あるく途中、木の根が邪魔をして足元がふらついた
先ほどからの焦燥感による疲労もあったのだろう
だがそれが幸いした・・・いや、最悪とも取れる結果を引き起こす

変な服の男「おぉっと、大丈夫かい?」
変な服を着た男がアタシの体を支える
冷静な男「おい  一応警戒しろ」
もうひとりの男は冷静に何事か注意をしている
「・・・大丈夫?」
もう1人は遠巻きにアタシに何かを言っている

アタシは、無言で手に持った筒に力を込める
ピィン
不思議な音と共に伸びる刃
それは一番近くにいた男の胸に吸い込まれる
ズゥッ 変な服の男「ッ!?」

何も感じない
手には何の感触も伝わってこない
耳は2人が発しているはずの声を聞き取れない
すべての感覚が麻痺していた

そのまま刃を横に滑らせて残った男の方へと向かわせる
刃が動くと男から血が勢いよく吹き出し、アタシにかかる
それにも構わず 横にいる男に狙いを――
!?
居な    バーシアッ!!
直後 後頭部に激しい痛みが走り膝が折れる

その一撃を受けて直感する

勝てない

殺せない

負ける

死ぬ

これでは    を助けられない
じゃあ逃げなきゃ 死ぬ にげてべつのふたりを しぬ コロサナキャ シヌ
アタシも    も死ぬ・死ぬ・死ぬ・しぬ・しぬ・しぬ・しぬしぬしぬし



     *     *     *



地に倒れた女はその場で必死に這いずろうとしている
延髄を強打した
呼吸もままならず、主だった神経はココの機能障害により信号がせき止められる

ふと後ろを見る
先ほどまでは冗談などを言い、こんな状況でも無駄に明るかった男は死んだ
あっけなく
それを引き起こしたのはコイツだ
殺しに来たからには
相応の覚悟があるのだろう

一歩
その女に近付  
ひかり「ダメェ!」
こうとしたところでひかりさんが止めた
ひかり「だめ」
もう一度念を押すように、しっかりと言ってくる
由希「どうして?この人は紫呉を・・殺し、僕も、キミも殺そうとしたんだよ?」
それに対する台詞にはいつもの歯切れは無く、理論も無い
ただ何となく、そんな事は止めた方が良いと繰り返すだけだった

由希「・・・解った」
執拗にとめようとする姿を見て肩をすくめるしかない
由希「ともかく、紫呉を・・」
ひかり「あ」
ひかりさんは思い出したように振り返ろうと・・
由希「ダメ」
するところを止める
由希「結城さんは向こうで休んでて」
ひかり「・・・はい」

何で斬られたのかも良く解らないが、酷く鋭利な刃物だ
人体を骨ごと、何の苦もなく切断するほどの・・・
そしてそれによって飛び散った血や内臓は見せられるような物じゃない



紫呉の遺体を出来る限り集め、地面の柔らかい場所に移す
たいした道具も無いので深く掘る事は出来ないが、周りから土を集めることはできる
なんとか紫呉の体をすべて土の中に埋めた

その作業を終えると次に荷物の整理にかかる
紫呉の荷物から必要なモノだけを抜き取り、自分のバッグに移す
パラッ
由希「ん?」
1枚の紙が出てきた
そこにはタダ1文だけが完結に書かれている

『1人でもがんばれ』

・・・・・・意図していることがわからない・・・・・・

・・・・・・紫呉はこうなる事を予想してたのか?・・・・・・

・・・・・・そうだとしても『1人』と言うのはおかしい・・・・・・

・・・・・・ただの悪戯か・・・・・・

・・・・・・それとも最悪の事態を予想した遺書のような物なのか・・・・・・

・・・・・・それとも全てを見通した上での遺書なのか・・・・・・

考えていても仕方がない
そう思うとその紙も一応自分のバッグに移す

一通り作業を終えると結城さんが近付いてきた
ひかり「あの・・」
由希「ん?」
ひかり「さっきの女の人・・気になって見に行ったんですが・・・その」
由希「いない?」
ひかり「はい」
由希「・・・追おう、また人を襲われても困るし」
ひかり「・・・はい」
今度ばかりは反対できないようだ
結城さんだって彼女を殺すことには反対でも
彼女が誰かを殺すことに賛成な訳ではないのだから

移動していると入ってもそう遠くまで移動しているとは思えない
あの一撃は非常に重いものでこの程度の時間で回復するものではないはずだ
這いずっての移動がせいぜい
それならば地面には跡がつきやすく、簡単な道を通る為に追跡も容易だろう

そして事実這いずった跡が続いている
もしまた彼女が人を襲うというなら
結城さんがなにを言おうと・・・止める・・・場合によっては動けなくするしかない
死という方法しかそうできないのならば・・・そうせざるを得ないのだろう

48番 草摩紫呉 死亡
【残り86人】







第4話「追跡」

ひかり「あれ?」
先にその違和感に気付いたのは結城さんだった
由希「?どうしたの?」
ひかり「木を迂回してる」
由希「それは・・・」
当然だろうといいかけてハッとなる
今まではただ逃げているだけだと思った
だが、わざわざ木を迂回してまでまっすぐ進むには理由があるはずだ
僕から逃げるという目的以外の

由希「何か・・・ありそうだね」
ひかり「ん」

こんな足を引きずった状態で他の人をつけているとは思えない
仮に襲い掛かっても逆にやられる可能性が高いだろう
武器も取り上げているし

それなのに一体何の理由があるというのか
とにかく、行くしかない・・・



バーシアは思うように動いてくれない体を引きずり何とか進んでいた
だが次第に手に・足に力が戻ってくる
何とか2本の足で歩く事も出来るようだ
途中何度も転びながらもあそこに向う
もうすぐ・・・
もう少し・・・



眼帯の男「クククク ダメだねぇ まだ1人だろ?後3人殺してきな」
バーシア「な!なんで減ってないのよ!」
眼帯の男「あ?俺がそう決めたからに決まってんだろ」
バーシア「アンタ!!」
眼帯の男「おぉっと、それ以上近付くなよ」
激昂して駆け寄ろうとするバーシアを男は制する
男のナイフがメルフィの頬に触れる
バーシア「く・・・卑怯者・・・」
眼帯の男「最大の賛辞だね、この調子で殺しまくってくれや」



ひかり「ひどい」
由希・・・・・・・・・・・ゲスが
由希の暗い声にひかりが振り向いた時には既に由希の姿は無い
ひかり「え?由希・・くん?」



眼帯の男「どうしたぁ?それ以上反抗的になりやがると・・・」
ナイフがメルフィの頬を軽く滑る
スッと赤い線が走り、僅かに血がにじみ出てくる
バーシア「わ・解った!解ったからもうヤメテ!!」
由希「わかる必要は無い」
眼帯の男「なっ!?」バーシア「アンタッ!?」
バキィ
突然の衝撃に眼帯の男が木の上から吹き飛ぶ
が、空中で超人的な身のこなしで体をひねると、しっかりと着地した
眼帯の男てめぇ!何しやがる!
由希「だまれ」
由希も男を追って飛び降りていた
両者は3mほどを空けて対峙する
数秒の膠着
それを見るバーシアとひかりには永遠のようにも感じられる

由希が攻める
一息で距離を詰める
男が出したナイフをひねって避すとその回転力で回し蹴りを放つ
死んでも構わない
そのつもりで思い切り蹴飛ばした
眼帯の男「ガァッ!」ドガッ
背中から木にぶつかりそのまま崩れ落ちる
勝敗は一瞬で決した
かに見えたが、男はその場に静かに立ち上がる
由希「バカ・・・な・・・」
信じられない
どうあっても、すぐに立てるはずが無い
肋骨は数本折れただろうし
普通に考えれば折れた肋骨は身体中を傷つけ
場合によってはすぐに死に至ってもおかしくない
何かが・・・
由希の中で何かが・・・
警笛を鳴らしていた・・・
この男は危険だ と

何が起こるのか解らない
何が起こっても不思議じゃない
いや、不思議に思っている時間は無い
眼帯の男「くっくっく」
男の口から不気味な声が漏れる
眼帯の男「ヒャーハハハ 痛かったぜぇ、ネズミィ!!
驚きで一瞬だが隙が出来る
その瞬間、先ほどの由希に匹敵するスピードで男が迫る

しかもその男の気配は

3方向から等しく発せられていた

由希「なっ!?」
一瞬の隙をついた高速の3連撃
いや、3人による同時攻撃は由希にすら避しきる事は不可能に近い

前と後ろは何とか攻撃を読みきる
目の前の男の拳を左手で止め
後ろの男のナイフを持つ手を右手で掴みつつひねる
だが真上からの攻撃には対応できない
掴んだ男をそのまま盾にしようとするが、それも間に合わない
ナイフが由希の首筋に・・・
ドッ



由希は一瞬何が起こったのか把握できなかった
自分に降りかかる生暖かいモノ
だが自らには傷などない
強いて言えば突き飛ばされた時に地面に着いた手首が痛い
バーシアガ ハッ
また生暖かいモノがかかる
そこで全てを理解した

気が付くと3人いたはずの敵は1人もいなくなっている
由希の前に立っていた女はその場に崩れた
背中には何かナイフでも刺したかのように血に濡れ
噴出すソレは周りを紅に染め上げていく
女は何か、謝るような目をこちらに向けるが
その口から言葉が発せられる事は無かった
結城さんが駆け寄ってくる頃には血の噴出しもほとんど止まり
残された僕はしばらく思考が停止していた



ひかり「大丈夫・・・ですか?」
正直大丈夫な訳が無かったが一応頷いておく
立て続けに2人が死んでいったのだ
コレで平気だったら自分で自分が嫌になる

宙吊りにされていた女の人はいつのまにか消えていた
あの男がまた連れ去ったのかもしれない

・・・そう、あの男だ・・・
・・・訳が解らない・・・
・・・何があった?・・・
由希「結城さん?あの時、僕が攻撃された時、見てた?」
ひかり「ウ・ウン あの男が3人居たように・・・」
由希「やっぱりか・・・」
気のせいではなく、あの瞬間3人に増えていた
あの妙に丈夫な体に、3人に増えた事
・・・・・・マトモじゃない・・・・・・
由希「・・・くそっ・・・」
ひかり「由希クン、少し休んだ方がいいよ」
由希「え?」
ひかり「すごい疲れた顔してる、寝なって」
由希「いや、そんな事は」
ひかり「いーから、疲れた頭で考えたってなんも浮かばないって
 幸い・・かどうかはわからないけど、あの男も消えたみたいだしさ
 見張りは私がしておくから」
由希「・・・・・・」
ひかり「ほら、先輩の言う事はしっかり聞く」
由希「・・・うん」

ほどなくして由希は眠っていた
よほど疲れていたのか、横になるとすぐに寝息が聞こえ始めた
ひかり「ったく・・・無理しすぎね、由希クンは」
戦場の中、一時の休息を得る
目を覚ました後に、更なる波乱の予感を抱きつつ

64番 バーシア・デュセル 死亡
【残り85人】







第5話「待ち人 来たらず」

リーゼ「バーシアさん どこに行ってしまったんでしょうね」
メルフィ「普段からああですし、ココで率先してっていうタイプじゃないのに・・・」

二人の女性が岩場の影で話をしている
そのうちの1人は『メルフィ』といい、先ほど捕まっていたはずの女性である
だが彼女は捕まってなど居ない
建物から出た彼女はすぐに身を隠しつつ周囲を探り
しばらく後に出てきたリーゼと合流するまで誰とも会っていない
勿論何人か見掛けはしたが、接触はしなかった
その中にバーシアの姿が無く、今も同じ建物に居た彼女を待っている

リーゼ「解ってますよ、バーシアさんは意外に正義感も強い人ですし」
メルフィ「意外とって・・・ま、そうなんですけどね・・・どうして隠そうとするんでしょうか・・・」

二人はバーシアの事を心から信じている
事実、彼女はゲームにノったわけではない
だが、バーシアは既に1人の人を殺していた
そして、彼女自身の命もまた、つい先ほど消入ったところだ

リーゼ「この場所から帰れたら、その辺りの事を聞いて見ましょうか」
メルフィ「そうですね」

さらに、コレは皮肉な偶然だが

二人の隠れている岩場

ココはバーシアが、ほんの30分ほど前まで隠れていた場所だった

【残り85人】






第6話「謝り人 来る」

??「ごーめーんーなーさーいー」
メルフィ「な・なに?」
リーゼ「さぁ・・・誰かが叫んでいるみたいですけど・・・」
「ごーめーんーなーさーいー」
メルフィ「わ・訳が解らないわ、あれじゃいつ誰に狙われてもおかしくないじゃない」
リーゼ「どう・・・します?」
理性的に言えばああいうのには関わりたくない
だが人情的に言えば助けない訳には行かない
そうリーゼはいっているのだろう
メルフィ「・・・助けない訳には・・・いかないでしょ」
リーゼ「です・・ね」



メルフィ「そこの人!どうしたの?」
??うひゃぁぁ!!
メルフィきゃぁ!
??すいません すいません 驚かせてしまってすいません ご〜め〜ムグッ
メルフィ「お願いだから、黙ってね」
再び叫ぼうとした口を抑えるメルフィさん
メルフィ「とりあえず不安なのはわかるけどついてきて
 こんなところで叫んでたら死んじゃうわよ」
そう言われてコクコクと頷いている
取りあえずは大人しく付いて来てくれるみたい
・・・ソレにしてもメルフィさん・・・
・・・意外とものすごい行動派なんですね・・・



メルフィ「私はメルフィ、メルフィ・ナーヴ 一緒に居るのがリーゼ・アーキス」
??「えっと・・・私は利津、草摩利津です」
メルフィ「リツさんね」
??「すいません 変な名前でゴメンナサイ 世界中に謝ります ごームグゥ
メルフィ「誰もそんなこと言ってないからいちいち謝らないでちょうだい」
??「ハ・ハイ」
メルフィは微妙に後悔していた
厄介な人に話し掛けてしまったということもある
が、それよりもリーゼを見回りに出してしまった事である
出来れば自分が見回りに
そうでなければ、せめて2人で話せばよかった・・・と
??ごーめームグッ

【残り85人】


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